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アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-5-1】なのましんは錬金術ぢゃない!!

なのましんは錬金術ぢゃない!!

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原作イラスト提供 きゅーぶ先生

 

 【1-5-1】


    土曜日の日本橋
    通称でんでんシティと呼び近畿では最大規模の電気製品専門街として栄えている。
    昔は多くの家電製品が軒先を賑わしていたが、今ではネット通販がメインとなっておりここで売られているのは、主にバーゲン品となっている。
    通販だと送料が発生するが、街に出れば交通費は掛かるが、買い出しすれば通販で購入する宅配送料よりは安くなる。
    なのでいまだに街で買い物を楽しむ人が多いのはこのためだ。

    【ミーシャ】
        「どうして、あんたたちまでついてくるのよっ!」

    【サッチ】
        「ぇっ!?」
        「そ、それは、幼女だけででんでんシティーのような怪しげな街に買い物に行くのが心配だったからよ。」
        「そこはクラス委員長が監督責任としての使命があるからついてくるのは当然のことよ。」

    【ミーシャ】
        「何言ってるのよ。」
        「あんたは生徒会でカンケーないじゃない。」

    【サッチ】
        「だいじょうぶ。」
        「ちゃんと、クラス委員長も一緒だから♪」


    【サダッチ】
        「ほら、出てきなさいよ。」

    サッチの後ろに隠れていたナナを無理やり腕をつかんで引きずりだした。

    【ナターシャ】
        「どうしてナナまでついてきているのよ。」

    【ナナ】
        「べ、べつに好きでついてきたわけじゃないわ。」

    【ナナ】
        「あななたちが、こんなふしだらな街で悪い人にからまれないか監視するだけなんだから。」

    【ミーシャ】
        「ふ、ふ、ふしだらな街とはどういう事よ!


    適当にそこら辺のお店に貼ってある、恥ずかしい描写の美少女ゲームのポスターを指さした。
    【サダッチ】
        「例えば、あんなのとか。」
        「ねぇ、委員長 ?」

    【ナナ】
        「きゃっ!!」
        「見ちゃだめっ!!」
    サダッチが指さした方を見て、赤面してうつむいた。

    【ナターシャ】
        「ふん、あんたは、どこの箱入り娘なのよ。」
        「今どき、あんなポスターなんてここら辺じゃフツーよ。」

    【サッチ】
        「ナナは、この辺のカテゴリーには免疫がほとんどないから・・・。」



    と、言いながらターニャの後についていくと一件のPCショップにたどりついた。

    【サダッチ】
        「ここなの ?」

    【ナターシャ】
        「そうよ。」

    【サダッチ】
        「フツーのパソコンショップにしか見えないけれど・・・。」

    ターニャが人をかき分け進んだ先には、専門書の他、一般ゲーム雑誌や、美少女系雑誌などが積まれていた。
    その中の一冊を手にすると、そのままレジに直進して、本日の任務は完了。

    【サダッチ】
        「早っ!」

    【サッチ】
        「もう終わったの ?」
        「似た雑誌が沢山あるのに、よく見分けが付くのね。」

    【ミーシャ】
        「識神を飛ばしているからね。」

    【サダッチ】
        「えっ!?」

    【ミーシャ】
        「事前偵察をして場所を特定しておくのよ。」
        「それでも必ずしも、そこにあるとは限らず、売り切れていることもあるので、複数のお店に識神を放つわけよ。」

