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アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-3-5】基本をまなぶ

基本をまなぶ

【1-3-5】


    太陽の衛星軌道上で第1戦隊は第2戦隊の生き残り5隻と合流し、態勢を立て直そうと頑張っていた。
    開戦から40分が経過し帯締学園には相変わらず不利な情勢が続く。

    【アンナ】
        「敵、主力艦隊が出てきます。」

    【サダッチ】
        「3方から囲われれば、コンバットスフィアが形成されるわよっ!!」

    【サッチ】
        「右上方のボギーフリート1(※1)へ火力集中!!」
        「突破して3方から十字砲火を浴びる事は絶対に回避しないと。」

    【ナターシャ】
        「3方を十字と言うのかなぁ ???」

    【ミーシャ】
        「シっ!! 聞こえるわよっ!!」

    第1戦隊の火力に押される形でボギーフリート1と呼称される添下艦隊の一隊は人工電子結界を前面に集中展開し防御陣形を取った。
    しかし、その中の2隻が突然センサーから消える。

    【サダッチ】
        「木星宙域から発砲したレーザーが着弾した模様です。」

    【サッチ】
        「ふん、シールドを前方へ集中するからお尻の守りがお留守になるのよっ♪」

    【アンナ】
        「ぇえ~~~っ!?」
        「あなた達、どっから撃ってるのよ、それで当たるものなの ???」

    【サダッチ】
        「続けて、水星方面の主力艦隊の方にも着弾を確認っ!!」
        「こちらも2隻沈んだ模様です。」

    【アンナ】
        こ、この子たち信じられない腕前してるわね・・・。

    しかし、重力探査のビームを浴びせられた事を知らせる警報が鳴る。
    【なるみ】
        「敵艦からのビームですっ!!」
        「武器システムの管制制御が完全にこちらを追跡しています。」

    【サダッチ】
        「GCM(対重力波妨害)開始っ!!」

    警報が鳴り止まない。
    【なるみ】
        「敵は、GCCM(対抗対重力波妨害)展開中で振りきれませんっ!」

    バレージ(広範囲妨害)をかけられどこか発信源なのか特定ができなくなっていた。
    どうやら同時多発的に多数の艦がGCCMを仕掛けているようだった。

    【サッチ】
        「長谷川艦、岡本艦、ブリジット艦、雷撃戦用意っ!!」
        「ホーミングモード(誘導方法)を敵GCCM発信源へ各4発セット」

    【キヨちゃん】【オカちゃん】【ブリジット】
        「了解っ!!」    「了解っ!!」    「イエッサー!」

    【サダッチ】
        「各艦、魚雷諸元入力完了しましたっ!」

    【サッチ】
        「各艦、魚雷発射っ!!」

    12発の魚雷は電波の発信源をたどるように静かに散開し、やがてセンサーの反応から消えた。


    【なるみ】
        「斎藤艦、福田艦、沈みますっ!!」
        「ビームの直撃を受けています。」
        「さらに小畑艦、グランデス艦、バネット艦が被弾し、次の着弾で退場ですっ!!」

    【アン】
        「嗚呼、ダメだ・・・。陣形が乱れるわっ!!」

    瞬時に多くの艦が傷つき、動揺したのか陣形が乱れつつあった。


    【サッチ】
        「敵が魚雷回避で陣形で乱れる事を期待したいが、無理かも・・・。」

    【サダッチ】
        「こちらが魚雷を使用したことはあちらにも察知されている筈ですからねぇ。」

    【ナナ】
        「あちらさんは微動だにしませんね・・・。」

    【ターニャ】
        「ぅぅぅぅ・・・。」

    【ナナ】
        「どうしたの?」
        「具合でも悪いの ??? 大丈夫 ?」

    脂汗を流すターニャを心配してみた。

    【ターニャ】
        「・・・ッコ」

    【ナナ】
        「ぇ? 何」

    【ターニャ】
        「オシッコ!」

    【ナナ】
        「ぇえーーーっ!!」

    【ナナ】
        「どうして休憩時間の間に行っとかないのよ。」

    【ターニャ】
        「ぅう・・・・漏れちゃう」

    【ナナ】
        「戦力が欠けるとマズイから我慢するのよっ!」

    【ターニャ】
        「ぅぅ・・・たーにゃログアウトするっ!

