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アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-7-1】残党軍出撃!

 残党軍出撃!

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原作イラスト提供 きゅーぶ先生

 

【1-7-1】



    補給を済ませた 5機のSU-55は、機上スターター(※1)により自力でエンジンを再始動し、飛行甲板のセンター位置についた。
    艤装中のこの艦はまだカタパルトはおろか航空設備はまだ装備されていなかったが、もともと陸上戦闘機であるSU-55は未整地の短い急造滑走路からでも離着陸できるように設計されており、カタパルトの有無など問題にはならなかった。
    さらにフネの進行方向から気流が流れてくるので、これだけでも航空機の発進に必要な揚力を大きく助成する。

    航空設備が整っていないため、艦内からハンドリング(※2)が行える状況ではかったが、仮設のナノリンクを通じで出発の連絡をよこしてきた。

    【ケンジ】
        「こちら加藤戦闘機隊、補給が済み次第、勝手に発信するぞ。」

    【サダッチ】
        「了解しました。」
        「くれぐれも事故のないように。」

    【ケンジ】
        「接近する敵戦闘機とかは全部こちらで引き受ける。」
        「終わったらそのまま新田原に降りるので、ここらでいったんお別れだ。」

    【サダッチ】
        「お願いします」
        「戦闘における関係機関との連携は、私達生徒会が責任をもって対処します。」
        「思い切ってやっちゃって下さい。」


    【ケンジ】
        「了解した。」

    【ケンジ】
        「全機発進っ!」
        「ぶっ叩きにいくぞ。」

    甲板に機体を拘束していたテンションワイヤーを機内から遠隔操作で解除する。
    そして車輪のブレーキを解除し、スロットルを押し込んだ。
    双発のエンジンが最大出力に達すると、高効率燃焼特有の紫色のジェット排気を形成し一気に加速して甲板を離れた。
    燃料と武器が満載状態となったSU-55ではあったが、持ち前のハイパワーエンジンにより楽々と機体が宙に浮き、ベイパー(※3)を曳きながら大空に駆け上がっていった。


    【サッチ】
        「彼らはもう出たの ?」

    【サダッチ】
        「たった今、出発したわ。」

    【サッチ】
        「艦の傾斜を復元。」

    すでにもっちゃんは帰還してアンやレイチェルたちから操艦を引き継いでいた。

    【もっちゃん】
        「了解」

    SU-55が補給の間、甲板を重力に対して水平を維持していたが、彼らが去ったことで再び艦をもとの状態に復元させた。

    【サッチ】
        「なんだかアチコチからクレームが来ているみたいね。」

    【サダッチ】
        「全艦に傾斜復元を通知しなかったでしょ。」

    【サッチ】
        「さて、そろそろ指揮をクラス委員長に任せましょうか ?」


    【サダッチ】
        「こらっ聞かなかったことにするなっ。」


    【ナナ】
        「いいわよ。」

    【ナナ】
        「今後の予定はどうなってるのかしら ?」


    【サダッチ】
        「当艦の当初のプランは、この瀬戸内海を真西に向かって加速して、九州手前で弾道飛行に入る計画を立てていましたが、地球自転と逆方向の飛行経路となるために、この質量の船では、秒速12Kmまで加速してやらないといけません。」
        「当艦の質量規模で、そこまでの加速を行った場合は、衝撃波により九州地方に甚大な被害が想定され」
        「さらに、推進剤の残量はおそらく、秒速12Kmまで加速する分の余裕がないでしょう。」

    【サッチ】
        「よって大分県の豊後高田手前で佐田岬上空を通過する形で、南へ転舵します。」
        「そこから弾道軌道に乗れば、太平洋上空で西方向へ転針が可能ですので秒速約8Kmの飛行が行え、推進剤の大幅な節約が可能です。」


    【ナナ】
        「それなら、どうせなら今から西方向へ弾道飛行して、直接帰還すればいいんじゃないの ?」

    【サッチ】
        「正気なの ?」
        「たった数百キロの道のりを、そんな低空でライナー飛行したら近畿地方に数兆円規模の損害が出るわよ。」
        「いくら私達が渉外活動を引け受けると言っても各方面からのクレーム処理だけで生徒会機能はパンクします」


    【ナナ】
        「しかし、高知沖では、シナのメタンハイドレード採掘施設と軍事施設が併設されてたメガフロートの真上を通過する事になるわ。」
        「大丈夫なの ?」

    【サダッチ】
        「うーーん。確かに、クラス委員長が心配されるているように、この施設からの猛烈な迎撃が想定されます。」

    【アン】
        「このプラットホームには、艦載型HQ-16の発展型である、HQ-17B(※4)のVLSが6箇所に配備されています。」
        「ただこれは主に中射程の防空を任務としており、低空をかすめない限りはそんなに脅威にはならないでしょう。」


    【レイチェル】
        「むしろ最大の脅威となるのが、エルサレム共和国がシナに輸出したアイアンガード(※5)で、世界最高峰の弾道ミサイル迎撃機能を有しています。」
        「この発射装置が4基配備されているのを日本軍の無人ドローンが確認しています。」
        「このアイアンガードは堅牢な装甲を持つ弾道弾を破壊する事を目的としており、シールドの無い我が艦に万一当たるようなことがあればタダではすみません。」


    【ナナ】
        「これ、ハヤブサの人工電子結界で防御できないの ???」

    【サッチ】
        「大気内を超音速航行しているところへ、ノコノコと甲板に出て行ったら、甲冑とはいえハヤブサは分解して空に消えることになるわよ。」


    【サダッチ】
        「ここはただひたすら躱して逃げるしかできないでしょうね。」

    【アン】
        「まぁ当たらないことを神に祈って。」

    【レイチェル】
        「悪魔が神頼みですか!?」



    【もっちゃん】
        「そろそろ航路クリアー」

    【ナナ】
        「判ったわ。」


    【ナナ】
        「ヘッドウェイ100ノット」(前進速度100ノット)

    【もっちゃん】
        「ヘッドウェイ100ノット、アイ」(前進速度100ノット、了解)

    【ナナ】
        「スロー スラスター ボトム バウ」(艦首下方スラスター微出力)

    【もっちゃん】
        「スロー スラスター ボトム バウ、アイ」(艦首下方スラスター微出力、了解)