    【サダッチ】
        「識神ってナノマシンを消費しちゃうじゃない。」
        「わざわざ雑誌買うためだけに識神を展開するの ?」

    【ナターシャ】
        「何いってんのよ。」
        「与えられた能力を存分に使わなきゃいつ使うのよっ!」

    【ナターシャ】
        「識神と言ってもホラ、サイズがハエくらいしかないから、そんなにナノマシンは消費しないわよ。」

    【サッチ】
        「私達は悪魔と呼ばれているのだから、あんまり人前で使っちゃだめよ。」
    ターニャの頭を優しく撫でた。

    【ターニャ】
        「うん」
        小さく頷いた。

    【サダッチ】
        「さて、次はどこに行くの ?」
        「買い物は、もう終わり ?」

    【ミーシャ】
        「なに言ってるのよ。」
        「まだ用事はあるわよ。」


    と、言いながらターニャの後についていくと裏通りのPCパーツショップにたどりついた。
    慣れた感じて、ごッた返す客をかき分け、わかりづらい場所にある古臭い小さなエレベーターに乗った。
    一行が乗るとギュウギュウ詰めのエレベーターは、今どきありえない衝撃と共にとある階で止まった。

    【ナナ】
        「こ、ここは ?」

    【ミーシャ】
        「中古パーツのリサイクルコーナーよ」

    【サダッチ】
        「パソコンの ?」

    【ミーシャ】
        「違うわ。」

    【ミーシャ】
        「アトランティス艦隊のよ。」

    【サダッチ】
        「ぇ!? 艦隊の中古パーツがこんなところに出回っているの ?」

    【ナターシャ】
        「そうよ。」
        「戦闘中に破壊された装備で廃棄されつつも、まだ使えそうなパーツが取り外されて市場に流れているのよ。」

    【サダッチ】
        「それって、機密保持違反で犯罪じゃ・・・。」

    【ナターシャ】
        「まぁ、そうなんだけれど、」
        「アトランティスの連中にも素行の悪い者がいて、そうやって小遣いを稼いでるのがいるのよ。」

    【サッチ】
        「でも、こんなパーツが流れて来ても、地球の電子部品と適合性しないのでは ?」
        「きっと何のパーツかは地球人は分からないわ。」

    【ナターシャ】
        「周りを見て。」

    私服だが、明らかにでんでんシティーにそぐわない目つきの鋭いバイヤー達がパーツを吟味していた。

    【ナターシャ】
        「お客さんはのほとんどは、軍やその手の産業のエンジニアの人たちよ。」
        「これらの市場はある意味、地球に技術をフィードバックする役目もあって、だから艦隊も見て見ぬふりをしているのよ。」

    しかし、そんなバイヤー達の中に特徴のある大きなメガネの見覚えのある顔が混ざっているのをサダッチが見つけた。
    【サダッチ】
        「あら、まっちゃん !?」

    【まっちゃん】
        「ぇっ !?」
        「どうして、みなさんここへ ?」
    大きな瞳をぱちくりさせて驚いた。

    【サダッチ】
        「ぇ!?」
        「私達は、ちよっと、この子たちの買い物に付き合ってるだけよ。」

    【ナターシャ】
        「勝手についてきただけじゃないのよ。」

    【まっちゃん】
        「ぇっ !?」
        「あら、ターニャちやんも来てるのね?」

    ぼそっと呟いたナターシャに気がついた。
    そして周りを見渡すと、なにやら隅のコーナーに設置されたワゴンに無造作に積み上げられたジャンク品を物色しているターニャを発見した。

    夢中で何かを探しているターニャに気付かれないように、そっと後ろから近づき、
    いきなら背後から抱きついた。

    【まっちゃん】
        「何探しているのかなぁー ???」

    【ターニャ】
        「ひぃっ!!」
    驚いて抱えていたブツを危うく落としそうになった。

    
    【ターニャ】
        「何をするっ!」
        「せっかくの掘り出し物を落としてしまうところだったぞ。」
    普段から無表情のターニャは相変わらず無表情のまま抗議した。

    【まっちゃん】
        「ごめんごめん」
        「早期警戒用の識神の姿が見えなかったのでつい驚かせようと思って・・・。」

    【まっちゃん】
        夢中のあまり忘れていたのね・・・。

    【ターニャ】
        「ぁっ」

    【まっちゃん】
        「しかし驚かせてもあまり表に出ないものなのね」
        「一応驚いてくれたみたいだけれど。」

    【ミーシャ】
        「ターニャは滅多に表情は変わらないわ。」
        「姉妹の私達ですら、彼女が笑ったところなんて見たことがないんだから。」
        「まぁ怒らせた時は表情が変わらなくてもよくわかるけれど・・・。」