    【サダッチ】
        「きゃーーーー何やってるのよっ!!」
    大慌てで焦る。

    【ナターシャ】
        「ぁっ、ターニャずるいっ!!」
        「私もおしっこっ!」

    【ミーシャ】
        「ぇえーーーっ」
        「ぢゃ、私も行くーーーーっ!!」

    【サッチ】
        「騒がしいわよっ!」
        「どうしたの ?」

    【ナナ】
        「あの3姉妹が、トイレ離脱しちゃいました・・・。」
        とほほほ・・・。

    ナナはあの3姉妹を何かと気にはかけているが、
    おっとりした性格のナナにとっては台風のようなあの娘たちにはいつもお手上げの状態だ。

    【レイチェル】
        「ちょっ・・・何やってるのよぉぉぉ、もぅ」
        「戦力ガタ落ちぢゃないのよ」

    【サッチ】
        「仕方ないわよ」
        「戦闘開始からそろそろ1時間になろうとするわ。」
        「小さい子たちには長時間の戦闘はちょっと厳しいわ。」

    さすがにサッチは切り替えが速い。
    しかし、
    【サダッチ】
        「・・・にしてもこの戦況で無傷の3隻を失うのは痛いですね。」



    【アンナ】
        「ボギーフリート1が右翼上方、」
        「ボギーフリート2が下方正面に回りこみ、」
        「敵主力のボギーフリート3が左翼上方に展開。」
        「そして背後に太陽・・・。」

    【レイチェル】
        「実質囲まれたのと同じよね・・・。」

    【アンナ】
        「今回も勝てないかも・・・。」

    【サダッチ】
        「でも、まだ負けが決まったわけではないわ。」

    【シャルロット】
        「もっちゃんは何隻撃破したの ?」

    【もっちゃん】
        「まだ3隻よ」

    【良子】
        「す、すごい・・・。」

    【シャルロット】
        「でしょ。」
        「アンタがまぐれで当てるのとはワケが違うのよっ」

    【なるみ】
        「でも、今回分のエース認定を得るにはあと2隻倒さないと。」

    【サッチ】
        「フランシーヌ」
        「もっちゃんの直掩にまわっていいわよっ」

    【フランシーヌ】
        「えっ!? いいの ?」

    【サダッチ】
        「こちらにもエースがいることを相手に思い知らさなきゃ。」
        「その為に全力でもっちゃんの支援をしてちょうだい」

    【サッチ】
        「全艦へ」
        「森下艦の直掩艦は森下艦へ並走して防御を優先し、パワーを前部シールドに集中」
        「他の艦は、敵が森下艦へ攻撃をさせぬように弾幕を展開してちょうだい。」

    戦闘艦のシールドは、パラメータの変更で位置や強度を変化させる事は可能で、太陽を背にしていることから後方からの射撃は考慮しなくてもよく、前部に防御を集中させることにした。
    直掩艦は、森下艦にぎりぎりまで接近して、シールドの傘で守る作戦だ。
    森下艦は自分でシールドを展開しない分、電力を武器システムに集中する事が可能となり、打撃力が向上する。 心持ちだが・・・。


    【ケンジ】
        「しかし、相手に巡洋艦がいるぜ」
        「あの火力ではこちらのシールドがいつまで持つかわからないぞ」

    【サッチ】
        「駆逐艦同士の砲撃戦でも、相手のシールド周波数を調整する能力の方が一枚上手だわ。」
        「ならばこちらは攻撃担当の艦に火力に全パワーを投入してもらって相手のシールドを突破してもらうしかないの」

    そこに味方を立て続けに失う連絡が飛び込んでくる。
    【ノブちゃん】
        「キヨちゃんと、ヒデコちゃん、グランデスちゃん、バネットちゃんに着弾! 沈みますっ!!」