    弱いスラスター噴射し、艦首をやや上に持ち上げることで除々に高度を確保していく。

    そこへ外部を警戒していたチームから報告が入ってきた。

    【ヒデコ】
        「索敵結界内に再び多数の侵入を感知っ!!」
        「おそらくまたさっきのやつらです。」

    【サダッチ】
        「直掩は加藤隊に任せて、さっさとズラかるわよっ。」
        「でも、監視は怠らないで。」

    【ヒデコ】
        「判ったわ。」



    シナ空軍 "殲" 航空隊

    【第一波 パイロットB】
        「レーダーに目標のフネを発見。」
        「やや加速をかけているようですね。」

    【第一波 リーダー】
        「いよいよ上がるつもりだな。」
        「絶対に阻止しろっ!!」

    【第一波 パイロットB】
        「しかしさっきのSU-55の反応がどこにもありません。」
        「燃料が切れて基地に引き返したか ?」

    【第一波 リーダー】
        「それはないだろう。」
        「ヤツらは我々がまだ居ることは承知しているはず。」


    加藤戦闘機隊

    【マナブ】
        「RWS(※6)で、バンデット、イン、レンジ」(RWSモードのレンジ範囲内に不審機を発見)


    シナ空軍 "殲" 航空隊

        マナブ機が発したレーダーの照射による警告音がコクピットに響いた。

    【第一波 パイロットD】
        「何!?」
        「レーダー照射を受けている・・・だと?」

    【第一波 パイロットB】
        「バカな、ステルスを補足できるレーダーなどあるものかっ!!」
        「おそらくきっと威嚇のためデタラメで照射しているのだろ」

    【第一波 リーダー】
        「気にするな。」
        「もうすぐ攻撃地点につく。」
        「第二波がそろそろ対艦ミサイルを撃つ距離にまで接近してることだろう。」
        「われわれも牽制に出るぞ」

    島影を利用して視覚的に察知されにくいように飛行していたが、高度を上げて戦闘準備に入った。



    加藤戦闘機隊

    【ケンジ】
        「目標を見失うなよ」

    【マナブ】
        「問題ありません、最新レーダーがパッチリ、不明機をチェイスしています。」

    【コンブ】
        「八尾と新田原に問い合わせたところ、この周辺を飛行している友好国の航空機はナシとの事」

    【ケンジ】
        「すべてぶっ叩いて構わん。」
        「FCSオンライン」
        「マスターアームスイッチ・オン!」

    【マナブ】【コンブ】【サブ】【テツ】
        「了解。」

    各機のコンピュータはセンサーで追跡していた目標をデータリンクにより僚機と重複しないように選別し各機の攻撃目標を割り当てていた。

    FCSのモードをRWSをSTT(※7)に切り替えると、それまで中距離を索敵していたレーダー波は、割り当てられた目標に対して集中的に浴びせ、よりいっそうの詳細な飛行データの解析にとりかかる。
    これらのデータは搭載するミサイルに送り込まれると同時に僚機にも共有されていく。


    シナ空軍 "殲" 航空隊

    電波照射を知らせる間欠的なアラームから突然、断続的なビーム照射を受けることを知らせるアラートがコクピットに鳴り響いた。

    【第一波 パイロットF】
        「ロックオンされましたっ!」

    【第一波 パイロットB】
        「なんだと」
        「どこからだっ!」

    【第一波 パイロットD】
        「おそらくさっきからレーダーを浴びせてきているヤツです。」

    【第一波 パイロットB】
        「SU-55かっ!?」

    【第一波 リーダー】
        「全機、散開っ!」
        「迎え撃てっ!」



    加藤戦闘機隊

    【ケンジ】
        「コンバット、オープン!」

    トリガーを引くと、2発のドローンが機体下部の旋回式コンフォーマルウェポンベイから放出された5機のSU-55から放たれた、合計10発のK-77KSが、目標に向かって、まもなくセンサーから消えた。

    【マナブ】
        「10機センサーから消滅。」
        「コンピュータにより撃墜判定を確認。」


    シナ空軍 "殲" 航空隊

    【第一波 パイロットB】
        「くそっなんてやつらだ。」
        「第二波はまだかっ!!」

    【第一波 リーダー】
        「それまで、我々が敵戦闘機を惹きつけるぞ。」
        「そろそろ第二波が視界に入る頃だ」

    しかし、報告を受けていた第二波の飛行ルートと思われる空域では閃光が確認された。

    【第一波 パイロットB】
        「第二波はどうした ?」

    【第一波 パイロットD】
        「第二波が攻撃を受けている模様です。」

    【第一波 リーダー】
        「どこからの攻撃だ ?」

    【第一波 パイロットD】
        「わかりません。 通信が混乱して意味不明です。」

    松山上空で第二波を迎え撃ったのは、新田原所属の日本空軍の戦闘機だった。
    四国沖で哨戒のために展開していた日本海軍の潜水艦によって補足され、さらにAS16(戦域監視飛行船)による赤外線追尾により、出撃した直後から正確に追跡を受けていた。
    そして、地の利を活かして坪神山と南神山の影から迂回するように "殲" 第二波 の背後に回り込んでいた。

    呉に停泊していたイージス巡洋艦からも対空ミサイルを放ち、日本空軍の迎撃を支援した。


    【第一波 パイロットD】
        「第二次攻撃隊が、新田原所属のF-2改と、SU-35Jと交戦中です。」

    【第一波 リーダー】
        「何故だ ?」
        「あの宇宙艦は日本に所属していない筈だぞ。」
        「守る用件は無いはずだ。」
        「これは日本軍による我が国に対する明確な宣戦布告だ。」

    今まで不介入を決め込んでいた日本軍が突然介入してきた事に驚いた。


    宇宙艦ブリッジ

    上空の惑星面境界軌道を通過する日本空軍の偵察ドローンから
    レーザー回線で短いメッセージが送られてきた。

    【日本空軍オペレーター】
        「貴艦は15分ほど前、艦籍がアトランティス近衛艦隊に正式に編入されました。」
        「我々は、アトランティス王室から、我が国との安全保障条約に基づく支援要請を受け、貴艦を攻撃すると思われるシナ空軍の航空部隊に対して、友好国への武力行為に対する警護と、我が日本国への領空侵犯への対処処置として限定的な武力排除を開始しました。」
        「我が日本軍がこの場を引き受けますので、貴艦はこの空域から離脱してください。」