    【ミーシャ】
        「って言うか、あなた今日は日本人帰化申請するんぢゃなかったの ?」

    【まっちゃん】
        「すでに終わったわよ。」
        「昨日よ。」

    【ミーシャ】
        「今日じゃなかったの ?」

    【まっちゃん】
        「だって合同庁舎の帰化申請オフィスは日曜日はお休みなのよ。」
        「だから昨日、宣誓式に行ってきたわ。」

    【サダッチ】
        「あれ ?」
        「まっちゃんって日本人ではなかったの ?」

    【まっちゃん】
        「アトランティスよ。」

    【サダッチ】
        「でも、猫耳としっぽはないわね。」

    【サダッチ】
        「私もナナと同じよ。」
        「ただ私の場合は戸籍は月にあるから。」
    指を上にさした。

    【サダッチ】
        「全然気が付かなかった。」
        「ってか、宣誓式って何をするの ?」

    【まっちゃん】
        「日の丸に向かって、国家と国民に永久の忠誠を誓うのよ。」
        「これで私も晴れて日本人よ。」
    昨日付で発行されたばかりの、ホログラム入りのパーソナルナンバーカード
    を自慢気に見せびらかした。

    【サッチ】
        「でも、少し前までは、そんな宣誓式なんてなかったのでしょ ?」

    【ナナ】
        「前回の対馬戦争では、日本国籍朝鮮人やシナ人が一斉に蜂起してあちこちの街が大混乱したのよ。」
        「以前は日本に忠誠を誓う必要が無かったので、日本国籍を取るにはものすごく敷居が低くて、多くの潜入工作員日本国籍を取得していたらしいのよ。」
        「それで、法律を改正して、日本国籍を取得するには、永久に忠誠を誓う事を宣誓する事が義務付けられた訳。」

    【サッチ】
        「もし違反したりしたら?」
        「たとえば、敵対勢力に加担したり日本の安全を脅かすような行為を行った場合とかは ?」

    【ナナ】
        「んーーー・・・。」
        「たしか、現行犯だと、現場の判断で射殺も許可されているわ。」
        「国家(国民)の安全が最優先とするので、裏切りは重罪なの。」
        「なので被害が拡大する前に抹殺するのが基本ルールよ。」
        「とても厳しいけれど、普通に暮らしていれば日本人が認められているのと同じすべての権利が保証されている筈だわ。」

    【まっちゃん】
        「ところで、ターニャちゃんは何を見つけたのかな ?」

    【ターニャ】
        「これ。」

    一見しただけでは何の部品だか皆目検討もつかない灰色の箱を見せてくれた。

    【まっちゃん】
        「・・・」
        「なんでしょうね。」
        「ぁ、もしかしたら ?」

    【ターニャ】
        「ダメっ!」

    慌てて、まっちゃんの口を遮った。

    【ターニャ】
        「高価なものだったら、値段が跳ね上がっちゃう。」

    【まっちゃん】
        「ご、ごめん」

    【ナナ】
        「どうゆうことなの ?」

    【まっちゃん】
        「ワゴンセールは、用途が不明のゴミ当然の価値として売られているコーナーなのよ。」
        「なので私達学生のお小遣いでも買い物ができるのだけれど、うっかり掘り出し物が出てその価値がとんでもないものだったら 法外な値段に跳ね上がったり、それとか売ってくれなくなったりするんですよ。」
        「なので、売買が成立するまではこのコーナーの機械は正体が判ったとしても、皆黙っているのよ。」

