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アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-10-3】歴史捏造の権利

【1-10-3】

 

 
アトランティス艦隊月面環境訓練施設

 

  月面地下深く10kmに設置されている直径50km、高さ7kmのこの特殊な地下施設は、惑星環境の大気の成分、重力の大きさ、さらにはナノマシンを使用して惑星特有の起伏も再現でき、アトラミス救援作戦にて投入される日本軍が連日の猛訓練を続けていた。

  遠くからは戦車砲の発砲と弾着の地響きが轟き、またべつの方角からはジェットエンジンの燃焼試験の轟音がシミュレーションされた大気を伝って響き渡っていた。

  惑星アトラミスは、地球環境とはまったく異なるため、投入される戦車や航空機も作戦に合わせてチューニングを行う必要があり多くのエンジニアが地球から派遣されている。

  ただ、この施設で出来ることには限度があるため、結局のところ最終調整は現地で行うという事になる。

 

【トミちゃん】
 「ねぇ、学園から連絡が入ったのだけれど、ヘルムニート上陸作戦で使用する屠龍が完成したそうよ。」
 「学園のハンガーでキャリブレーションしたいって。」

 

【おみくじ】
 「いよいよ組み上がったのか!」
 「で、いつ戻れと ?」

 

【トミちゃん】
 「明日の便で帰って来てって。」

 

【おみくじ】
 「それは、また急な話だな。」
 「出発可能な時間を確認してくれるかな ?」

 

【トミちゃん】
 「うん。」
 「いいよ。」

 

 重力エレベータは、地球で唯一の発着プラットホームが置かれている帯締から見て月が見えて、且つ、一定以上の角度が必要なため、毎日運行時間が異なる。


【セパハサーラール 大佐】
 「帰還命令ですかな?」

 

【おみくじ】
 「ええ、そうなんですよ。」
 「私の戦闘鬼の調整が終わるので受領にもどるんですよ。」

 

【セパハサーラール 大佐】
 「ならば、私も同行してよろしいかな ?」

 

【おみくじ】
 「ぇ、どうして ?」

 

【パリーヤー 中佐】
 「そ、そうですよ。 大佐。」
 「訓練の途中でニールーイェの指揮官が不在となるのは困ります!!」

 

【セパハサーラール 大佐】
 「なにを堅い事を言う。」
 「私は、池田殿の、その学園というものを見てみたいのだよ。」
 「そして学園長と日本政府に我がペルシャを助けていただいたことを感謝の意を表したいのだよ。」
 「お前も来るか ?」

 

【パリーヤー 中佐】
 「ま、まぁ大佐がそうおっしゃるのでしたら、私は別に構わないのですけど・・・。」

 

【トミちゃん】(*´艸`*)
 「あら、二人で日本に来るのはいいね。」
 「私が案内差し上げますわよ。」

 

ちょっぴり照れ気味のパリーヤーの態度を察したトミちゃんが、案内役を引き受けパリーヤーにウィンクしてみせた。

 

【おみくじ】
 「じゃ、決まりだな。」
 「学園に明日戻ると伝えてくれないかな ?」

 

【トミちゃん】ヽ(=´▽`=)ノ
 「了解♪」

 

 

 

 

帯締学園、某所


統一朝鮮軍の留学生たちは、学園内の施設内の調査を開始していた。


【キム・チョンア】
 「ここの廊下は、なんだか他より雰囲気が違いますわね。」
 「異様に幅が狭いし・・・。」

 

と、突然前から、戦闘鬼が歩いてきた。

 

【キム・チョンア】
 「なっ!?」
 「こんな場所に AMP が ?」

 

エルメス
 「こらぁ!」
 「ここは左側通行だよ。」
 「危ないじゃないかっ!!」

 

【キム・チョンア】ヽ(`д´;)ノ
 「なんだとっ!!」
 「我々には関係がない。」
 「我が国では右側通行が基本だ。」
 「それは貴女の国でも同じでしょう。」

 

エルメス
 「何を言ってるの。」
 「ここは貴女の国ではないわよ。」

 

【キム・チョンア】
 「私達は私達自身が大使館と同義。」
 「私達はあなた達のルールに縛られる道理などないわ。」

 

【アルビータ】(-_-;)
 「エルメス、よせ。」
 「この者たちに言っても無駄だ。」

 

エルメス
 「いや、だって・・・。」

 

【アルビータ】
 「余計なトラブルは避けたほうがいい。」

 

エルメス
 「判ったわよ。」

 

【キム・エギョン】
 「なによアイツ。」
 「こんな狭いところを AMP で移動して。」
 「邪魔なのよ。」


【キム・チョンア】
 「エギョン、よく見て。」

 

【キム・エギョン】
 「どうしたの ?」

 

【キム・チョンア】
 「要所要所に鋼鉄製のハッチが設けられているわ。」
 「なんの目的なのかしら ?」

 

【キム・ジェホン】
 「このハッチは宇宙艦のものだ。」

 

【キム・エギョン】(-_-;)
 「宇宙艦 ?」
 「何寝ぼけているのよ。」

 

【キム・ジェホン】
 「何寝ぼけてなどいない。」
 「ここは、・・・いやここのエリア一帯は宇宙艦の標準型通路を模したものと推測される。」

 

【キム・チョンア】
 「宇宙艦の訓練施設だと言うの ?」

 

【キム・ジェホン】
 「それはなんとも言えない。」

 

【キム・ジェホン】
 「だが、我々がシナ軍とともに種子島で鹵獲した空母の内部構造もすべての通路がこのようなAMP が通れる大きさではないものの、主な幹線通路はこれと似たようなものだった。」

 

【キム・チョンア】
 「にしても・・・これが宇宙艦の訓練施設として、やけに傷だらけのようね。」
 「教室側の廊下はピカピカにきれいに磨かれていると言うのに。」

 

【キム・エギョン】
 「さっきの AMPだって、私達とすれ違うのに、ぶつかりかけていたのよ。」
 「いくら幹線通路が廊下よりは広いとはいえ、AMP がウロウロするほど広いわけではないわ。」
 「そら傷くらいつくでしょう。」

 