    【ナナ】
        「どういうこと ?」

    【サッチ】
        「このフネは、正式にアトランティスのものになったと言うことですね。」

    【アン】
        「アトランティス艦隊ですか ?」

    【サダッチ】
        「ぃえ、近衛艦隊と言うことですから、この情報が正しければ、王室直属艦隊に組み込まれた・・・と言うことになります。」

    【ナナ】
        「王室直属って・・・だれがそんな事を」

    【サダッチ】
        「判りません。」

    【ナナ】
        「とにかく、安全保障条約のおかげで、日本軍に出動する口実が出来たと言うことね。」
        「いまはこの期に乗じて瀬戸内海を抜けましょう。」



    加藤戦闘機隊

    瞬く間に第一波の "殲" 10機を落とした。
    5機が2発ずつ発射したミサイルは、1機あたり2発で狙い、全弾が命中していた。
    ケンジのSU-55隊は、さらに第一波の部隊に接近した。
    最初にすれ違った時は、一撃離脱だったが、今度は燃料も武器も残っている。

    IRSTが自動的に目標を追跡し、敵の位置を知らせきた。

    【サブ】
        「タリー・フォー」(目標発見)

    【テツ】
        「10オクロック、ロー、ボギーっ!!」(10時方向、下方に、敵機)

    IRSTからのデータはそのまま僚機とR-66Rに送信され、ただちに発射された。
    近接空中戦を想定していない "殲" の機体は瞬く間に R-66R の餌食にされ海に消えていった。
    自称レーダー(自国の)に映らない機体であっても膨大な発熱で赤外線を撒き散らしながら飛行する殲は、熱尾誘導のR-66Rにとっては攻撃難易度の低い航空機であった。

    【ケンジ】
        形状はマネても、どうしてその形になったか理解できないから格闘戦できないんだよ。

    【ケンジ】
        「敵にあまり近づきすぎるなよ、いくらステルス機とは言え、接近したら反射波が濃くなって相手にこちらの正確な位置が知られてしまうぞ。」

    【マナブ】【コンブ】【サブ】【テツ】
        「了解」


    シナ空軍 "殲" 航空隊

    【第一波 パイロットB】
        「くそ、おなじステルス同士でどうしてヤツを捉えられんっ!」
        「あそこにいるのが判っているのに、どうしてレーダーで捕えられんのだ。」

    現代の航空戦は、極度にハイテクに依存しており、目の前に見える敵でさえ、センサーで追尾しないと攻撃できないようになっていた。

    第5世代機の戦闘機では、はじめてステルス機能を得たが、その機能を過信するあまり、敵に発見される前に叩く事が空中戦の大前提となってしまった。

    昔ベトナム戦争アメリカ軍が撃てば必ず当たると言うミサイルの神話を過信して、ついには戦闘機から機関砲を取外してしまう過ちを犯した時期があった。

    その結果、巧みに逃げまわる敵機もさることながら、思いの外ミサイルの精度が悪く、目標に当たらないケースが続出し、ミサイル切れとなったアメリカ軍機が敵機に追い回される事態に直面した。 その反省から戦闘機に機関砲を搭載する事が復活し、空中戦の訓練にも力を入れた。

    しかし、時代が変化し、ステルス機能を得たことで、先制攻撃が可能となると、再び格闘戦の重要度が低下し、戦闘機の性能として格闘戦の能力は問われなくなってしまった。
    だが、この思想は、相手が第4世代までの旧式の戦闘機が相手である事が前提であり、相手が同じ第5世代の戦闘機相手では、お互いを捉えられず、結局は接近戦をする羽目になってしまい、そのため、機動力の劣る機体で、しかもロックオンしずらい敵を相手に戦わなければならなかった。

    これらの2度の失敗から、SU-55や、日本軍のF-3戦闘機など、第6世代の戦闘機は最初からステルス機を相手にした格闘戦においても優位にたてるように設計されていた。
    それが、今この空戦においてSU-55と殲との戦闘力の格差として示されたわけだ。


    まもなく、第2波が全滅したメッセージを受けた。
    が、普通はここで退却命令が出るはずだが、受け取った命令は、最後の1機になっても、目標の破壊任務を完遂せよとの内容だった。
    鹵獲に失敗して逃げられつつある宇宙艦を落とすことが絶望的な局面となった今なお、追撃を命令すると言うことは、これは事実上の全滅を期待した口封じであることは疑いようが無かった。
    このまま帰還したとしても命は保証されないだろう。

    【第一波 リーダー】
        我々は玉砕を好む小日本とは違う。
        国には家族もいる。
        今死ぬ訳にはいかない。

    現代の空中戦では瞬時にものを判断しなければ命を失いかねない状況で、瞬時にどうやったら生き残れるかを計算した。

    【第一波 リーダー】
        「生き残った残存機全機へ告ぐる」
        「全機武装を投棄し、無条件降伏をする。」

    【第一波 パイロットD】
        「何故です?」

    【第一波 リーダー】
        「このまま闘っても、あの圧倒的な戦闘力を前に我々には勝つ見込みがない。」
        「しかしこのまま帰還するとおそらく口封じとして射殺されるだろう。」
        「お前たちにも家族はあるだろう。」
        「生き残るためにはどうすべきか ?」
        「幸いなことに、我々が憎むべき小日本は命を重んじる。」
        「我々は本心では、今戦っているヤツらは、昔の残虐な日本軍とは違う事を確信している。」
        「降伏すれば命を取る事はしないだろう。」
        「このまま時間がすぎ、再び平和な時期がやってくれば、我々に再び家族に会えるチャンスが必ずやって来る。」
        「判ってくれるか ?」

    レシーバーの向こうですすり泣く声が聞こえてきた。
    だれも反論するものは居なかった。

    【第一波 パイロットG】
        「隊長、日本のラーメンって美味いんすかねぇ ?」
        「俺まだ日本に行ったこと無いんですよ。」
        「兄貴のヤツが昔に日本に行った時のラーメンがメチャ美味いって感動して帰ってきたんだよ。」
        「兄貴が食べたラーメン、食ってみてぇーなー。」
        チーム最年少の17歳のパイロットで、もともと農村で暮らしていたが運動神経を買われて空軍に選抜された。

    【第一波 パイロットB】
        「お前、さっきまで、小日本だとか鬼子とか言ってたのに、もう "日本" なのか ?」
        「調子のいいやつだな。」

    【第一波 パイロットG】
        「ぇっ!? そんなことはあり・・・」
    突然、レシーバーからの音声が途切れた。
    しばらくして後方から爆発音と衝撃が追いついてきた。