    ターニャが精算を済ませてレジから戻ってきた。

    【ミーシャ】
        「早く出るわよ。」

    既にターニャが非常階段を降り始めていた。

    【サダッチ】
        「なぜ、帰りは階段なのよ。」

    【ミーシャ】
        「エレベーターのような狭い密室だと襲われても撃退は難しいからよっ!」

    【サッチ】
        「襲われるって ?」
        「なんでよ ?」

    【まっちゃん】
        「ターニャちゃんが手に入れたのは、アトランティスのものではなくて、アンドロメダ軍のものよ」
        「どうして紛れていたのかはわからないけれど、敵軍のものだとすれば、余計に滅多に入手できないレアものよ。」
        「バレたら狙ってくる者が多いわよ」
        「だから、とりあえずズラかるの」

    【サダッチ】
        「そんな珍しい物は見る人が見れば判るのでしょう ?」
        「勝手に店から奪って逃げればいいじゃない。」

    【まっちゃん】
        「フロアに通じる入り口には人工電子結界が張り巡らされていて、人は通れるけれど、商品は通過できないのよ。」
        「なので購入したタグを付けてもらった商品なら通過できるので、店外でバイヤーが襲われたりする事が時々あるわ。」


    とつぜんターニャが立ち止まった。

    【サダッチ】
        「どうしたの ?」

    【ターニャ】
        「わるい人たち。」

    【まっちゃん】
        「言ってるケツからお出ましなのね・・・。」

    【サッチ】
        「 "ケツ"ってレディーが言う言葉ではないでしょっ!」

    【まっちゃん】
        「言ってるおケツからお出ましなのね・・・。」

    【サッチ】
        「まっ、いいでしょ。」

    【ミーシャ】
        「"お"をつけて丁寧に言うものなのかっ!」
        「しかも、なんだか一瞬意味が判んないし。」

    【ナナ】
        「何をくだらない事を言ってるの ?」

    【ナナ】
        「確かに先に誰かが潜んでますわね。」

    【サッチ】
        「 しかも、わるい人"たち" って言ったよ。」
        「相手は一人じゃないの ?」

    【ナナ】
        「後ろからも挟まれているわ。」

    【ナターシャ】
        「前に2人、後ろに2人」
        「武装は、全員が9mmパラのK6(※1)、ファストアクションタイプで既に臨戦態勢に入ってる。」

    目を閉じ、周囲を探査したナターシャが冷静に分析する。

    【サダッチ】
        「どうして、そんなのまで判るのよ。」

    【ナナ】
        「斥候に出した識神が相手の全身をスキャンしたのよ。」

    【ミーシャ】
        「さすがクラス委員ね。 そのとおりよ。」

    【サッチ】
        「どうする ?」
        「すっかり、挟み撃ちにされちゃったわね。」

    するとターニャが階段を諦め、廊下へ走りだした。
    皆もついていくが・・・。

    【サダッチ】
        「廊下に逃げ込んだら袋のネズミよ。」
        「打つ手はあるの ?」

    で、彼女たちが逃げ込んだ先が、女性トイレだった・・・。

    【サダッチ】
        「まさかチカン・ブサーを押して警備員を呼ぶの ?」

    【まっちゃん】
        「違うわよ。」

    【まっちゃん】
        「このビルは、かなり古い雑居ビル。」
        「トイレは換気の為、窓が開くのよ。」

    と、トイレの奥に設けられている換気用窓を開いた。

    【サッチ】
        「ここから脱出するのね。」

    【サダッチ】
        「ぇえーーー。ビルから飛び降りるの ?」

    【ミーシャ】
        「ここは、もう3階よ。」
        「ここまで降りられれば飛び降りても結界を展開すれば衝撃は吸収できるわよ。」

    【ナナ】
        「なるほど、東郷教官がハヤブサで落ちた時に助かったのと同じ方法ね。」

    そのハヤブサで落ちたと言うのは、先日の降下訓練でトラブルに見舞われた生徒たちをオスプレイ2から飛び出してギリギリまで救助活動をしてそのまま不時着(墜落 ?)した際に私がとっさに繰り出した人工電子結界の事だ。
    まぁ高速で落下するAMP(陸戦)をサークル型シールドの多重展開で衝撃を吸収するにはあまりに高度がたりなさすぎて、このザマだ・・・。(目下自宅療養中)



