アトランティスの亡霊 アトランティス 亡霊 宇宙艦隊 ナノマシン 人工電子結界 陸戦型戦闘機 先進型機動甲冑 小説 SF 学園 軍事 鬼 悪魔 ミリタリー イラスト 美少女 萌

アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-10-4】 歴史捏造の権利

【1-10-4】

  

帯締の村の外れにある巨大な病院の一室・・・
田舎の病院とはいえ、国内に数台しかない最新鋭の医療機器をいくつも保有するなど最先端の医療設備を誇る。


【キヨちゃん】
 「明日は手術だね。」
 「調子はどう ?」

 

【キヨちゃんの弟】
 「調子はいいよ。」

 

【キヨちゃんの弟】
 「それよりまた学校サボってるの ?」
 「とんだ不良ねえちゃんだね。」

 

【キヨちゃん】
 「病人が何偉そうなことを言ってるの。」

 

【キヨちゃん】
 「明日の件でドクターと話してくるから、ついでにジュース買ってきてあげる。」
 「ちょっとまってて。」

 

【キヨちゃんの弟】
 「ペプスがいい。」

 

【キヨちゃん】
 「それ、病人が飲むものじゃないでしょ。」
 「まぁいいわ。」
 「話はすぐに済むから、そこで大人しくしてなさい。」

 

廊下を出たキヨちゃんはドクターの部屋に向かったが、思わぬ人物がドクターの部屋に入るところを目撃し、とっさに柱の影に隠れた。

 

【キヨちゃん】
 アイツ、たしか統一朝鮮軍キム・ヨンギュン。
 何故ヤツがここに。

 

気になって廊下からドクターの部屋を伺うと、何か争うような物音が聞こえたため、キヨちゃんはとっさに中へ飛び込んだ。

 

【キヨちゃん】
 「何をしているっ!!」

 

気絶したドクターを肩に担いで窓から逃げようとしていたヨンギュンがいた。

 

【キヨちゃん】
 「貴様っ! ドクターを連れてどこへ行く気だっ!!」

 

キム・ヨンギュン】
 ちっ!!

 

キム・ヨンギュン】
 「お前は何者だ ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「その制服は帯締か・・・。」

 

【キヨちゃん】
 「そのドクターを放せっ!!」
 「ドクターは明日の弟の手術を担当するんだ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「それはできんな。」
 「このドクターにはオレも用がある。」

 

【キヨちゃん】
 「放さないなら実力で阻止するのみっ!!」

 

キム・ヨンギュン】
 「やってみろっ!!」
 「見つかった以上はお前を生かすわけにはいかん。」

 

ヨンギュンはドクターを下ろすと、腰のナイフを抜いて戦闘態勢に入った。

 

【キヨちゃん】
 ちっ、ナイフか・・・。
 遅来矢(ちくし)(※1)で相手するには威力が大きすぎてこの部屋が吹き飛ぶな・・・。
 素手でなんとかするしかないか・・・。

 

キム・ヨンギュン】
 「ほぅ。」
 「女が素手でこのオレに挑もうというのか。」
 「いい度胸だな。」

 

キム・ヨンギュン】
 「その肝に免じて素手で相手してやりたいところだが、あいにくオレはなんとしてもこのドクターを連れ帰らなければならないのでな。」
 「ここは武器を使わせてもらう。」

 

【キヨちゃん】
 「連れ帰る・・・だと ?」
 「貴様の国にか ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「お前に理由を語る必要などない。」

 

【キヨちゃん】
 「私はお前の理由など知りたくもない。」
 「そのドクターさえ置いていけば、この件に関しては目をつぶってやってもいいんだぞ。」


お互い対峙したまま、全神経を集中して相手の出方を伺う。

 

キム・ヨンギュン】【キヨちゃん】
 こいつ、強いぞ。 隙きがない。

 

キム・ヨンギュン】【キヨちゃん】
 しかし・・・この感覚は・・・どこかで。

 

キム・ヨンギュン】【キヨちゃん】
 思い出したっ!!
 コイツっあの時(大九野島)のエースだっ!!
 間違いないっ!!