    【もっちゃん】
        「ごめん、4人には悪いことしたわね」

    クラスメートが全力で自分を援護していることに後ろ髪をひかれつつ、
    【もっちゃん】
        「でも、ボギーフリート1の先頭のやつを沈めたわっ!!」
        「次の獲物は ?」

    【なるみ】
        「退場したフネの右0.3Ls、下方0.2Lsの艦が近いわ。」
        「そこからいける ?」

    【もっちゃん】
        「サンキュー」
        「見つけたっ!」
        「ちょい、右0.02Lsへ艦砲射撃開始っ!!」
    なるみに示された方向へ直感的に艦砲を向ける。


    【フランシーヌ】
        「そこには敵はいないよ」

    【もっちゃん】
        「大丈夫よ、見てなさい。」
        「今から敵がそちらへ動くから。」

    【シャルロット】
        「良子、ちゃんと見ておくのよ。」
        「もっちゃんは絶対にまぐれで当てたりなんかしないんだからっ!」

    【良子】
        「ぅ、うん」

    【もっちゃん】
        「射撃用重力探査、照射っ!!」
    しかし発砲はしない。

    射撃管制用の重力探査ビームを浴びせられ、ロックされた事に気づいた、添下艦が、右へ転進した。

    【もっちゃん】
        「遅いっ!」
        「その加速では通過できないわ。」

    もっちゃんが放ったビームは、転進した逃げたつもりの駆逐艦に吸い込まれ、撃破判定が下る。

    【良子】
        「すっすごいっ!!」

    【シャルロット】
        「もっちゃんなら当然よっ」
        「この程度で関心するとはお馬鹿な子ね。」

    突然、シャルロット艦に着弾警報がなり響いた。

    【シャルロット】
        「ぇっ!?」
        「何っ!!」
        「被弾したの ?」

    【シャルロット】
        「もぅっ! 良子と話していたから、当たってしまったじゃないのっ!!」
        「ムカつくっ!!」
        「放課後、プールの裏に来るのよっ!!」

    ヘッドアップモニターを床に叩きつけた上に足で踏みつけ悔しさを全開にする。




    【サッチ】
        「チッ、弾幕が薄いか・・・。」
    モニターをチェックし下唇を噛んだ。

    【ケンジ】
        「むちゃ言うなよ」
        「あの火力ではこちらのシールドがいつまで持つかわからないぞ」

    【良子】【フランシーヌ】
        「きゃゃゃーーー!!」

    シャルロットを失って防御力が低下した直掩艦に集中的に火力が投入され、立て続けに良子とフランシーヌが退場する。

    即座にアンナが反応した。
    【アンナ】
        「もっちゃんの防御が消えるっ!!」
        「シールドのない彼女のフネは今被弾すると沈むわっ!」
        「レイチェル、一緒に来てっ!! 援護に回るわよっ!!」

    【レイチェル】
        「アイ・サーっ!!」
        「ここで踏ん張らないと、ご先祖さまが泣くから頑張らないとねっ!!」

    急速転舵で弾幕を張りつつ、森下艦の真横にピタリとつけてきた。

    【サダッチ】
        「速っ!!」

    【サッチ】
        「さすがに、太平洋戦争で勇名を轟かせたニミッツスプルーアンス、それぞれの提督の血を引くだけの事はあるわ。」

    【レイチェル】
        「なるみ、そちらの損害は ?」

    【なるみ】
        「来てくれたの?」
        「シールドはまだイケるけれど、あと一発くらうと退場だわ。」

    【アンナ】
        「後方に下がってもいいのよ」

    【なるみ】
        「ありかどう」
        「でも、さいごまでもっちゃんと一緒にいたいの。」

    【なるみ】
        「ボギーフリート2からのビームが防げないの。」
        「ボギーフリート1と周波数が違うようでこちらのシールドを貫通するわ。」
        「気をつけてっ!」