    はっと振り返ると、ソイツの機体はバラバラに破壊されて海に落ちていくのが見える。
    パラシュートが開かないところを見るとダメか。
    せめて苦しまずに死んでくれれば・・・そう祈るしか無かった。

    【第一波 パイロットB】
        「気を抜くな、まだ戦闘中だ、こちらに戦闘意思がない事を知らせるんだ。」

    【第一波 リーダー】
        国際救難周波数・・・これならあの SU-55 のパイロットも必ず聞いていることだろう。
        だが我が本国にも投降が知られてしまうリスクがある・・・。

    迷いに迷ったが、再び撃たれる前に意思表示をしなければならない。
    しかし連絡手段がない以上は国際救難周波数を使って投降を表明する以外には手はなかった。


    その日のトップニュースとして世界に動画公開されたこの瀬戸内海空中戦は、日本空軍機全機生還に対し、"殲" 部隊、全機未帰還(非公式で5機が政治亡命)で幕を閉じた。
    帯締学園の宇宙艦とSU-55については触れられてはおらず、それにこの動画ニュースはすべての国で閲覧できたわけでもなかった・・・。


    宇宙艦ブリッジ

    【ナナ】
        「そういえば、この子・・・名前は ?」

    【サッチ】
        「ぅ、まだ決まっていない。」

    【ナナ】
        「じゃ"島風"」

    【サッチ】
        「ぇっ!?」
        「島風って、この前、伊勢と日向の盾になって沈んだあの島風 ?」

    【ナナ】
        「まぁそうなんだけれど、さっき、大九野島に居た時、いい風が吹いていたのよ。」
        「だから、そこから名前もらおうかなと思って。」

    【レイチェル】
        「いいんじゃない。」
        「どうせまだ艦隊のDBにはエントリーされていないんでしょ。」
        「先代の島風が抹消されてまだ間がないから、今なら登録できるんじゃないの ?」

    【サダッチ】
        「しかし、理事長の許可も得ずに勝手に学園の資産に名前をつけるのはどうかと・・・」
        「あとで叱られてもしりませんよ。」

    【ナナ】
        「私が怒られてあげるよ。」

    【サダッチ】
        やれやれ


    【もっちゃん】
        「亜光速ドライブ、大気圏外離脱運転に入ります。」


    翼のない島風は弾道軌道に乗せるため、スラスターで艦の仰角を上げつつ亜光速ドライブの出力を上げた。
    体がシートに押さえつけられ、加速の振動でシートのハーネスがどこかの金具と接触してガチヤガチャと鳴り、気圧の断層を通過する度にガンと言う衝撃ととともに激しくフネが揺さぶられる。

    【もっちゃん】
        「機関中速、速力700ノット。さらに加速中」

    さすがに、大質量の宇宙艦が大気内を音速で移動すると、全面で圧縮された空気の水分が盛大なベイパーを発生させ、長い尾をひいた。
    艦の表面構造物が空気を切り裂き、飛行機雲となってたなびく。
    巨体を秒速8キロ付近にまで加速させていくと高度が上昇していくにも関わらず、その衝撃波が海水面を激しく揺さぶり荒波を立てた。


    【サッチ】
        「このフネのシッポ長くて目立つわね。」

    【アン】
        「これだけの質量が移動すれば仕方が無いわよ。」
        「そもそも大気内を飛行するためのフネじゃないし整流は無理っしょ。」
        「そのうえ湿度の高い海の上だもんね。」

    電子装備を艤装していない島風が頼りにするのは、訓練生のナノスキルによるセンシング技術だ。
    人工電子結界と呼ばれるナノシールドは防御だけでなく探知にも使用され、さっきの戦いでもその探知能力は専用の軍事技術と同等の能力を発揮していた。

    そのスキルが弾道飛行に移行した島風を正面下方から急速に上昇して向かってくる何かを探知した。

    【ヒデコ】
        「12オクロック、ロー、バンデッドっ!!」(正面方向、下方から不審機)

    【サダッチ】
        「何 ?」

    【なるみ】
        「識神を放出して画像を採取します」

    まもなく、識神が正体を捉えた。

    【ヒデコ】
        「おいでなすったか。」
        「アイアンガード!!」
        「数、6」
        「もとい、8!」

    【ナナ】
        「迎撃は・・・」

    【サダッチ】
        「出来るわけないっしょ」

    【ナナ】
        「回避できる ?」

    【フクちゃん】
        「んーーー。」
        「届かないんじゃないの ?」

    【ナナ】
        「ぇ、どうして」

    【まっちゃん】
        「アイアンガードは、落ちてくる弾道ミサイルは迎撃できるけれど、遠くへ飛んでいくものを追いかける能力がない。 なので高度が足りずに失速すると思うよ。」


    この見立ては正しかった。
    急激に加速して上昇する島風を追いつけず、最高高度に達したアイアンガードはやがて失速して高度を下げていった。


    しばらくすると、体が軽くなり、ほとんど重力を感じなくなってきた。
    島風がミニマムエナジー高度(※8)に載ったことを意味していた。

    【ナナ】
        「ぉおおおーーー無重力だぁ♪」
        「ねぇねぇ、ベルト外してもいい ?」

    【サダッチ】
        「ダメです。」
        「観光に来たのではありません。」

    【ナナ】
        「えええーーーケチぃー!!」

    そして、すっかりその存在を忘れていたが・・・ブリッジ内にあの例の "猫の砂" が舞い始めた・・・。

    【ナナ】
        「ひぃぃぃぃ、コレ何ぃぃぃ ???」

    【サダッチ】
        「こっこれは、どういう事だっ!!」

    【サダッチ】
        「サッチ、これは何よ。」

    【サッチ】
        「・・・」

    【もっちゃん】
        「私は警告したよ。ダメだって。」

    【サダッチ】
        「サッチ、これはあなたの仕業なのねっ!!」

    【サッチ】
        「・・・」
    耳を後ろに向けて聞こえないフリをしたが

    【サダッチ】
        「やはり貴女のせいなのね ?」

    【サッチ】
        「そ、そんなに怖い顔して怒らなくていいじゃん・・・。」

    【サダッチ】
        「これはなんなのよ ?」

    【サッチ】
        「ネコのすな。」

    【サダッチ】
        「どうして、ブリッジにネコの砂なのよ。 意味がわかんないわ。」

    【もっちゃん】
        やーーーい、怒られてやんの♪

    【サッチ】
        「だって、おトイレ場所遠いし、マップ使えないし、道に迷うかもしれないし・・・」
        「だから出発前に購買部で砂を買って、トイレを作ったの。」