【キム・ジェホン】
 「これらの傷は、ただ擦れただけのものではないと思う。」
 「ヒトを避けただけでは、こんな深くまで傷がつかないと思う。」
 「ほら、天井にまでついている。」

 

【キム・エギョン】
 「じゃぁ、なんの傷だと言うのよ。」

 

【キム・ジェホン】
 「そこまではわからない。」
 「ここで何をしているのか僕には検討もつかない。」

 

【キム・チョンア】
 ま、帰ったらこれもヨンギュンに報告ね。

 

 


教育棟廊下

 

エルメス
 「会長!」

 

【サッチ】
 「エルメスとアルビータじゃないか。」
 「どうしたんだ。」
 「新しい戦闘鬼のモーターいい感じに仕上がっていただろ ?」

 

エルメス
 「ええ、以前よりトルクが太くなっているし、小回りがよく効くわ。」

 

【アルビータ】
 「それより、例の留学生なのですが。」

 

【サッチ】
 「留学生がなにか ?」
 「ケンカでも売られたか ?」

 

【アルビータ】
 「ぁ、いえ。」

 

エルメス
 「艦内訓練棟でウロウロしていましたわよ。」
 「いいの ?」

 

【サッチ】
 「別にいいさ。」
 「学園長が許可しているし。」
 「制限区域にはロックされてて関係者以外は入れないようにしてるから問題はないさ。」

 

エルメス
 「そういえば、まっちゃんは今どこにいるかご存知 ?」

 

【サッチ】
 「教室にはいなかったのかい ?」

 

エルメス
 「ええ。」
 「戦闘鬼のジョイントクッション(※1)を調整してほしいのよ。」

 

【サッチ】
 「どこかサイズが合わないのかい ?」

 

エルメス】(*´Д`)
 「ちょっと・・・胸のあたりが窮屈で・・・。」

 

【サッチ】
 「あらら、それは大変。」

 

【アルビータ】(ノ`Д´)ノ
 「エルメスったら、ついこの前まで、おっぱいのサイズが私やレオンハルトと同じ85だったのに、一人だけ抜け駆けして、10mmもサイズアップしているのよっ!!」
 「それってヒドくなくて !?」

 

エルメスの背後から彼女の胸を揉みながらアルビータが不平を訴えた。

 

【サッチ】
 「あはははは・・・それはなんとも・・・。」

 

【サッチ】
 「まっちゃんなら、教室にいなければハンガーデッキかもよ。」
 「明日トミちゃんたちが月から降りてくるから、彼女たちの新型機を関空から戻ってきたフクちゃんと一緒になって調整していると思うわ。」

 

【アルビータ】
 「トミちゃんたちが戻ってくるんだ。」

 

エルメス
 「わかりました。」
 「ありがとうございます。」
 「ハンガーに行ってみます。」

 

エルメス
 「ちょっといつまでそうやって揉んでいるつもりなのよっ!!」
 「行くわよっ!!」

 

 エルメスたちは教育棟を出てハンガーデッキに向かうことにした。

ハンガーデッキは、学園生徒であれば誰でも出入りできる区画と、ナノキャリア保有者が出入りできる区画、整備担当者が出入りできる区画などいくつかに別けられている。
ただ新型機の開発や整備はセキュリティが特別厳重な区画で行われており、まっちゃんはおそらくそこでトミちゃんの機体を調整している思われた。

 

【アルビータ】
 「トミちゃんの新型かぁ・・・どんなのだろうね ?」

 

エルメス
 「そうね。」

 

【アルビータ】
 「そういえば、シュヴァルベも、こちらに搬入されてくるって噂があったわね。」

 

エルメス
 「そうね、たしかにそんな話がありましたね。」
 「でも、その前にシュヴァルベのキャリブレーションはどこでやるのよ。」
 「私達、本国に帰るの ?」

 

【アルビータ】
 「ここで最終仕上げするんじゃね ?」
 「しらんけど・・・。」

 

エルメス
 「ドイツの新鋭機をここで調整するの ?」

 

【アルビータ】
 「ここには優秀なエンジニアとスタッフが揃ってますからね。」
 「彼らの手を借りてスキルも吸収したいってことでしょう。」

 

【アルビータ】
 「あの714型(※2)と715型だって持ち込んだ当初はフランシーヌの会社のエンジニアたちが調整していたものの、あまりのじゃじゃ馬ぶりに手を焼いて結局はこちらのスタッフで最終調整されてましたからね。」

 

エルメス
 「あれは、密輸機だから満足な整備支援を受けられなかっただけじゃないの。」

 

 

 ハンガーに到着すると、学園生徒たちがシナ軍留学生たちとなにやら揉めているようだった。
そこにはさっきエルメスが着装していたハヤブサが整備されていた。

 

エルメス
 「私の機体の周りで何を騒いでいるのよ。」

 

【重工学部部員】
 「ぁ、エルメスさん。」
 「戻ってきたのですか ?」
 「なにか忘れ物でも ?」

 

エルメス
 「ぃえ、まっちゃんを探していたら、ハンガーにいるかもって聞いたので
舞い戻ってきたのよ。」

 

【重工学部部員】
 「そうなんですか。」
 「伊集院先輩でしたら、たしかに奥の方で作業していましたよ。」

 

エルメス
 「わかった。」
 「ありがとう。」

 

【アルビータ】
 「ところで、この騒ぎは何事なの ?」

 

【重工学部部員】
 「エルメスさんのハヤブサを整備しようとしていたら、そちらの留学生の方が、着装させてくれと・・・。」

 

エルメス
 「あら、それは残念ね。」
 「私の機体は私専用にキャリブレーションされているからあなた達は使用できないわ。」

 

【チュン・レイ】
 「キャリブレーションだと ?」

 

【アルビータ】
 「そうよ。」
 「基本的にハヤブサは一般のヒトでも着装はできるけれど、より効率的に動き回るためには、そのひとの特性に合わせた微調整が必要なの。」
 「そのエルメス機は、彼女のために調整されたものだから彼女しか上手に着こなせないわ。」

 