    【アンナ】
        「わかったわ」


    突然、センサーがクリアになった。

    【ナナ】
        「ようやく届いたのね」

    かなり前にGCCM発信源に向けた放った魚雷が着弾したようだった。
    瞬間的に、センサーの感度がクリアになる。
    と同時にこちらのGCMが効果を発揮し始め敵の射撃精度が甘くなっていく。

    【サッチ】
        「射撃用重力探査、照射っ!!」
        「ボギーフリート2に火力を集中して、森下艦を援護っ!」
        「沈められなくても足止めできればそれでいいっ!!」

    一時的に射撃用重力探査の妨害が薄れたことで射撃の精度が上がった。
    たてつづけにもっちゃんの主砲がボギーフリート1の2隻を沈める。
    これでボギーフリート1をほぼ壊滅状態に追い込んだ。

    しかし、突然、ヒジキ、アルビータ、カメーリアが沈んだ。
    煽りを受けて、おみくじも退場となった。

    【ケンジ】
        「くそっ、ヒジキがやられたかっ!」

    【サダッチ】
        「ちょっ、」
        「今のは何よっ!」

    【サッチ】
        「あちらも、ホーミングフィッシュ(GCM発信源追跡魚雷)を使用したんだわ。」
        「核弾頭だから、接近していれば巻き添えもらうわよ」

    【サダッチ】
        「やはり艦隊戦は100キロの間隔を開けないと危ないわね。」
    改めて密集隊形は危険だということを認識する。

    【セッちゃん】
        「しかし、これだけ周囲から押し込まれてきたら接近するフネも出てくるのは仕方ないですよ。」

    【ナナ】
        「ああ、ダメかも。」
    なんだか諦めのようなつぶやきが小さく聞こえてきた。

    【セッちゃん】
        「どうしたの」

    【ナナ】
        「そろそろ耐久力が限界。」
        「退・・・」

    途中でナナからの通信が途絶えた。
    【サダッチ】
        「あらら、クラス委員・・・退場しちゃいましたね。」

    【ナナ】
        「ふぅ・・・」
    ヘッドアップモニターを剥ぎ取り、手入れの行き届いた青く長い髪を右手で透かしつつ悔しそうに特設シミュレーター会場の巨大スクリーンを見つめた。

    戦況は刻一刻と悪化していく。
    今回も帯締学園の敗色が濃厚ととなっていく。

    ボギーフリート2からの一斉射により もっちゃん を援護していた 第2戦隊のアンナとレイチェルが沈み、第2戦隊は全滅してしまう。

    【サッチ】
        「ケンジ、もっちゃんの支援にまわれそう ?」

    【ケンジ】
        「なんだとぉ? こっちはボギー3からの攻撃にやり返すのに手いっぱいだっつうんだよっ!」
        「しかもダメージが蓄積しそんなには持たん。」
    ケンジは珍しくテンパる寸前だった。

    【もっちゃん】
        「私はいいわ。 もう十分に戦った。」
        「こちらもダメージが深刻であと1回の直撃で多分退場よ。」
        「比較的戦闘力が残っている艦を集中運用した方がいいわ。」

    【サダッチ】
        「どうする? サッチ」

    【セッちゃん】
        「なるみと、ブリジットが沈みましたっ!」
        「エルメスと、レオンハルトのダメージが深刻化、もう持ちませんっ!」

    【サッチ】
        「ぅ・・・。」

    必死で思考を巡らせるが、どう考えても、この不利な戦局を打開できる案が思いつくわけが無かった。
    まぁしかしだ、実戦経験のない学生たちがシミュレーションとは言え宇宙戦争を戦う事自体がリアルな世界では奇跡と言う他ないだろう。

    【サッチ】
        「やむをえません、セオリーに反するが艦隊を密集隊形にし、防御陣形をとりましょう。」
        「対空火力の密度を上げて魚雷への迎撃効率をあげます。」
        「まずは比較的近くのボギーフリート2と引き続き交戦するわよ。」