    【サダッチ】
        「ブリッジでトイレ作ったら、みんなに見られて恥ずかしいでしょ。」

    【もっちゃん】
        ほんとほんと、アトランティス人て羞恥ってものがないのかしらねぇ。


    【サッチ】
        「だからダンボールももらって、囲いも作ったよ。」

    ブリッジの端を指さしたが、そこには無残にも戦闘の衝撃で無残に破壊されたトイレが無重力で漂っていた・・・。

    【もっちゃん】
        だから囲うとか、そもそも、そういう問題じゃないってのよ。


    【サダッチ】
        「もぅ、粘着の弱いビニールテープでとめようとするからでしょ。」
        「ダンボールは幅の広い養生テープでとめなきゃダメよ。」

    【もっちゃん】
        ぇ?

    【サッチ】
        「うん。」

    【サダッチ】
        「しかし、あの時の音は周囲に丸聞こえね。」

    【もっちゃん】
        ぇえーっ?

    【サダッチ】
        「ぁ、脳内音消しアプリを使えば、解決ね♪」

    【もっちゃん】
        「って、お前もかっ!!!」

    【もっちゃん】
        「さっさとあのゴミを片づけろっ!! 運転のじゃまになるっ!! この変態アトランティス人がぁぁーーーー」

    【サダッチ】
        「お、怒ったら怖いね」

    【サッチ】
        「うん、あの人さっきも怒ってたよ。」

    【もっちゃん】
        ぅぅぅぅぅ、まったくコイツらは・・・#


    突然、艦内にバーーンと爆発音と振動が響いた。

    【ナナ】
        「何 ?  何が起こったの」

    【フクちゃん】
        「第3亜光速度ドライブの出力が低下しています。」

    【サッチ】
        「故障したの?」

    【フクちゃん】
        「判りません」

    【まっちゃん】
        「さっきの衝撃の影響かどうか判りませんが、ジェネレーターがスクラム(※9)しましたっ!」
        「残りの亜光速度ドライブに供給される電力も停止っ」

    電力供給の断たれた残ったドライブもコンデンサー内に残された電力を消費すると次々と停止した。

    【もっちゃん】
        「機関、停止。 完全に沈黙しました。」


    【サダッチ】
        「ジェネレーターの復旧は ?」
        「電気がなければドライブの再起動できないわ。」

    【フクちゃん】
        「再起動を試みていますが制御ネットワークが Off-Line になっててコマンド送信できません。」


    【まっちゃん】
        「うーーん。」
        「第3ドライブ・・・。完全にお釈迦になってますね。」
        「いまはまだ惰性で進んでいるけれど、そのうち空気抵抗を受けて落ちてしまうわ。」

    【ナナ】
        「そとは真空ではないの ?」

    【まっちゃん】
        「この高度でも僅かな大気はあるわ。」
        「僅かであっても高速で移動する物体にとっては大きな抵抗となるのよ」
        「だから、ガス空間を飛行することを前提とした宇宙戦闘機には翼がついてるのよ。」


    【フクちゃん】
        「外部から攻撃を受けたのかもしれませんねぇ。」

    【ナナ】
        「索敵結界は ?」

    【サダッチ】
        「ナノサブスタンスが切れていましたので展開されておりません。」

    【フクちゃん】
        「もしこの高度で攻撃を受けたのであれば、おそらくアルー3(※10)でしょう。」
        「エルサレム共和国がシナに輸出した最新鋭の高高度弾道ミサイル迎撃用ミサイルだ。」
        「日本軍からの情報でエルサレムから輸入したとは聞いていたが、まさか四国沖に配備していたとは。」

    【ナナ】
        「この艦が沈まなかったと知ると、第二波がくるでしょうね。」

    【サッチ】
        「どうします ?」

    【サダッチ】
        「そういえば、艦内に侵入した鹵獲隊はどうした ?」

    【アン】
        「この高度です。」
        「閉じ込めた区画は気密されていませんから、今頃全員・・・。」

    【サダッチ】
        「そっか、よしハッチを開放して外へ放り出せ。」

    【レイチェル】
        「ぇっ!?」

    【サダッチ】
        「デコイの代わりになってもらう。」

    【ナナ】
        「仏さんを宇宙に放り出すのですか ?」

    【アン】
        「しかたないです。」
        「次狙われるのは私達ですから。」
        「それにどのみち宇宙に放り出すつもりで閉じ込めたんです。」

    【サダッチ】
        「地球に持ち帰ると面倒なことになりますよ。」

    【ナナ】
        「わかりました。」

    【サダッチ】
        「ハッチを開放。」
        
    気密区画ではないため、高度を上げるにしたがって空気が抜けたこの区画は、ハッチを明けたくらいでは、シナ軍の遺体や装備を宇宙に放り出すことはできなかった。

    【サダッチ】
        「酸素バルブ開放。」

    【レイチェル】
        「開放しました。」

    これにより、空気が外へ逃げようとする作用によってシナ軍の遺体と装備が外へ押し出されていった。
    派遣された識神により艦外へ放出されたことが確認された。

    その直後、艦が再び大きく揺れた。
    しかし爆発音がしない。

    【フクちゃん】
        「きっと、さっき外に放出したのにミサイルが命中したのだと思われます。」

    ナナが両手を合わせ成仏を願った。
    それを見た他のクラスメートたちも、各自の宗教の慣例にしたがって英霊の栄誉を讃えた。

    【サッチ】
        「次のミサイルは ?」

    【ヒデコ】
        「その心配はないかと」。
        「もうこの艦はおそらく迎撃センサーの範囲外に出ていると思います。」
        「これ以上の攻撃はないかと。」