【リン・リー】
 「ほぅ、それは変ですね。」
 「我々が聞いた話だと、コハルさんでしたっけ ?」
 「あの犬のコスプレをした方がハヤブサを着装して高いパフォーマンスを出したって噂を聞いてますわよ。」

 

エルメス
 「無理ね。」

 

【チュン・レイ】
 「なぜだ?」
 「試着くらい問題ないだろ ?」

 

エルメス
 「彼女は特別よ。」
 「たまたまその機体との相性が良かっただけよ。」

 

【重工学部部員】
 「そもそも、この学園の運用ルールで正規パイロット以外は、ハヤブサを勝手に着装は出来ないのです。」

 

【チュン・レイ】
 「では我々も出来るはずだ。」
 「コハルさんも来た直後は正規パイロットではなかった筈だが ?」


【重工学部部員】
 「彼女の場合は・・・。」

 

【東郷】(・_・)
 「どうせ動かないだろうと着装させてみたら、たまたまうまく行っただけ。」

 

今まで、私に気がつかなかったのか、驚いて振り返った。

 

エルメス】【アルビータ】(# ゚Д゚)
 「教官!?」

 

【アルビータ】
 「なぜここに ?」

 

【東郷】
 「私もハンガーに用があってね。」


【東郷】
  「そちらの基準からすればハヤブサは旧式機とはいえ、我々にとっては一応は第一線機ではある。」
  「おいそれとは着装させられない。」

【東郷】
 「なので、模擬戦をやってみれば ?」


【リン・リー】
 「おい、模擬戦とはどういう事だ。」

 

【東郷】
 「そのままの言葉だよ。」
 「着装は無理でも対戦であれば、それなりの必要なデータは得られるだろ ?」

 

【東郷】
 「君たちは、この学園に来たからには、手始めとしてベンチマークとなっているハヤブサのデータがほしい。」
 「なので試着したいと思ったのだろ ?」

 

【東郷】
 「しかし、残念ながら、この学園の校則では、君たちはハヤブサを着装する事はできない。」

 

【東郷】
 「試着以外の方法でハヤブサのデータを得るには模擬戦をするしかない。」

 

【東郷】
 「こちらとしても、ブーメランのデータは欲しいからね。」
 「今回、お互いが欲する目的が同じであればそちらのブーメランと模擬戦をしたほうが丸く収まるのではないのかな ?」

 

 

この場をしのごうと、思いつきで提案をしたので容易に了解が得られるとは思わないが・・・。

 

【リン・リー】
 ・・・なるほどな。

 「気に入らないが一理ある。」

 

【リン・リー】
 「レイ、行けるかしら ?」

 

【チュン・レイ】( ̄ー ̄)b
 「当然よ。」
 「まかせて。」

 

【リン・リー】
 「よし、我々も模擬戦は了承したわ。」


エルメス
 教官いいのですか ?

 心配になったエルメスが私にナノリンクを介して耳打ちをした。

 

【東郷】
 後でコッソリ忍び込まれて勝手に動かされて(簡単には動かせないけど)、
 しまいに壊されたりでもしたら嫌だろ ?

 

エルメス】(-o-;)
 そ、そうですね。
 それは嫌ですね。

 

エルメス
 「で、誰が対戦を ?」
 「私の機はいま整備に入ったばかりですし。」

 

【アルビータ】
 「いいわ。」
 「私がやるわ。」

 

【アルビータ】
 「私のハヤブサを準備してくださるかしら ?」

 

【アルビータ】
 「教官いいですよね ?」

 

【東郷】
 「そうだな。」
 「いいでしょう。」

 

【重工学部部員】
 「わかりました。」
 「準備します。」
 「装備はどうされます ?」

 

【東郷】
 「基礎格闘A仕様(※3)で。」

 

【重工学部部員】
 「わかりました。」

 


体育館(通称:屋内バトルフィールド)


エルメス】(ノ´Д`)
 「思いの外、ギャラリーが多いわね。」


【東郷】
 「我々にとっては、大九野島以来の再戦だからな。」
 「あの時は圧勝したが、あちらもそれなりの対策や強化した戦闘鬼をこちらに派遣しているのだろうから、その進化の度合いを確認できるチャンスさ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「おい、どういうことだ。」
 「模擬戦とは聞いていないぞ。」


【リン・リー】
 「今決まったばかりだからね。」

 

キム・ヨンギュン】
 「勝手なマネをしやがって。」

 

【リン・リー】
 「あら、私達人民解放軍はあなたたちの配下に治まった覚えはないのですけど。」
 「私達がどう動こうと貴官には関係のないことですわね。」

 

キム・ヨンギュン】
 「ち、まぁいい。」
 「無様な姿を晒すなよ。」

 

【チュン・レイ】( ̄ー ̄)b
 「ご心配御無用よ。」
 「あなたが敗北を喫したあのハヤブサはこの私がしっかりと倒してご覧さしあげしょう。」

 

キム・ヨンギュン】(ーー゛)
 「くっ」

【キム・ヘウン】ヽ(#`Д´#)ノ
 「なんて無礼なっ!!」

 

キム・ヨンギュン】
 「よせ。」
 「いい。」

 

【キム・ヘウン】
 「しかしっ!!」

 

キム・ヨンギュン】
 「人民解放軍の戦闘力を知るいい機会だ。」
 「見せてもらおう。」

 

【キム・ヘウン】(-ε´-。)
 「わかりました・・・。」


東郷はアルビータにナノリンクで耳打ちをし、アルビータはそれを了承した。

 

【アルビータ】
 了解。

 

 

模擬戦が開始され、ブーメランが抜刀して勢いよく飛び出した。


【サダッチ】
 「あのカスタムされたブーメラン、モーターの出力がかなり上がっていますね。」
 「さらに、トルクも以前より安定していますわ。」

 

 猫族の聴覚と視覚がプーメランがパワーアップしていることを聴き分け、モーターが発する熱量からも見て取れた。

 

【サッチ】
 「それより気になるのが、あれは柳葉刀なのか?」
 「大きさの割には異様に軽そうに見えるけれど。」

 

【サダッチ】
 「そうですね。」
 「パワーアップしてることを考慮しても軽々しく振り回していますね。」

 

【まっちゃん】
 「どれどれ?」

 