 

キム・ヨンギュン】
 ただの女とおもっていたが・・・まさか、大九野島で戦った相手だったとはな。
 くそ、騒ぎを聞きつけた人が来ると面倒なことになるな・・・。

 廊下から部屋に駆け寄る複数の足音が聞こえてきた。

 

キム・ヨンギュン】
 ちっ。
 今回は諦めるか・・・。

 

ヨンギュンは身を翻して開けた窓から外へ飛び出した。

 

【キヨちゃん】
 「ぁ、逃げた!」


翌日の帯締学園


【キヨちゃん】
 「あら来てたの?」
 「前回と言い、今回と言い、撤退の決断が早いものだから、誘拐がバレちゃった以上はもう学園には来ないのかと思ったわ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「・・・。」

 

【キヨちゃん】
 「それとも、堂々と何食わぬ顔でやって来ると言うのは
  あなたの民族って相当に面の皮が厚いと言う事なのかしら。」

 

そしてキヨちゃんは小声てヨンギュンの耳元で囁いた。

 

【キヨちゃん】
 「でも、昨日はありがとね。」

 

キム・ヨンギュン】(-_-;)
 「なんの事だ。」

 

【キヨちゃん】
 「ボケるのヘタね。」
 「ドクターを置いてってくれた事よ。」
 「おかげで今朝から始まった弟の手術が無事に終わったわ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「・・・。」

 

【キヨちゃん】
 「心配しなくていいわよ。」
 「約束通り昨日のことは内緒にしてあげるわ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「ふん。」
 「信用できるか。」
 「そのうちお前を始末してやる。」

 

【キヨちゃん】(*´艸`*)
 「あらいいわよ。」
 「いつでもいらっしゃい。」

 

キム・ヨンギュン】(ノ`Д´)ノ
 「お前の教室は隣だろ。」
 「さっさと行け。」


軽く手を降って、キヨちゃんは自分の教室へ向かった。


【キム・チョンア】( ̄へ ̄井)
 「アイツ、貴方に何の用事があったの ?」

 

キム・ヨンギュン】
 「なんでもない。」

 

【キム・チョンア】( ̄へ ̄井)
 むむむむっ
 なんか怪しい。

 

【キム・チョンア】ヽ(#`Д´#)ノ
 「なによ。」
 「なんか文句でもあるの !!」

 

その様子を見ていたミヨンに平手打ちで八つ当たりをした。

 

【キム・ミヨン】
 「・・・。」

 

【キム・チョンア】ヽ(#`Д´#)ノ
 「目障りな子ね。」
 「あっちへ行きなさい。」

 

【キム・ミヨン】
 「・・・。」

 

しかし、立ち去ろうとしたミヨンが大事そうに荷物を抱えているのをチョンアが目ざとく見つけるとミヨンを止めた。

 

【キム・チョンア】(ーー゛)
 「アナタ、そのバッグに何を隠しているの ?」

 

【キム・ミヨン】
 「な、何も・・・。」

 

【キム・チョンア】
「ちょっと見せなさいっ!!」

 

チョンアはミヨンからバッグをひったくると、中を開けてまじかる機動天女の箱を取り出した。

 

【キム・ミヨン】
 「あ、だめっ!!」

 

【キム・チョンア】
 「アナタ、またこんなもの買ったの?」
 「呆れたわね。」
 「これがあると任務に支障が出るわ。」

 

腰に下げていたナイフを取り出すと、ミヨンの前で無残に切り刻まれてしまった。

 

【キム・ミヨン】
 「あ、あぁ・・・。」

 

ミヨンは涙を浮かべて床に投げ捨てられたフィギュアの残骸を集めると、教室を飛び出した。

 

【キム・チョンア】
 「ふん。」
 「馬鹿な子。」

 

キム・ヨンギュン】
 「ぉい。」

 

【キム・チョンア】
 「はい、ヨンギュンなんでしょう。」

 

キム・ヨンギュン】
 「やりすぎだ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「ヤツの工学知識は我々の中で突出しており、敵のAMP調査に必要な人材だ。」
 「ここで脱落者が出ると我々の任務に著しく支障がでる。」


【キム・チョンア】
 「何を言ってるの。」
 「ヨンギュンらしくもない。」
 「ミヨンはもっと厳しくしたほうがいいわよ。」

 

キム・ヨンギュン】
 「俺の言うことが聞けないのか ?」
 「確かにお前は戦闘力は高いが、お前はミヨンの代わりになれるのか?」

 

【キム・チョンア】
 「そ、それは・・・。」

 

キム・ヨンギュン】
 「ミヨンの好きにさせておけ。」
 「もし、やつに何かあれば、お前も連帯責任だからな。」

 

【キム・チョンア】
 「はい、申し訳ありませんでした・・・。」

 

【キム・チョンア】
 この私がヨンギュンに叱責を受けるだと ?
 くそ、ミヨンのやつ・・・絶対に許さないっ!!