    【サダッチ】
        「了解したわ。」

    【サダッチ】
        「ケンジ、セッちゃん、ボギーフリート3には牽制用の魚雷を放って、ボギーフリート2と交えるわよっ!!」

    【ケンジ】        【セッちゃん】
        「ぉ、おぅっ!」        「わかったわ」

    加藤、浅野、の他、島田艦も、ビーム砲を放ってくるボギーフリート3に雷撃を行った。
    添下学園の艦隊は、重力探査ビームの照射を受け、さらに雷撃の感知で、回避行動を余儀なくされる。
    これで少しは時間を稼げるがそれでも一時しのぎにしかならない。

    残存艦をまとめあげ、乱れた陣形を立て直しにかかるが、その間にエルメスと、レオンハルトが沈んでしまった。

    【サッチ】
        ほんと、好き勝手してくれるわね。
    心のなかでつぶやいたつもりだったが、ナノリンクを通じでサダッチには聞こえていた。

    一時弱まっていたGCCMも再び激しさを増し、センサーの感度が低下してゆく。
    しかし、すでにお互いの艦隊の間合いは詰まっており、電波系センサーの精度が高まりつつあった。
    射撃管制システムを重力ビーム探査から電波ビーム探査に切り替え、戦いは精密射撃に移っていた。

    【サダッチ】
        「さっち、ボギーフリート2とすれ違います。」
        「どうします?」
        「バックとられる危険が・・・。」

   
    太陽周辺での戦闘では常に太陽重力の影響を考慮する必要があり、最適な戦闘機動を選択しなければならない。
    【サッチ】
        艦隊と太陽の位置関係は・・・。

    【サッチ】
        「全艦このまま直進っ!!」
        「対艦ドローン用意っ!! チャフ弾頭装填っ!」

    結界を展開しつつ、添下艦隊とすれ違う。
    【サダッチ】
        「敵艦からの電波照射ですっ!!」
    添下学園はすれ違う最短距離に接近した時に攻撃をしかけてくるつもりだ。

    【サッチ】
        「ECM全開っ!!」
        「対艦ドローン発射っ!」

    電波かく乱用のアルミ片を収容した対艦ドローンが何十本と添下艦に突入していく。
    しかし結界を突破出来ずにドローンは破壊されていく。

    【サダッチ】
        「敵の火器管制システムからの電波ビーム途絶えました。」

    結界を突破出来なかったドローンは爆発した際に収容していたアルミ片を大量に放出して敵のレーダーの無力化に成功したのだった。
    これで敵の発砲は一時的に収まる。

    高速で移動する艦隊は一瞬でお互いをすれ違った。 敵からの発砲は散発的だ。
    すかさず、
    【サッチ】
        「全艦、フルアップスラスタースターボード」(右舷スラスター上方最大出力)
        「フルダウンスラスターポート」(左舷スラスター下方最大出力)

    帯締学園の駆逐艦が一斉に艦体を右回転させてゆく。
    そして135度ロールさせたところで今度は艦を反転させてゆく。

    【サッチ】
        「全艦、緊急一斉下回頭180」(下方向180度反転)
        「おもて下回頭、バウ上、スタン下いっぱい」(艦首下回頭、艦首/艦尾スラスター全開)

    太陽の重力も利用し徐々に加速し、すれ違った添下艦体の真後ろにつこうとしていた。

    【サッチ】
        「スラスターセンター」(スラスターを中央に戻す)


    この光景は、特設シミュレーター会場の巨大スクリーンにも航跡がプロットされ、退場・・・要するに撃破されてログアウトした訓練生たちがその模様を見物していた。

    【レイチェル】
        「す、スライスバック(※2)ですって?」
        「これって戦闘機の戦術機動じゃないっ!!」

    【アンナ】
        「まったく、あの子たちフツーぢゃないでしょ。」
        「どう考えても艦隊戦の基礎訓練で披露する腕前ではないわ。」

    【レイチェル】
        「どうして、これだけの操艦技術がありながら、添下に勝てないのかしら ?」

    【アンナ】
        「しらないわよっ!」
        「リスキー過ぎて、安定した成績に結びつかないのよ、きっと。」

    【ブリジット】
        「森下さんとケンジさんがついていけてないわ」

    【キヨちゃん】
        「しかたないわ、ダメージが蓄積しているのでどうしても遅れるわ。」
        「手負いの艦にあの戦闘機動は無理だわ。」


    同じチームであれば会話の内容はスピーカーで流されどのような戦術をとっているのか見学者に公開されるようになっている。
    当然、スタンド席からは指示が出せないように、参加者に会場の音声が伝わらないようになっている。