【東郷】
 「来たのか ?」

 

【まっちゃん】
 「はい。」
 「ちょっと休憩しに来ました。」

 

【東郷】
 「屠龍はどうだ ?」

 

【まっちゃん】
 「今はフクちゃんがトミちゃんとおみくじさんのバイタルデータを元に暫定データを投入して調整中。」
 「終わったら私がダブルチェックしなきゃならないのだけれど、それまで時間があるから。」

 

【東郷】
 「そうか。」

 

【まっちゃん】
 「ダブルチェックが終わった後は彼女たちが屠龍を着込んで微調整するだけね。」
 「そのあとの屠龍の調教は彼女たちのお仕事。」


【サッチ】
 「ねぇ、あの剣、分析できるかしら ?」
 「コッソリと。」

 

【まっちゃん】
 「ん? 何? アレの事?」
 「いいよ。」
 「ナノマシンを使用しますね。」

 

すぐに結果が出た。

 

【サダッチ】
 「どうだったの ?」

 

【まっちゃん】
 「あの柳葉刀を組成する材質は、鹵獲されて行方不明となった日本軍の空母伊吹(※4)の装甲と同一成分で出来ていますね。」


【東郷】
 「間違いはないのか ?」

 

【まっちゃん】
 「ええ、間違いないです。」
 「宇宙艦の装甲は地球では精錬できない鉱物を使用します。」
 「しかも精錬した炉や、必要なサイズに鍛造する段階で、同じ装甲でも個体差が現れます。」
 「あの武器で使用されている素材は間違いなく、伊吹のものです。」

 

【まっちゃん】
 「固有振動周波数をキーにしてDBを検索した結果、伊吹の下部後方甲板の非常ハッチA-1の装甲部材と出ました。」
 「おそらく、伊吹のその箇所が不要になったか或いは、あの武器を製造する為に、できるだけ攻撃を受けにくい箇所の装甲を剥がしてきたのだと思います。」


【東郷】
 「つまり要約すると、相当に堅い剣という事だな。」

 

【東郷】
 「ハッチからはアレと同じくらいの剣は何個作れそう ?」

 

【まっちゃん】
 「それはなんとも言えませんが、だいたい30セットくらいかと。」
 「でもそれは参考にならないかもしれません。」
 「伊吹のハッチは1つではありませんから。」

 

【東郷】
 「そらそうだな。」

 

【まっちゃん】
 「憂慮しなければならないのが、あの装甲を精錬はできなくとも加工できる技術を手にしつつあるという事です。」

 

【まっちゃん】
 「ただ、二次加工された装甲は著しく強度が低下しているので、鍛造し直さない限りは装甲時と同じような強度は発揮しませんので、それを考慮するとあの剣自体のスペックはナノスキル覚醒者が所有する固有武装を超えることは難しいと思います。」

 

【東郷】
 「わかったありがとう。」

 

【チュン・レイ】
 へーーー。
 最初の一撃はかろうじでかわしたか。
 「軽量機のハヤブサだけあってさすがに身軽ですわね。」

 

【アルビータ】
 なるほど・・・。
 いい加速しているわ。
 「性能が向上している分、ハヤブサの身のこなしについて来れるのね。」

 

【チュン・レイ】
 「この子は JJRF-0X "尖閣"。」
 「ブーメランをベース大幅に強化された AMP よ。」
 「普通のブーメラン(CA-12R)とは違うのよ、ブーメランとは。」

 

【アルビータ】
 「何!?」
 「SEN-KAKU だと ?」


アルビータは柳葉刀の第二撃を対装甲刀で受け止めたが、打撃の重さに三歩ほど後退してしまった。

 

【東郷】
 「なるほど、装甲からの転用で強度は低下しているとはいえ、威力はそれなりにあるな。」
 「それをパワーアップした新型用の装備として持たせているワケだ。」


【アルビータ】
 重い・・・。

 

 続けて繰り出された第三撃を対装甲刀で上方に受け流したアルビータは、開いた脇へ回し蹴りを見舞った。
見事にクリーンヒットした筈なのだが、

 

【アルビータ】
 ビクともしないのか。

 

【チュン・レイ】
 「ハヤブサが繰り出すキックなど軽すぎて、この尖閣には効かないわ。」


エルメス
 アルビータの回し蹴りを避けもしないで
 まともに受けたのは・・・なるほど装甲にも自信があったのね。


【東郷】
 「あの脇部の装甲材質も分かるか ?」

 

【まっちゃん】
 「うーーーーーん・・・。」

 

【まっちゃん】
 「さすがに伊吹のものではないですが・・・。」
 「5ギガハイテン鋼を使用しているようですね。」

 

【東郷】
 「それって、3年前に日本が開発した最新の鋼材ってやつ ?」

 

【まっちゃん】
 「そう。」
 「でもその技術は産業スパイによって半島へ持ち出され、その後の欧米における特許紛争では日本が破れ、昨年から世界市場から日本鋼材が締め出されてしまった。」

 

エルメス
 「それを戦闘鬼の外部装甲として利用しているの ?」

 

【まっちゃん】
 「ハヤブサの外部装甲はある種の強化樹脂、言い換えればプラスチックのようなものですから、それを考えるとハヤブサのキックがアレに通じないのは当然ね。」

 

エルメス
 「分が悪いね。」

 

【東郷】
 「対戦相手が 5G の装甲って、辛いな。」

 

【まっちゃん】
 「そうですね。」

 

【まっちゃん】
 「ただ、5Gと言っても、あの装甲の精錬精度が低いから日本が製造するオリジナル鋼の半分の強度もないわ。」

 

エルメス
 「そうなの ?」

 

【まっちゃん】
 「いくら製造法を真似て、それを特許出願したところで、精錬に必要な設備の精度と職人の腕までは盗めないわよ。」


【東郷】
 「しかも・・・。」

 

【まっちゃん】
 「そう、しかも・・・ですよ。」

 

エルメス
 「? "しかも" って、何 ???」

 

【まっちゃん】
 「今私が整備しているトミちゃんの機体は、実験的にそれより新世代の 10ギガハイテン鋼を使用しているわ。」

 

エルメス
 「10ギガって・・・。」

 