    【サダッチ】
        「そうか・・・。」
        「さて、あとは、とにかく、艦を学園にまで持ち帰るだけだな。」

    【まっちゃん】
        「その事なんですが・・・。」

    【サダッチ】
        「なんだ ?」

    まっちゃん耳打ちされると顔色を失った。

    【サダッチ】
        「なんですって!?」

    【ナナ】
        「どうしたの。」

    【サダッチ】
        「大気圏に降下できない。」

    【ナナ】
        「どうしてよ。」
        「亜光速ドライブが1基失ったくらいで再突入にはあまり支障はでないでしょ ?」

    【フクちゃん】
        「ああ、通常ではね。」

    【サッチ】
        「通常 ?」

    【フクちゃん】
        「宇宙艦が大気圏に降下する方法は大きく分けて二通りあり、一つはネガティブグラヴィティジェネレーターを使用して地球重力に対してほぼ水平に降下するパターンと亜光速ドライブを噴射して、地球重力に対して垂直に降下するパターンがあるのは知ってのとおりですね。」

    【まっちゃん】
        「しかしこの艦はまだ艤装の途中でネガティブグラヴィティジェネレーターは未実装。」
        「ということは、この艦は亜光速ドライブを使用しての降下を行うことになります。」

    【サダッチ】
        「この艦に搭載されている ADE-MGD03B 亜光速ドライブは3基だ。」
        「通常大気圏突入時には3基を使用して降下を行う。」
        「しかし今私たちは1基を失い、2基で降下するか否かをの選択を迫られているわけだ。」

    【ナナ】
        「それが何か問題でも ?」
        「残った2基でも降下に得られる出力は余裕で得られるでしょう ?」

    【サダッチ】
        「この艦は炭化水素燃料はギリギリでしか搭載していない。」
        「そして何度かの交戦でそのたびに微妙に予定より多く燃料を消費している。」

    【フクちゃん】
        「亜光速ドライブ2基での降下は、すなわち、本来3基でこの艦の重量を支えていたのを2基で支えなければならないんだ。」
        「当然ですよね。」
        「2基でこの艦を支えるに必要な燃料は、3基の時より消費量が激しくなります。」
        「つまり、・・・。」

    【まっちゃん】
        「おそらくこの艦は地球降下中に燃料切れで落ちる可能性が濃厚と言うことになります。」

    【ナナ】
        「ぇえええーーーっ!!!」
        「じゃどうするのよ、このまま宇宙の迷子になると言うの ?」

    【まっちゃん】
        「迷子にはならないでしょう。」
        「この艦は弾道コースに乗っているだけなので、その前にすぐに地球の引力に引かれて降下を始めるでしょう。」

    【サッチ】
        「マジっすか!?」

    【ナナ】
        「それマズイんじゃないの ?」
        「つまり、今の状況では落ちるしかないってことじゃないのよ。」

    【サダッチ】
        「まぁそういう事になりますね。」

    【サッチ】
        「何を落ち着いているのよ。」

    【ナナ】
        「どうにかできないの ?」

    【サダッチ】
        「私たちにどうにもならないものはどうにも出来ません。」

    【艦内】
        「ぎゃぁーーーーーーーー!!!」





        その頃、上海のシナ軍諜報部の一室

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「さて、新しく実施される侵攻作戦の名称が決定した。」
        「我が書記長により「倭の国奪還作戦」と命名された。」
        「実施日はまだ決定していないが、すぐ近いうちに作戦が行われる。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「これは、我が国とその友好国に対して敵対的な態度をとり続ける日帝に対する報復でもあり、隋や唐の時代における我が属国であった倭の国の帰属を復活する為の重要な作戦となる。」
        「まず取り掛かりとして、工作員を派遣して奪還目標となる地区の周辺情報の収集と、建造中の最新鋭のAMPの鹵獲を実施する。」


    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「しかし、倭の国と言えば、現在の大和と言う地域だが、過去にあの地域は過去に隋や唐と交流があったと聞くが属国であったと言う証拠がないぞ。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「交流があったと言うことは、かつての琉球と同様、歴史的客観的にみて我が国の属国であった事は否定出来ない事実である。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「そもそもの話として我々にとっては過去の歴史が事実かどうかは問題ではない。 過去の外交の成功事例がそれを証明している。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「歴史は我々が進むべき未来の為に存在する。その未来に進むべく過去を創作して人民が一致団結するのは我々の権利であり、他国がそれに口を出すのは内政干渉である。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「それに考えても見ろ、歴史を自由に創作したとしても我々や人民が突然死ぬと言うことは無いだろ ?」
        「南京虐殺がいい例ではないか。」
        「最初は2万人の犠牲者たったのが毎年順調に犠牲者の数を増やし、今や2000万人の犠牲者として世界記憶遺産として登録されている。」
        「人はそれを信じ、我が国の原動力となっている。」
        「それでいいじゃないか。」
        「実際に2000万人が死んだわけでもない。」
        「だれにも迷惑はかかっていない。」
        「それを日帝の連中は頑なに拒否しやがる」
        「我々が提案する歴史を拒否するのは明確な内政干渉である事を罰しなければならん。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「まずはその足掛かりとして倭の国を開放し、日帝が現在独占している宇宙技術と、さらにアンドロメダ星系と敵対する種族が開設した大使館を、我が国が接収して管理下におく事が今回の目的となり、ゆくゆくはアトランティス残党を制圧し、アンドロメダ陣営に参画する事が最終的な計画となる。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「これは我が国が地球人同士の宇宙の覇権を巡る戦いにも勝利することを意味する。」

    【統一朝鮮軍 国防部 補佐官】
        「しかし、我が国はすでに東海作戦(日本名:対馬戦争)では、かなりの損害を受けており日本軍との再度の戦闘には慎重を求める声が政府内で出ております。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「心配するな。」
        「アメリカとは水面下で協力をとりつけておる。」

    【統一朝鮮軍 国防部 補佐官】
        「といいますのは ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「日帝宇宙艦隊主力は、アメリカ、EUの艦隊とともに冥王星での訓練に参加する予定だった。」
        「しかし、この訓練が急遽、アトランティス残党の都合により中止になったらしい。」
        「日本の艦艇は一斉にドッグに入り入念なメンテが行われるそうだ。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「我が情報部によると、アトランティス残党は日本軍にある作戦をオーダーしたらしい。」
        「信頼すべき情報によると、アトランティス内部にも日本軍を良しとしない派閥があるらしくて、どうやら成功率の薄い分の悪い作戦に日本軍を駆り出すそうだ。」
        「先日その為の準備に入ったと言う話だ。」
        「この作戦には日本軍の陸上部隊が大量に動員されるらしく、その規模は現在の半数の戦力がアトランティスの作戦に動員されるとのことだ。」
        「日帝の最大戦力である宇宙艦隊と、陸軍が不在となれば、この気に乗じで一気に攻め落とすことが可能である。」