    【ヒデコ】
        「おい、メガネぶた」
        「敵の通信は傍受できないの?」

    【ブリジット】
        「ぇ? そんな事できるの ?」

    【フクちゃん】
        「まぁやって出来なくはないけれど・・・」

    【ヒデコ】
        「だったら、やりなさいよ」
        「ルールに相手の通信を傍受する事は禁止されていないんでしょ?」

    【フクちゃん】
        「そりゃそうですけど・・・。」
        「勝手にやってあとで叱られたらしらないよ」

    【ヒデコ】
        「なに、ビビってるのよっ」
        「アンタ男でしょっ!!」
        「アタシはネ、アンタのそう言う周りばかりを気にして人に言われなきゃ何も出来ないところが大キライなのよっ!!」
        「わかって?」

    【フクちゃん】
        「わかったよ。」
        「やるよ・・・。」

    【カメーリア】
        「ヒデコ、いつも福田さんには厳しいね。」
        「もうちょっと優しくしてあげたら ?」
        「幼なじみなんでしょ?」

    【ヒデコ】
        「ほっといてよ」
        「アイツは私の趣味ではないの」

    【フクちゃん】
        「・・・。」

    【カメーリア】
        「でも、あの子、いつもヒデコの近くにいるぢゃないのよ」

    【ヒデコ】
        「いつもいつも近くをウロウロしててウザイだけよ」
        「ヤダヤダ。」

    【カメーリア】
        そうかなぁ、福田さん居ない時は、不安げな表情を見せるのは私の気のせいなのかしら・・・。
        まぁ、ツッコんだらキレそうだら口にだすのはナシにしよっと♪

    シミュレーターの端末を操作し、受信するチャンネルに添下チームの通信波を割り当てた。
    しかし暗号化されているため何も聞こえない。
    そこで、持ち込んだ自分のPDA端末をケーブルで接続し、音声チャンネルから拾った暗号データを自分の端末にコピーして暗号解析ツールで分析させる。

    【カメーリア】
        「どんな感じ?」

    【フクちゃん】
        「解読できたよ。」

    【カメーリア】
        「速っ!」
        「さすが、福田くん」

    【フクちゃん】
        「ボクじゃないですよ。」
        「ツールが優秀なだけですよ。」

    【カメーリア】
        「それを使いこなすキミも十分にスゴイよ。」

    【フクちゃん】
        「そ、そぅかなぁ・・・。」

    【ヒデコ】
        「もぅ、出来たのなら、さっさとスピーカーに出しなさいよ。」

    【フクちゃん】
        「ちょっとまって・・・。」

    PDA端末の解析パラメータをシミュレーターの端末の音声複合用パラメータにセットする。
    突然、スピーカーから添下学園の通信も流れ始めた。

    【カメーリア】
        「ひょーー、やっぱキミはすごいね」

    【ヒデコ】
        「まったくいつまで待たせるのよ。」




    【サッチ】
        「相手の亜光速ドライブに火力を集中させて。」
        「推進力を得る為に結界の効果が最も薄い場所よ」

    【セッちゃん】
        「1隻を撃破しました。」
        「しかし・・・」

    【サダッチ】
        「そうなのよ、ボギーフリート3が背後に猛烈に迫りつつあるわ。」
        「どうする ?」
        「速力を上げて振り切ろうとすれば、目の前のボギーフリート2にも背後を取られる事になるわ。」

    【セッちゃん】
        「さっきの魚雷は?」

    【サダッチ】
        「牽制球には引っかからなかったようね・・・。」

    【ケンジ】
        「ぉいっ!」
        「後ろのやつらは、俺と、森下に任せろっ」
        「ダメージを受けているこっちはお前らの機動についていけん。」
        「足手まといになるから、ここで後ろの連中を少しでも食い止めておくから、前方のヤツらを追ってくれやっ」