【まっちゃん】
 「日本が開発中の最新の鋼板技術で、地球重力下でも精錬が可能な宇宙戦艦の装甲とほぼ同じ硬さを誇る新鋼板よ。」
 「従来のアトランティス戦艦が使用する装甲とほぼ同じ強度で、しかも重さが3分の1という軽さなの。」
 「すでに、試験生産が宇宙艦隊向けに始まっていて、その一部を東郷教官のツテを頼ってメーカーから別けていただいたのよ。」


【チュン・レイ】
 「さて、そろそろ私も本気だしていいかしら ?」

 

【アルビータ】
 「さすがに新型は余裕があるわね。」

 

【チュン・レイ】
 「いくわよっ!!」

 

アルビータは柳葉刀の重い連撃をしのいでいたが、次第に追い詰められる。

 


レオンハルト
 「モーターの出力を下げているの ?」

 

【東郷】
 しーーっ!!

 

東郷はあわててレオンハルトの口を封じてナノリンクでの会話に切り替えた。

 

【東郷】
 アクチュエーター一式をアップグレードした事は知られたくない。
 ってか、いつから居たんだ ?

 

レオンハルト
 ずっといたわよ。
 エルメスがブーメランと模擬戦やるからって通信もらったから面白そうなので駆けつけたのよ。
 まぁ防災メカニズムが起動して電子結界が展開される直前の滑り込みだったんだけどね。

 

【東郷】
 そうか。

 

レオンハルト
 「しかし新しいパワーユニットなのに道理で劣勢だと思った。」
 「で、出力を下げた状態で勝てるの ?」

 

【東郷】
 「無理だろうな。」

 

レオンハルト
 「あんた、"我がドイツ軍" にワザと負けるように指示を出したの ?」

 

【東郷】
 「テキトーに頑張って、相手に花を持たせてやれって言っただけ。」

 

【ナナ】(・o・)
 「どうせ、勝ってしまったら、旧式であるハズのハヤブサに負けた原因を調べようと
余計にハヤブサに興味を持たれるのが嫌なだけじゃないの ?」

 

【東郷】
 「って、お前も居たのか ?」

 

【ナナ】
 「お前って何よ。」

 

【東郷】
 「まぁ、ナナの言うとおりだ。」


レオンハルト
 「ナナったら、最近、教官の考えること分かるのね。」

 

【ナナ】
 「ウチの主人ですから。」

 

レオンハルト】┐(´д`)┌
 「はいはい。」


 アルビータ機の胸部装甲が弾き飛ばされ、アルビータの姿が顕になったところで東郷が割って入った。

 

【東郷】
 「勝負あり!!」
 「勝者:チュン・レイ」

 

【アルビータ】ヽ(=´▽`=)ノ
 「あははは、」
 「ごめん、負けちゃったよ。」

 

エルメス
 「いいってことよ。」
 「ね?」

 

レオンハルト
 「そうだね。」

 

【アルビータ】
 「あら、見てたの ?」

 

レオンハルト
 「まぁね。」
 「今回はシュヴァルベにもフィードバックできるので尖閣のデータを得られた事は大きい。」
 「よくやったわ。」


【チュン・レイ】( ̄ー ̄)
 「どう ?」
 「ラクショーだったでしょ ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「ふん。」
 「俺の方がもっと手早く片付けられたけどな。」

 

【チュン・レイ】♪~( ̄ε ̄;)
 「一度ヤラれたんじゃなかったのかしら ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「くそ。」

 

【キム・ヘウン】( ̄へ ̄井)
 「なによ、あの女。」
 「感じわるいわね。」

 

キム・ヨンギュン】
 「まぁいい。」
 「どのみちうち俺の方が実力が上である事を知ることになるさ。」

 

 

 


米国ヴァンデンバーグ宇宙軍基地 食堂

 

二人の将校がハンバーガーとコーラを手に話をしていた。

 

NATO艦隊 将校】
 「やっぱ、アメリカというのは、この組み合わせだな。」
 「超ウメーよ。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「お前、この前は「オレは菜食主義になった」と言ってなかったか ?」

 

NATO艦隊 将校】
 「アレはヤメたよ。」
 「草ばっかり食ってたらパワーでないよ。」
 「やっぱ肉はサイコーだよな。」


NATO艦隊 将校】
 「その話は置いといてだな。」
 「そっちのエンタープライズが近々帰投するらしいな。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「ああ。」

 

NATO艦隊 将校】
 「今度のミッションもうまくいったって ?」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「まあな。」
 「一部に損傷を受けて負傷者を出した艦もあるが、まずまずの成果だ。」
 「アトランティス艦隊の将校がオブザーバーとして支援してくれているから練度は日々上達している。」


アメリカ艦隊 将校】
 「そっちの艦隊も訓練は進めているのだろ ?」

 

NATO艦隊 将校】
 「まぁね。」
 「迷子になったアンドロメダを探し回って始末する地味なミッションばかりだけどな。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「それはこっちも同じだ。」
 「しかし、その積み重ねが大事だ。」

 

NATO艦隊 将校】
 「戻ったらOSを最新のバージョンにアップグレードする予定なんだろ?」
 「NATO艦隊はほぼ入れ替えが終って、アメリカ艦隊の一部も順次入れ替えが始まっている。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「ああ、修理と補給のついでにアップグレードを行えと司令部から通知が来ている。」
 「ジャップの艦隊が帰ってこなくなれば、地球艦隊1000隻が使用する宇宙艦用OSは事実上アメリカ製に統一される事になるな。」

 

NATO艦隊 将校】
 「ロシアはどうするんだろうな?」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「我々の経済制裁でOSの提供は拒否されているからジャップのOSをそのまま使い続ける事になるだろうな。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「月面工廠が完成した今、今後10年でアメリカ、NATO両艦隊含めて2000隻の戦闘艦が追加配備される計画を立てている。」
 「最終的な地球艦隊の総数の割合から見てロシアの勢力は誤差の範囲だ。」
 「ヤツらは戦力には含めなくても問題はない。」

 

NATO艦隊 将校】
 「そうだな。」

 