    3階の窓から、次々と飛び降り、地上50cmほどのところでサークル型シールドを展開して衝撃を吸収・・・無事に着地していく。

    しかし、ナナとミーシャだけはシールド特性が呪符型の為、1枚のサイズめがけて落下するのは危険なので複数枚の呪符を網目状に展開して落下ポイントを拡張していた。
    しかも待機モードの呪符を使用したので九字を切る必要はなく展開してから効力を発揮するまではかなり速い。
    ただエネルギー主体のサークル型とは異なリ、呪符型の特徴は物理的な成分で構成されるのでナナが展開したシールドであっても続いてその持ち主でもないミーシャの落下も受け止める事が出来た。

    彼女たちを逃した悪党たちは3階の窓から飛び降りられずに、もっていた拳銃で発砲を仕掛けてきた。

    パンパンと軽い音と共に、アスファルで跳弾した弾丸が駐車していた乗用車の窓ガラスを割っていく。

    【サダッチ】
        「ひぃ-本当に撃ってきたよっ!」

    【ナターシャ】
        「この距離でも当たらないなんて、どんだけ腕わるいのよ。」

    とはいえ、当たれば痛いので、車の陰に隠れることにした。

    【まっちゃん】
        「K6の前のモデルのK5は命中精度の低さに定評があって、K5が支給されてもわざわざ自分用に別の拳銃を購入する兵士が多かったそうよ。 あまりに出来が悪かったので輸出モデルも全然振るわなかったそうよ。」
        「K6になっても命中精度の悪さは相変わらずのようね。」

    しかしさすがに車を狙うには十分なようで、カンカンと次々と弾丸がヒットする。

    【ナナ】
        「ねぇ・・・」
        「燃料タンクにあたって爆発しないでしょうね ?」

    【まっちゃん】
        「はぁ!?」
        「何寝ぼけているのよ。」
        「車が銃撃受けたくらいで爆発なんてしないわよっ!!」

    【ナナ】
        「でも、アニメや映画ではよく爆発しているよ。」

    【ナターシャ】
        「あんなの演出に決まってるでしょっ!!」

    【ナナ】
        「ぇっ!? そうなの ?」

    【ナターシャ】
        「ミサイルが当たるわけでもあるまいし、たかだか9mmぽっちの弾丸があたったくらいで車がそう簡単に爆発する訳がないでしょ。」

        「車にかかる衝撃は銃で撃たれるより交通事故の方がはるかに大きいのだから、いちいちそれくらいで爆発していたんじゃ、"安心して" 交通事故も起こせないでしょ。」

    【サッチ】
        「しかし、どうする ? ナナ」
        「反撃してもいい ?」

    【ナナ】
        「ダメに決っているでしょ。」
        「周囲に迷惑が掛かるわ。」

    【サダッチ】
        「しかし、ずっとここに隠れていても、いづれ間合いを詰められるわよ。」

    【ナナ】
        「仕方ないわね・・・。」
        「殺しちゃダメよ。」

    【サダッチ】
        「それなら、ココは私が引き受けるから、みんなは真今宮まで走るのよ。」

    【サッチ】
        「そうね、今なら11:27分発の大和快速があるわ。」
        「ホームで待ち合わせて、その電車で逃げるわよ。」

    でんでんシティーでは、ナノリンクが使用できないため、先日買ったばかりのナノテザリングできる携帯端末を使用してネットで列車ダイヤを検索していた。
    もっとも、サダッチがほとんど無理やりサッチに買わしたものだったのだが役に立った。

    【サダッチ】
        「ナノテザリング、役に立つでしょ ?」

    【サッチ】
        「そ、そうね、悪くないわね。」
        「でも、もうちょっと回線スピード出ないのかしら ?」

    【サダッチ】
        「春モデルだから速度は一番速いはずだよ。」
        「データを意識としてダウンロードするナノリンクの方式と比べちゃダメよ。」