    【統一朝鮮軍 国防部 補佐官】
        「しかし、それでも日本軍は侮れないぞ。」
        「第一、東海作戦以降は国際世論は日帝の味方だ。」
        「国際社会からこれ以上の追加制裁を受けば我が国はさらに貧困に喘ぐことになるぞ。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「国際世論の心配の必要はない。」
        「我々大陸の民族が代々受け継いできた世論操作の手法を持ってすれば、大した問題ではない。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「博多と釜山を結ぶ高速鉄道を爆破する。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「ちょっと待って下さい。」
        「正気ですか ?」
        「あの列車には、我が国の多くの国民が観光に利用している。」
        「爆破すれば多くの犠牲者が出ます。」
        「さきほどは、歴史が変わっても人が死ぬことはないとおっしゃった・・・。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「何、気にすることはない。」
        「あれはものの例えだ。」
        「どうせ小日本に観光に行くヤツらは非国民だというのはそちらの世論ではなかったのか ?」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「いゃ、しかしです。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「よく思い出すんだ。」
        「我が人民の祖先たちは以前にも列車を爆破してまんまと日本軍に濡れ衣を着せることに成功した事例が残っている。」
        「まさか自分の国民を乗せた列車を自分で吹き飛ばしただなんて誰も思うわけがないからな。」
        「正義の戦争というものには必ず尊い犠牲がつきものなのだよ。」
        「アメリカだって真珠湾911の例のように攻撃されることを知りながらわざと攻撃をさせて被害者を    出すことで世論を味方にする事に成功してきた。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「この世界の常套手段さ。」

    【統一朝鮮軍 国防部 補佐官】
        「ただ、だとしても、アメリカはどう動くでしょうか ?」
        「朝鮮統一の際、一部の北朝軍がソウルに攻め入った時、日本国内のアメリカ軍は第三次日米安保条約により日本防衛とは無関係という理由で日本政府からの出動許可が出なかったために我が国への援軍が来なかった。」
        「そしてその直後の東海作戦では、我が国領内のアメリカ軍は日本軍と戦おうとはしなかった。」
        「基本的にアメリカ軍は日本の味方です。」

    【統一朝鮮軍 国防部 補佐官】
        「今回は日本の奥深くまで侵攻する事になる。」
        「いくら旧領土の奪還とはいえ、おとなしくアメリカが黙ってくれるとは思えない。」
        「そして軍事同盟を結んでいるアトランティスの動きも把握いたしかねます。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「アメリカに関しては、もし作戦が成功すれば、日本が独占状態にある宇宙技術が開放されることになる。」
        「アメリカに対しては我々が開放したそれらの技術を平和利用の為に無償で提供しようではないかと提案している。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「返事は ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「作戦開始で1週間で占領できなければ、アメリカは停戦を要求してくるそうな。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「一週間 ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「ラクな話だろ。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「2日で十分だ。」
        「最初の一日で、核をちらつかせ2日目で無血占拠。」
        「ヒロシマの恐怖に怯える小日本は人命を重んじるからすぐに倭の国を明け渡すさ。」
        「琉球を攻めた時も小日本は何も動かなかった。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「噂の沖縄戦アレルギーってやつですか ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「そうだ。」
        「多くの死者が出ることを恐れ、一度占領させてから外交で解決を図ろうと言う姿勢のことさ。」
        「そちらが以前、一度は攻め入った竹島でもそうだっただろ。」
        「島民と漁民を一人残らず処刑した衝撃は日本政府を萎縮させるのに十分だったではないか。」
        「日本政府は国民に事実を公開しなかったことから、犠牲者が出ることで国民感情が悪化しない事にいかに神経をとがらせていたか判るだろ ?」
        「やつらは腑抜けだ。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「いいか、君たち。」
        「この世は力が絶対的な正義なんだよ。」
        「勝ちさえすれば、歴史を好きに作れる権利が得られるからな。」
        「われわれ人民はそうやって4000年の壮大な歴史を描いて来た。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「しかし核をチラつかせたくらいで、はたしてビビるでしょうか ?」
        「我々が朝鮮を統一する前の北朝政府は頻繁に核で周辺国を脅迫しましたが、小日本の連中は逆に軍備を拡大せさてきた。」
        「今回も逆効果になりはしないだろうか ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「なぁに、日本政府は馬鹿だが、エンペラーであれば日本人の命を考えてすぐに明け渡すようになるさ。」
        「政治家はエンペラーには頭が上がらないからな。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「ちょっ、ちょっとまってください。」
        「日本のエンペラーを脅迫するのですか?」
        「相手は、2000年の歴史を持つ地球序列ではダントツ第1位で、序列第2位のローマ法王でさえ足元の及ばない格式のあるお方ですよ。」
        「あなたは全世界を敵に回す気ですか ?」
    顔面が蒼白になった。

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「我が協賛党には関係のない話だ。」
        「我々にとってこの地球上でもっとも位が高いのは、我が5000年の歴史を持つ人民の書記長である。」
        「それを忘れないことだ。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「し・・・しかし、この件については、そちらの書記長はどのように ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「我が書記長、直々の提案だ。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「判りました。」
        「ただ、事が事だけに、一度戻って大統領と相談させてください。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「うむ。  賢明な判断を期待しておるぞ。」


    【統一朝鮮軍 国防部 補佐官】
        「アトランティスはどうします ?」
        「そういう理屈がヤツらに通じるでしょうか ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「あの国も心配ないだろ。」
        「一応日本とは軍事同盟を結んではいるが、原則として地球人同士の争いには不介入との立場をとっている。」
        「やつらが地球に介入するのであれば、第二次世界大戦で日本は敗れたりなんかはしなかったさ。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「あちらもアトランティス残党が地球人に広く知れ渡るのが都合が悪いのだろう。」
        「いままでずっと、地球文化にアトランティス人が一切関与してこなかったおかげで、我々としても人民どもにアトランティスと言う存在を隠蔽しやすくて大助かりで感謝しなければな。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「つまりだ、総合的、客観的に見て、すべてがこちらに有利に事がすすめられるということだ。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「作戦が成功すれば、大使館は我が国の手に落ちる。」
        「交渉相手が日帝から我がシナに変わっただけの事だ。」
        「アトランティスの技術が手に入れば、シンカンセンやAMPと同様、我が国が開発したオリジナル技術として世界に売りに出せる。 そうなれば、わが協賛党の今後1000年の繁栄も間違いはない。」