NATO艦隊 将校】
 「そういえば、気になる噂を耳にしたのだが。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「噂 ?」

 

NATO艦隊 将校】
 「そうだ。」
 「哨戒中の駆逐艦が月面軌道上に正体不明の巨大艦を目撃したらしいんだ。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「正体不明の巨大艦だと ?」

 

NATO艦隊 将校】
 「そうなんだ。 しかも 4隻もだ。」
 「サイズも相当でかくて今度帰還してくるエンタープライズの倍以上の大きさだって話なのだが、すぐにセンサーから消えて追跡が出来なかったそうな。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「エンタープライズの倍だと ?」
 「そんな馬鹿な。」
 「アトランティスにもそれほどの巨大なフネは存在しないぞ。」


アメリカ艦隊 将校】
 「アトランティス艦隊のデータベースには問い合わせたのか ?」

 

NATO艦隊 将校】
 「記録に残っている情報だけを手がかりに問い合わせたものの該当する艦は出てこなかったそうだ。」
 「第一、そんな巨大な艦を建造するドッグにはアトランティス艦隊も持っていない。」
 「近衛艦隊を除いてな。」

 

NATO艦隊 将校】
 「あそこが保有する艦はアトランティス艦隊と共同で作戦を取る時意外にはデータに乗ることはない。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「王家直轄の近衛艦隊か・・・。」

 

NATO艦隊 将校】
 「もしかしたらそこで建造した新型艦なのかもしれんな。」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「ぁ、それから言い忘れてたが、お前がうまいって食ってたさっきのバーガーだが、パテは全部野菜で出来ているからな。」

 

NATO艦隊 将校】
 「ぇっ!?」
 「マジかよ ?」

 

アメリカ艦隊 将校】
 「マジだ。」

 

 


トミちゃんとおみくじが戻ってくると同時に同じエレベーターの便で3名の留学生がやってきた。

 

【ニーナ】
 「私はニーナ、そして彼女は私の妹ネーナ。」

 

【リヒターナ】
 「私はリヒターナ」

 

【ニーナ】
 「あなた、猫にしては犬っぽいわね ?」

 

【リヒターナ】
 「な、なにを言う、
  私はれっきとした猫族だ。」

 

【ニーナ】
 「あらそう ?」
 「ご出身はどちらで ?」

 

【リヒターナ】
 「ぐ・・・。」

 

【ネーナ】
 「まぁ、まぁ、詮索はよしましょうよお姉さま。」
 「私達もいろいろ詮索されるのはイヤですし。」

 

【ニーナ】
 「そうね。ネーナの言う通りね。」
 「それに普通にナノリンクのIDを持っているって事はあなたもアトランティス人ってことよね。」

 

【ニーナ】
 「失礼したわ。」


【ナナ】
 「ねぇ、あのリヒターナって娘、やはりあなたと同族ではなくて ?」

 

【コハル】
 「ち、違うわよ。 どう見たって猫でしょ。」
 「この星系はアンドロメダ側は正確には掴んでいないはずよ。」
 「私達がたどり着けたのは偶然だもの。」

 

【ナナ】
 「ふーーーん。」


【東郷】
 「はいはい、席についてくれ。」

 

【なるみ】
 「ねぇねぇ、精鋭のニールーイェの方も来られているそうなんですが ?」

 

【東郷】
 「ああ、来ているよ。」


【もっちゃん】
 「ねぇねぇ、ニールーイェの方ってどんな感じだった ?」

 

【おみくじ】
 「どんなって・・・。」
 「歴戦の勇者って感じかなぁ。」

 

【トミちゃん】
 「そうそう、カッコよくて部下思いで、ああいう上官ならどこまでもついて行きたいって思うわね。」

 


廊下で登場の出番を待っていた大佐が東郷の目の合図で教室に入ってきた。

 

【セパハサーラール 大佐】
 「なんか照れますなぁ。」

 

【パリーヤー 中佐】
 「はじめまして。」
 「あなた達が噂の帯締訓練生たちね。」
 「噂は聞いておりますわ。」


【アン】
 「あれが、ペルシャ最強と言われるニールーイェの指揮官、セパハサーラール大佐だと・・・。」
 「我が同盟国を一夜にして滅ぼしたペルシャがなぜここにいるんだ ?」

 

【パリーヤー 中佐】┐(´~`;)┌

 「あら、それは我が国から打ち上げた輸送船団を攻撃して自分の領内に墜落して消滅しさせた間抜けな国のことを指しているのかしら ?」

 

【アン】
 「なんだと」

 

【パリーヤー 中佐】
 「事実を言ったまでよ。」
 「あれは正当防衛。」
 「しかも戦車部隊まで送り込んできたではないの。」

 

【レイチェル】
 「よせ。」
 「残念ながら彼女の言うことは事実だ。」

 

【アン】
 「しかしっ!」

 

【ジョージ】
 「そうだレイチェルの言うとおりだよ。」
 「それに、アトランティスの正式なゲストである以上、我が学園の訓練生としては丁重に接しなければならない。」

 

【アン】
 「わ、わかってるわよっ!!」

 

【セパハサーラール 大佐】
 「お前もちょっと言いすぎだぞ。」

 

【パリーヤー 中佐】
 「大佐・・・。」
 「分かりました。」

 

【パリーヤー 中佐】
 「任務の結果とはいえ、そちらの同盟国であるエルサレムでは多くの犠牲が出たことにペルシャ代表として謹んで哀悼の意を表します。」

 

【ジョージ】
 「はい、これで手打ちね。」

 

【ジョージ】
 「改めてこんにちは。
  私はアメリカ陸軍所属、クリスティーナ・パットン、みんなは私のことをジョージと呼ぶわ。」
 「よろしくね。」

 

【ジョージ】
 「そして、今突っかかってきたこの娘が、アメリカ海軍所属のアンナ・ニミッツ。」

 

【アン】
 「よろしく・・・。」
 「私のことはアンでいいわ。」

 

【レイチェル】
 「そして私はレイチェル・スプルーアンス。 同じくアメリカ海軍所属よ。」
 「レイチェルと呼んでいいわよ。」

 

【パリーヤー 中佐】
 「ここは軍から派遣されてきた娘が多いのね。」

 