    【ナナ】
        「って言うか、さっさと逃げなさいっ!!!」

    【ナナ】
        「いくわよっ!」
        「ほら、走って走ってっ!」

    みなが駅まで走るのを見届けると、サダッチが戦闘態勢に入った。
    通常、熱エネルギー防御に特化しているサークル型シールドは実体弾に対しては有効な手段ではないが相手が拳銃クラスであれば十分に防御力を発揮する。

    【サダッチ】
        「さて、ここからは一歩も通さないわよ。」

    追っ手の前にサダッチが立ちはだかった。
    そもそも人ゴミの中での騒動は避けたかったが、相手はそれを許してくれなかった。
    そこでシールドの出力を控えめに絞り、周囲の買い物客からは視認されにくく配慮した。

    しかし相手はそれでも発砲してくる。
    最初は日本では聞き慣れない大きな破裂音に人々は何の音なのか様子を伺ったが、それが拳銃だと知ると、買い物客はパニックとなり路上へ飛び出した。

    逃げまわる人々にお構いなしに発砲し、シールドに弾かれては跳弾が周囲に被害を及ぼす。
    歩道の屋根に穴をあけ、駐車ゾーンの自動車の窓も砕け散っていく。

    【サダッチ】
        あらら思いの外、被害が大きくなるわね。

    【工作員A】
        「やはり悪魔相手に拳銃は無理か・・・。」
        しかしシールドさえ突破できれば

    拳銃では効果がない事を理解したヤツらは、アーミーナイフに持ち替え直接接触による格闘戦を挑んできた。
    サダッチはナノマシンの成分を回収されないようシールドをオフにしつつ、相手が手にしたナイフを脳内アプリで画像解析に掛ける。

    【サダッチ】
        統一朝鮮軍が開発した格闘戦ナイフか・・・スイスのアーミーナイフを違法コピーしたもののようね。

    腹部を狙って突進してくるナイフを寸前でかわし、脇を通り過ぎる相手の足を軽く引っ掛け転倒させた。
    しかし相手はサダッチからの攻撃を察知し、うつ伏せの状態から仰向けに体勢を変え、防御ま姿勢を取ろうとするがサダッチは急所を素早く、そして正確に、格闘術の貫手により両目を突いた。

    残酷に見えるが、相手はプロの戦闘員である以上は狙った目標は何度でも襲ってくる可能性が高い。
    ここで戦闘力を奪わなければいつまた狙ってくるかわからない。
    失明させると言う戦術により相手の命を奪うことは決してない。

    【工作員A】
        「・・・・!!」
    両目を手で押さえ、痛みに地面をのたうち回る。
    声を上げて大騒ぎしないところがさすがプロだ。

    【工作員B】
        「くそっ」
        「急所を狙うとは」

    
    【サダッチ】

        カタコトの日本語?

        「あら、なにいってるのよ。」
        「命あっただけでもありがたく思いなさいよ。」
        「彼は、今後一生平穏な生活を送ることになるのよ。」

    今度は上から振り下ろしてくるナイフに対して、一気に間合いを詰め、自分の左腕でナイフを持つ相手の腕をガードすると、右腕を後ろに引き、勢いをつけて相手の目に抜き手を直撃させる。