    【セッちゃん】
        「大丈夫なの ?」

    【もっちゃん】
        「後ろは、任せて。」
        「この模擬戦はあくまで艦隊戦のキホンを学ぶ授業だし、」
        「私は今日は十分に学んだわ。」
        「それに、やられても本当に死ぬわけではないんだから。」

    【サッチ】
        「わかったわ、ありがとう。」

    背後に迫る主力艦隊は、深手を追って速力の出ない加藤と森下が盾となり、第1戦隊は目の前のボギーフリート2の追撃に専念する事にした。

    【サッチ】
        「相手の最後尾の艦に全艦の火力を集中させてっ!!」

    【トミちゃん】
        「ボギーフリート2、左へ転舵しますっ」

    【サッチ】
        「対艦ドローンで牽制っ!」

    VLSから発射された対艦ドローンが転舵する方向から覆いかぶさるように向かっていく。
    添下艦隊は、押し戻されるように元の進路に戻っていく。
    しかしこれは対ドローンに対して有効な対抗策ではない。
    一見すると突入してくるドローンを迎え撃つには、艦を横向きにして少しでも対空火力の多くを迎撃に割り振りたい心理が働くが、実際は艦をドローンに正対させ、ドローンのセンサーに対して自艦の反応を小さくさせる必要がある。
    添下学園の生徒たちは、牽制に引っかかり元のコースに戻ってしまった。

    帯締学園のレーザー砲が、最後尾の2隻の駆逐艦を沈め、さらに1隻にも火力を集中しはじめた。


    場外のスタンドがにわかに活気づいてきた。
    【オリビア
        「第1戦隊の反撃だわっ!」

    【レオンハルト
        「いっけぇぇーーー!」

    その頃、第1戦隊の盾となるべく後退した加藤と森下艦が添下の主力艦隊の猛攻を受けていた。

    しかし、それよりも、メインベルトに潜伏した帯締学園旗艦の怪しげな動きにまだ誰も気がついていなかった。




    (※1)
        ボギーフリート・・・敵対する艦隊を発見した順に、ボギーフリート1、ボギーフリート2と呼んでいる。

    (※2)スライスバック・・・本来は航空機が運動エネルギーを維持したまま急激な180度反転を行うための戦術機動でスライスターンとも呼ばれている。
                            重力(引力)を利用する事で旋回開始時点よりも加速する利点があるが、宇宙艦が星の軌道上でこれをする場合は高度に注意しないとそのまま落ちてしまうリスクがある。
                            よって通常引力圏内では、シャンデルと呼ぶスライスバックとは逆に高度を高めに維持する機動を採用するのがセオリーとなるが、速度が低下する欠点がある為、さっちは今回のような急反転しての追撃には向かないと判断した。

 

    -----------------------------------------------
    【1-3- *】 END
    -----------------------------------------------
    ■基本をまなぶ
    登場人物
    -----------------------------------------------
    【アルフォンス】
    【アン】
    【アンナ】
    【エルメス
    【オカちゃん】
    【オスプレイパイロット】
    【おみくじ】
    【オリビア
    【カメーリア】
    【キヨちゃん】
    【ケンジ】
    【さえ】
    【サダッチ】
    【サッチ】
    【シャルロット】
    【シャルロットさん父】
    【ジャンヌ】
    【セッちゃん】
    【ターニャ】
    【トミちゃん】
    【ナターシャ】
    【ナナ】
    【なるみ】
    【ノブちゃん】
    【バネット】
    【ハヤブサ・AI】
    【ヒデコ】
    【フクちゃん】
    【フランシーヌ】
    【フランシーヌさん父】
    【ブリジット】
    【まっちゃん】
    【マリ】
    【ミーシャ】
    【みさ】
    【もっちゃん】
    【レイチェル】
    【レオンハルト
    【井上さん母】
    【桂昌院蘭】
    【森下さん母】
    【東郷】
    【良子】

 

 

 

 

 

 

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