【トミちゃん】
 「そうね。」
 「民間人なのは日本人くらいのものかしら。」

 


【東郷】
 「はいはい、話はここまで。」
 「さてと、来週から対抗戦の前哨試合が始まる。」

 

【東郷】
 「まぁ新任の私が言うより去年から居る君たちのほうが詳しいだろうが、前哨試合は、本戦へ出場するための予選みたいな位置づけだ。」

 

【東郷】
 「で、聞きたいのだが、昨年までは本戦には出ていなかったのか ?」
 「私が思うに、君たちほどの能力があれば本戦決勝に余裕で進めてただろう。」


【もっちゃん】
 「出られなかったのよ。」

 

【なるみ】
 「前の教官のせいで私達は全員前哨試合で敗退。」

 

【もっちゃん】
 「本戦では毎年添下トップチームのみの試合になってるわ。」

 

【東郷】
 「なんだそりゃ。」
 「対抗戦と言うのは名ばかりなのか ?」

 

【もっちゃん】
 「あの教官さえいなかったら、昨年の私達は本戦に出られてさらに決勝にまでコマを進められていた筈なのに・・・。」

 

【東郷】
 「何があったのかは、まぁ私は別に知りたくもないが、今年は決勝まで進んでもらいたい。」

 

【なるみ】
 「それは本気なの ?」
 「あの大会は添下による新装備のお披露目会のようなものよ。」

 

【もっちゃん】
 「東郷教官、どうせあなたもこの大会の真の姿を目の当たりにし、前の教官と同じ選択を取らざるを得なくなるわ。」

 

【東郷】
 「そうなのか ?」

 

【もっちゃん】
 「ええ、絶対にそうなるに決まってます。」

 

【東郷】
 「そっか。」

 

【東郷】
 「まぁいい。」
 「私に何が待っているか解らないが、対抗戦を楽しもうよ。」

 

訓練生からの反応は冷ややかなものだった。

 

【東郷】
 うーーーむ・・・テンション低いな。
 なるほど・・・いちど調べておく必要があるか。

 

 

 

 


【キム・ジェホン】
 「東郷教官。」

 

【東郷】
 「どうした ?」

 

【キム・ジェホン】
 「頼みがあります。」

 

【東郷】
 「この私に ?」

 

【キム・ジェホン】
 「ええ。」
 「私に宇宙艦操艦シミュレーターを使用させてください。」

 

【東郷】
 「君に?」

 

【キム・ジェホン】
 「ええそうです。」

 

【キム・ジェホン】
 「我が国は今は地球艦隊の編成からは外れておりますが、いづれは各国と協調してこの地球を守らなければならないと考えております。」

 

【東郷】
 「たしか君の国には伊吹があるのでは ?」

 

【キム・ジェホン】
 「伊吹 ?」
 「ああ、あの艦は、今は "毛沢東" と改名されてシナ軍が管理していますよ。」

 

【東郷】
 「そうえば、君の父は、親日派議員だったね。」

 

【キム・ジェホン】
 「よくご存知でしたね。」

 

【キム・ジェホン】
 「そうです。」
 「東海戦争勃発により、私の父、そして父以外の親日派とされた議員たち全員逮捕され獄中で亡くなりました。」

 

【東郷】
 「そうか。」
 「その話は伝え聞いている。」
 「惜しい政治家を失った。」

 

【東郷】
 「シミュレーターの件は考えておこう。」
 「対抗戦の練習で使うから空いてる時間であれば・・・だけどな。」

 

【東郷】
 「ただし、妙な真似だけは起こそうとは思わない事だ。」
 「学園内では常に監視されている事を忘れないように。」

 

【キム・ジェホン】
 「わかっています。」
 「ありがとうございます。」

 

 

キム・ヨンギュン】
 「どうだった ?」

 

【キム・ジェホン】
 「ええ、シミュレーターの使用を検討してくれるそうだ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「親父が親日だという理由だけで簡単に検討してくれるとはちょろいな。」

 

【キム・ジェホン】
 「まだ正式に決まったわけではないですがね。」

 

キム・ヨンギュン】
 「"伊吹"はシナの手に渡ったが、操艦技術は我が国が抜け駆けてやる。」
 「君はその調子で宇宙艦の操艦技術をマスターしてくれ。」

 

【キム・ジェホン】
 「了解しました。」
 「おまかせください。」

 

【キム・ジェホン】
 「ところで、いまからどちらへ ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「学園長の執務室だ。」

 

【キム・ジェホン】
 「学園長ですか ?」
 「指導方針についての意見ですか ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「いや、学園長と言うより、自称アトランティス大使とやらに接見して、日本軍が向かう派遣先への慰安婦をヨーロッパ人だけでなく統一朝鮮人500名も帯同できるように要求するためだ。」

 

【キム・ジェホン】
 「それは難しいのでは ?」
 「太平洋戦争の後は戦後賠償で揉めましたからね。」

 

キム・ヨンギュン】
 「それはそれ、これはこれだ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「我が国の失業率は君も知ってのとおりだ。」
 「我が国の得意産業である女の出稼ぎ労働者は大きな外貨獲得手段であり、これはGDPにも影響する。」
 「ヨーロッパ人に市場を奪われるわけにはいかんのだ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「オレはその交渉も政府から任されている。」
 「では、行ってくるぞ。」

 

【キム・ジェホン】
 「は、はぁ・・・。」

 

ジェホンは統一朝鮮人としては珍しく冷静な思考でその交渉は無理があると感じていたがヨンギュンが国家の代表として行くのであれば意見しても無理だと思った。
そして、
10分後、ヨンギュンは教室に戻ってくるなり怒りを顕にした。

 

【キム・ヘウン】
 「どうされました ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「くそ、あの学園長、我が国の要求をロクに考えもせずに即決で蹴りやがった。」

 

【キム・ジェホン】
 そりゃそうだろう・・・。

 

【キム・ヘウン】
 「要求って何のですか ?」

 

【キム・ジェホン】
 「日本艦隊の派遣先に、我が統一朝鮮の女性労働者も派遣するように要求したらしい。」

 