    【工作員B】
        「いってぇぇぇぇーーー。」

    朝鮮語の叫びが脳内アプリによって自動翻訳されていく。

    【サダッチ】
        やはり統一朝鮮の工作員か・・・。


    残り2名もナイフを取り出すと、左右に別れ両方から挟み撃ちにするつもりでジリジリとサダッチとの間合いを詰めてくる。


    その光景を道路の反対側から目撃していた2人連れがいた。

    【添下学園:本木】
        「おぃ、なんか面白いことやってないか ?」

    【添下学園:山下】
        「ん?」
        「なんだろ?」

    【添下学園:本木】
        「あの女、見たことある顔だな。」

    【添下学園:山下】
        「赤松貞子だったっけ?」
        「たしか帯締学園のエース級の悪魔とか ?」

    【添下学園:本木】
        「なんでよそんとこの女子の名前知ってるんだよ。」

    【添下学園:本木】
        「それより、この状況はどうなっているんだ。」

    【添下学園:山下】
        「どう見ても、あの男達のの方が悪者に見えるな。」

    【添下学園:山下】【添下学園:本木】
        「しかし・・・」

    【添下学園:本木】
        「あの女、容赦しないなぁ。」

    サダッチが倒した相手の顔をみてつぶやいた。

    【添下学園:山下】
        「手を貸すぞ。」

    【添下学園:本木】
        「ぇ、!?」
        「女のほうが戦闘力が遥かに上じゃないか。」

    【添下学園:山下】
        「バカ、あの男たちに手を貸すんだよ。」

    【添下学園:本木】
        「なんで、そんな面倒な事すんだよ。」

    【添下学園:山下】
        「あいつは生徒会役員だ。」
        「ヤツの戦闘力が判れば、次回の対抗戦では帯締のおおよその実力が検討できるかもしれん。」

    【添下学園:本木】
        「なるほど。」
        「でもどうやって?」
        「ナノスキルを発動すれば、何者か分からないあの男たちにナノマシンが付着する危険があるぞ。」

    周囲をスキャンし他に怪しい挙動をする者が居ないかサーチした。
    
    【添下学園:山下】
        一般人は物陰に隠れてるか。 携帯端末で警察に通報する者と動画撮影している者がそうだろう。
        そして300m先に走る人影。
        ん!? ナノマシン反応 ?
        ・・・なるほど、こいつらは帯締の仲間だな。
        おそらくあの男に追われ逃げているのか。
        そして赤松がその男を食い止めているって事だな。

    そのスキャン波はナナたちも感づいた。
    【まっちゃん】
        「どうしたの ?」

    【ナナ】
        「誰か分からないけれど、スキルに探査されたわ。」

    【まっちゃん】
        「ぇ!?」
        「何も感じなかったよ。」

    【サッチ】
        「かなり微弱な探査波だわ。」
        「私でも一瞬、あれ? と思ったけれど、ナナが振り返ったの見て確信したわ。」

    【サッチ】
        「さすがクラス委員の能力は侮れませんわね。」

    【まっちゃん】
        「どうゆうことよ。」
        「相手はナノスキル保有者だってことなの?」

    【ナナ】
        「分からないわ。」
        「ただ、確度を高める為に相手もPingを2度打ってるから、そのおかげで私も相手の位置も特定できたわ。」

    【ナナ】
        「サダッチのいる反対側の歩道ね。」

    【まっちゃん】
        「サダッチは気付いたのかしら。」
        「そんな近距離ならすぐに気付いてるわよね ?」

    サダッチをよく知るサッチがキッパリ否定した。
    【サッチ】
        「いや無理だわ。」
        「彼女のバランスシートは、やや攻撃特化型なので、パッシプの能力はそこそこしかないわ。」
        「相手のスキャン出力はかなり低く抑えられた上にスキャン波の放出時間がかなり短いのよ。」
        「彼女はおそらくキャッチできなかったと思うわ。」
        「危うく私も無視してしまうところだった・・・。」

    【ナナ】
        「相手は相当なナノスキルの使い手のようね。」
        「どうする ?」
        「様子を見に行く ?」

    【サッチ】
        「ナナはダメよ。」
        「まっちゃんと、おチビちゃんたちを連れて早くココを離れるのよ。」
        「サダッチは相棒であるこの私が見てくるわ。」

    【まっちゃん】
        「どうして?」
        「危険なの ?」
        「ナノスキルって事はアトランティス艦隊からの正式認可を得たものだけが使用できるのでしょ ?」

    【ミーシャ】
        「アトランティス艦隊とは言え、一枚岩ではないのよ。」
        「一応、アンドロメダと言う共通の敵を前にしては一緒に戦うけれど、
        内部では地球人と対等に向きあおうとする近衛隊や親王室派と、地球を劣等種族として徹底管理を主張する艦隊派とが争っていて、その艦隊派の中にも特に過激なグループもいるのよ。」