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「さすがですな。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「すでに、手はずは整えつつある。」

    そこへ秘書が入ってきて、メモを手渡した。

    【統一朝鮮軍 国防部 長官】
        「なにか問題でも ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「宇宙艦の鹵獲に失敗したそうだ。」
        「強襲部隊は全滅。」
        「残念なことに、我がAMP隊に加わったおたくの隊員も行方不明となったそうだ。」

    【統一朝鮮軍 国防部 補佐官】
        「なんてことを。」
        「今、そのフネは ?」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「アルー3での追撃で1発を命中させたところまでは観測結果で判明しているが、その後の観測班からの報告では突然光学監視装置から姿が消えて、レーダー反応も消失したそうだ。」

    しばらく沈黙したのち
    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「そうか全滅したか・・・ま、強襲部隊に関しては口を封じる手間が省けたな。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「ネットの動向はどうだ」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長秘書】
        「動画が世界に配信され始めたようです。」
        「しかし情報は完璧に遮断しており国内流入の心配はございません。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「情報管制を強化して、我が軍の敗北は絶対に公にするな。」
        「もしネットに噂を流布したものは国家転覆罪を適用して逮捕しろ。」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 部長】
        「外交部からは、いつもとおり日本軍の自作自演だと非難させておけ」

    【シナ人民共和国 中央軍事委員会 統合運用司令部 総参謀長】
        「かしこまりました。 その様に手配いたしましょう。」




(※1)機上スターター
            航空機のエンジンをスタートさせる装置。
            自動車で言うセルモーターに相当する。
            戦闘機の中には、地上設備から圧縮された空気を送り込まれることでニューマチック・スターターが駆動され、そこに接続されたギヤを介してエンジン本体が回転を始める。
            通常は発進時にしか使用しないので機体には装備されず、地上設備からの支援を得てエンジンをスタートさせるが、最前線等、地上設備のままならない基地での運用を考慮された機体の場合、多少重くなっても(スペースも取るし)
            自前でスターターを機体内に持ち、あらゆる場所で離着陸が可能な事を優先された機体もある。
            スターターを機体内に保有するか外部から支援を受けるか、それぞれ一長一短なので航空機の運用思想が現れる部分でもある。

        (※2)ハンドリング
            飛行甲板上は非常に狭いため、限られたスペースを有効に活用するために甲板上の航空機の位置を把握し、常に任務に最適なポジションとなるように航空機の場所を誘導する作業をハンドリングと言う。
            戦闘時には甲板上はヒコーキ、武器、モノ、車両等が入り交じるカオス状態となる為、これらの捌き方が航空戦の雌雄を決することも多々ある。
            同型艦同士であっても、このハンドリングの練度によって戦闘力に大きな差となって現れるため、日々常に訓練を行って練度を高めている。

        (※3)ベイパー
            大気中を航空機や宇宙艦が飛行する際、機体や艦隊の構造物による気流の変化により空気が急激に減圧される事で空気中の水分が凝結(要するに水に変化する)して発生する霧や雲のような現象を指す。
            整流効果の高い戦闘機の場合は急激な機動により発生するが、大気を押しのけて飛行する宇宙艦の場合、構造物が複雑のため船体表面は乱気流を発生させており、絶えずベイパーが発生している。

        (※4)HQ-17B
            ロシアから輸入したM1短距離ミサイルを勝手にリバース・エンジニアリングして、自称国産ミサイル紅旗17として配備された中距離をカバーする自走型の地対空ミサイルシステムである。
            随伴する索敵レーダー車から提供される情報によって飛翔するが、このB型は、四国沖を領海宣言して配備したメガフロート基地の防空システムの一部として VLS ランチャーから発射する。
            大型のフェーズドアレイレーダーからの情報により、256目標を同時に追跡し、そのうちの16目標を同時迎撃する事が可能とされている。

        (※5)アイアンガード
            エルサレム共和国が開発した拠点防空用の弾道ミサイル迎撃システムで、着弾予想範囲を高速コンピュータで判定し、事前に設定した絶対防衛円内のエリアのみに入ってくる弾頭のみを攻撃し、他に着弾するものについては、無視すると言う方法で迎撃精度を飛躍的に高めている。
            ただし着弾予想地点をフルイにかけるため、迎撃タイミングは着弾ギリギリとなり、迎撃に成功したとしても付近に残骸が飛び散り、たびだひ二次災害を引き起こしている。

        (※6)RWS・・・Range While Search
                索敵レーダーの仕様の一つで、対空監視用として中距離のレンジを捜索する。

        (※7)STT・・・Single Target Tracking
                索敵レーダーの仕様の一つ。
                火器管制システムが攻撃目標に対し目標を追尾する為に短い間隔で電波を放射する事で正確な位置を割り出し、確実に武器システムが目標を捉える事に成功した状況をロックオン状態と言う。
                複合センサーが主流となっているこの時代では、長距離索敵とロックオンを同時多数の目標に行えるマルチトラッキングモードを使用するが、訓練等のシミュレーター環境ではイコールコンディションを目的にシングル・モードのみに制約がかけられている。

        (※8)ミニマムエナジー高度
                弾道飛行する際の一番効率のよい飛行経路。
                惑星面境界軌道(地球で言う周回衛星軌道)より低い高度を飛行する。

        (※9)スクラム
            緊急停止を意味する。
            重大な事象が発生した場合、ジェネレーター本体への損害拡大を防ぐために通常の停止手続きをふまずに強制的に停止させる荒業。
            原子力核融合の両方のタイプのジェネレーターには必ずこの機構が備えられている。

        (※10)アルー3
            アメリカが出資して、エルサレム共和国が開発した高高度を飛翔中の弾道ミサイルを迎撃する為のシステム。
            ひじょうに高高度の迎撃が可能で、島風のエンジンを破壊したのは、コイツだと思われる。
            このミサイルは大気圏を離脱してくる敵の基地上空の弾頭も攻撃が可能だが、開発中の後継モデルであるアルー4は、さらに進んで、発射直後、あるいは発射直前の地上にある状態の弾頭ですら迎撃する事が可能といわれている。
            アルー3は、アメリカの強い反対を押し切ってシナに輸出した事が確認されているが、さらに新型のアルー4についてはアメリカに替わってシナが資金を提供して開発を後押ししている。

 

 

 

 

 

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