【キム・ヘウン】
 「我が国の労働者を受け入れないというのは、一体どういう神経しているのでしょうか ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「このオレが政府の全権を託されてやってきたというのに。」
 「追い返すとは無礼千万。」
 「本国から抗議文を送付する事になろう。」


【レイチェル】
 「そんなことしても、無理なんじゃない ?」
 「第一、太平洋戦争なんか、貴官の国は日本とともに私の国と戦っていながら、戦争に負けた途端に、自称戦勝国と名乗って売春婦と企業労働者に対する戦後賠償を要求したり、対馬戦争でも、日本に返り討ちにされたにも関わらず戦勝国と言い張って当時日本企業に就職していた国民が強制徴用されたと称して賠償を要求しているじゃない。」

 

【レイチェル】
 「さすがに3度も騙されるバカな日本ではないと思うわ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「なにを言う、対馬戦争はれっきとした我が国の圧勝だ。」
 「関東の半分を我が国が誇る最強の核で吹き飛ばしたから驚いた日本が降伏をした。」
 「敗戦国が我が国の要求を受け入れるのは当然だ。」

 

【ジョージ】
 「あらそうなの ?」
 「あなた方が核兵器を使用したのはたしかに事実だけれど、それに激怒した日本が
半島を海上封鎖して通商破壊作戦を実施した上に、貿易決済の信用状を取り消したために国家が破綻したから戦争が続けられなくなって日本に無条件降伏したんだ・・・って、私は学校でそう習ったわよ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「君たちは日本の捏造した歴史を信じるのか ?」

 

【ジョージ】
 「あなたたちこそ、昔から世界の歴史を都合のいいように解釈するのね。」

 

キム・ヨンギュン】
 「歴史が事実かどうかは些細な問題だ。」
 「戦争に勝った国の史実に従うのが敗戦国の義務であり、その戦勝国である我々は日本に我々の歴史を強要する権利を未来永劫有している。」


と、言い放って、ヨンギュンは教室を出ていった。

 

【キム・ヘウン】
 「どちらへ ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「用事がある。」
 「明日の朝までには戻る。」

 

 

 

 

硫黄島
宇宙港から定期連絡船が出発しようとしていた。
出国ロビーに若い男が手続きを行っていた。

 

【出国検査官】
 「お仕事ですか ?」


原発エンジニア】
 「ええ。」

 

【出国検査官】
 「作業申請書は ?」

 

原発エンジニア】
 「はい、コレです。」

 

【出国検査官】
 「確認しますね。」
 「発電機の定期検査ですか。」

 

原発エンジニア】
 「はい、最新型の筈なのに最近ちょっと故障が多くてクレームがきつくて。」

 

【出国検査官】
 「そうなんですか ?」
 「それは大変ですね。」

 

原発エンジニア】
 「ええ、ホント、マジ参りますよ。」

 

【出国検査官】
 「申請の内容は問題ありません。」
 「確認がとれました。」

 

【出国検査官】
 「お気をつけて。」

 

原発エンジニア】
 「どうも。」

 

エンジニアは、ソファに腰掛けると作業着のポケットから紙を取り出し、そこへ書かれてある連絡先へ電話した。


原発エンジニア】
 「出国手続きが終わりました。」
 「2時間後に出発します。」

 

【電話の相手】
 「判った。」
 「必要な資材と機材はすべて現地で手に入る。」
 「必要な資金はすでに口座に入れて置いたから、到着したらさっそく掛かってくれたまえ。」
 「余った金は自由に使ってくれ。」

 

原発エンジニア】
 「了解した。」

 

【電話の相手】
 「手配したホテルにネットの環境を用意させたから以降はメールでの通信となるが、
ホテルのバーでグレート・トンベリーと言う女に会え。」

 

原発エンジニア】
 「グレート?」
 「あの環境活動家の ?」

 

【電話の相手】
 「そうだ。」
 「彼女は我々とは別の目的で先に現地へ潜入しているが、最終的な目的は同じという事で協力を依頼した。」
 「健闘を祈る。」

 

 電話が切れるとエンジニアは通信機から通話記録を削除し、その電話番号が書かれていた紙を細かく千切って床に捨てた。

すぐさま掃除ロボットが飛んできてゴミを回収すると、新しいゴミを求めて去っていった。

 

 

※1.ジョイントクッション
 戦闘鬼を始めとする AMP のような甲冑を着込む場合、個人の体格差を吸収するためにジョイントクッションと言う緩衝材が装着されている。
 他の機能として、戦闘時や高機動時における衝撃を吸収分散したり、外部との温度差を吸収して適温に保温する機能も備わるが、これらの機能はナノスキル保有者が展開する防護機能によりさらに強化される。
 ジョイントクッションは全身の3Dスキャンのデータを元に製作されるので、成長期の子たちが使用する戦闘鬼は頻繁に作り直される。


※2.714型、715型
 714型とはエアースペシャル社が開発したType-714 ユーロドローンの型式名の事で、715型も同メーカーのType-715 ユーロファイアーを指す。
 ちなみにシュヴァルベはType-262、つまり262型と呼ばれドイツが開発中の最新鋭機の中でも特に極秘任務を得意とする特殊な機体である。


※3.基礎格闘A仕様
 帯締の戦闘鬼は、ナノスキルを行使できる正規悪魔は自分のナノマシンで固有武装を具現化できるが固有武装を使用できない一般向けに標準装備の武装で近接格闘戦を行うための装備がいくつか用意されている。
ハヤブサはこの基礎格闘A仕様でオロチの最下級戦士と互角に戦える設計がされている。

 

※4.空母伊吹
 日本の航空母艦伊吹型の一番艦で、種子島宇宙港で建造中にシナ軍の侵攻により鹵獲され行方不明となるが、どうやらシナ軍によって完成されており、毛沢東と改名されているらしい。
頑強な強度に注目したシナ軍は一部の装甲を取り外してAMPの武装に加工して利用している。

 アトランティス陣営は、この伊吹型の姉妹艦を建造することはなかったが、シナと統一朝鮮は同艦から得られた情報を元に様々な宇宙艦を大量に生産し、後に地球反乱軍として地球艦隊に立ち向かってくることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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