    【ナナ】
        「そういうことよ。」

    【サッチ】
        「私はちょっと見てくるわ」
        「ヤバイ事になっていなければいいのだけれど。」

    【ナナ】
        「気をつけてね。」

    【サッチ】
        「わかってるわ。」
        「では、あとでね。」

    軽くウィンクすると、立ち並ぶウィクリーマンションの屋上まで一気に上昇し、そこから屋上伝いにジャンプしながらでんでんシティーまで戻っていった。



    一方でサダッチを狙う添下学園の生徒は周囲に脅威が存在しないことを確認すると
    次の行動に移った。

    【添下学園:山下】
        「おぃ、あの車を再構築できるか ?」

    【添下学園:本木】
        「できるけれど・・・。」
        「ナノマシンの情報でアシが付かないか ?」

    【添下学園:山下】
        「大丈夫さ、再構築の途中でナノマシンを解析されなければまずはバレないし、再構築が終わればすべてのナノマシンを回収すればアシはつかんさ。」

    【添下学園:山下】
        「よし、やるぞ。」

    山下と本木は、制服のポケットから呪符を取り出し銃撃により破壊された車両に貼り付けると、起動コマンドを入力した。

    【添下学園:山下/本木】
        「臨兵闘者皆陣烈在前」
    気合を入れつつも周囲の誰にも悟られないように刀印結んで静かにそして素早く九字を切った。

    起動コマンドを入力された呪符は直ちに起動処理を行い、バッチシーケンスにより事前にプログラムされた命令を順次実行してゆく。
    穴だらけにされた乗用車は、ナノマシンにより形状分解(※2)され、別のモノに変換されてゆく。


    【サダッチ】
        「ふぅ、大したこと無かったわね。」

    4人の工作員の戦闘力を永遠に奪ったサダッチの脳内に突然、ナノマシン警報のアラームが鳴り響く。

    【サダッチ】
        ぇっ? 何 !?
        警告 ?

    センサーが感知した脅威の場所を瞬時に意識として焼き付けた。
    【サダッチ】
        まうしろ ?

    とっさに振り向きつつ後ろへジャンプして間合いを確保する。


    【サダッチ】
        「ぇっ---!! 何これーー ?」
        「なんで、こんなメカがこんなところに ?」
        ナノマシン ?

    サダッチが目撃したものは、メカで作られた大きな 2匹の虎であった・・・。

    【サダッチ】
        「し、識神なの ?」
        ぃや、ナノマシン反応が消えてる ?

    考えるまもなく、虎が襲いかかってきた。

    【サダッチ】
        こ、これはヤバイかも・・・。

        

        (※1)・・・K6

        統一朝鮮が統一後に開発したK5拳銃の後継モデル。
        基本的にK5の正統後継モデルの位置づけとなっているが、輸出量に様々なモデルが製造された K5 とは異なり、K6は統一朝鮮軍専用モデルとして派生モデルは製造されていない。装弾数は13発。
        FMハーヌタルからライセンス提供を受けた自称 "独自開発" のファストアクションタイプをK5につづいて採用しているが、独特の初弾の命中率の低さはいくぶん改善されている。

        (※2)・・・形状分解
        ナノマシンによって、元々の素材を分解し新たな性質の物体へと変化させる技術を再構築と呼ばれている。
        その過程において、元々の素材が分解されるうちに形状を保てなくなり崩壊する現象を形状分解と呼ばれる。
        分解された素材は、もともと含まれている元素の範囲内で自由に再構築が可能。
        識神と異る点は、識神自体がナノマシンで構成されるのに対し、再構築物は、構築が終了するとナノマシン必要としなくなりナノマシン使用の痕跡を薄くする事ができるため、隠密性に優れている所である。
        ただし、ベースとなる素材の影響を強く受ける欠点を持つ。
        

 

 

 

 

 

 

 

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