 

 

体育館の裏・・・この通称:屋内バトルフィールドと呼ばれる建屋の裏は、添下学園と持ち回りでアラート待機(※2)している戦闘鬼の発進口となっている。

アラート任務は建前では両学園の持ち回りとはなっているが、まず優秀な添下学園が一軍の先発で落ちこぼれの愚連隊で構成される帯締は二軍として添下の支援で出動する事のほうが多く、先発で出動するケースはそんなに多くない。

とはいえ、出動する可能性がある以上は絶えず整備しておく必要があり、戦闘鬼の発進口付近は、草も刈られてゴミもなくきれいにされている。

校舎全体の裏側に当たるとても静かな場所で、たまに授業をサボるターニャの目撃情報がよせられ、今日もターニャが阿と吽になにやらゴニョゴニョとしている様子。


【キム・ミヨン】
 「ぁ。」

 

【ターニャ】
  「誰 ?」

 

【キム・ミヨン】
 「ターニャ・・・ちゃん?」

 

【ターニャ】
 「・・・」

 

【ターニャ】
 「・・・泣いてる・・・の ?」

 

【キム・ミヨン】
 「ううん、なんでもない、大丈夫よ。」

 

【キム・ミヨン】
 「それは・・・虎 ?」

 

【ターニャ】
 「ぅん。」

 

【ターニャ】
 「この子たちは阿と吽。」

 

【キム・ミヨン】
 「ココでみんなに内緒で飼ってるの ?」

 

ターニャは首を横に振った。

 

【ターニャ】
 「家から付いてきた。」

 

【キム・ミヨン】
 「この子たちターニャちゃんのペットなの ?」

 

【ターニャ】
 「ぅん。」
 「お友達。」

 

【キム・ミヨン】
 「そうなんだ・・・。」
 「噛み付いたりしない ?」

 

【ターニャ】
 「大丈夫。」
 「安全装置は付けておいた。」

 

【キム・ミヨン】
 「安全装置 ?」

 

【ターニャ】
 「そう。 ひとに危害を加えないように調整してある。」

 

【キム・ミヨン】
 「そ、そう。 おりこうさんなのね。」

 

しかし気になったターニャが再びミヨンに問いただした。

 

【ターニャ】
 「でも、なんで泣いたの ?」

 

【キム・ミヨン】
 「ほんと・・・なんでもないから。」
 「私は大丈夫よ。」

 

ミヨンは抱えていたフィギュアを慌てて隠した。

 

【ターニャ】
 「それ見せて。」

 

【キム・ミヨン】
 「で、でも・・・。」

 

【ターニャ】
 「いいから。」

 

ミヨンは黙って頷くとターニャにフィギュアを差し出した。

 

【ターニャ】
 「・・・。」

 

ターニャはしばらく黙って見つめていたが、

【ターニャ】
 「直してあげる。」
 「時間が欲しい。」

 

【キム・ミヨン】
 「ぇ、治せるの?」

 

【ターニャ】
 「大丈夫治せる。」
 「任して。」

 

【キム・ミヨン】
 「うん、わかった。」
 「ありがとう。」

 

【キム・ミヨン】
 「ターニャちゃんはなんでも出来るのね。」

 

平常心を取り戻したミヨンはようやく周囲の様子を感じることが出来るようになった。

 

【ターニャ】
 「どうしたの?」

 

遠くの正門の方から戦争反対を叫ぶシュプレヒコールが聞こえる。

 

【キム・ミヨン】
 「あの抗議集会・・・毎日内容が違うね。」

 

【ターニャ】
 「うん、いろいろなチームが替わりべんたんにやってくる。」

 

【ターニャ】
 「近所迷惑もいいところ。」

 

【ターニャ】
 「今日は日本の反戦団体だけれど、いつもはほとんどが貴女の同胞の団体なの。」

 

【キム・ミヨン】
 「ぁ・・・、そう。 それはすいません・・・。」

 

 


添下学園、生徒会役員室

 

【大河内七美】
 「いよいよ、始まりますね。」

 

【生徒会 親衛隊 1】
 「今年もラクショーでしょ。」

 

【生徒会 親衛隊 2】
 「そらそうでしょう。」

 

【大河内七美】
 「今年の帯締学園は、あの変態教官が率いるのでしょうか ?」

 

【生徒会 親衛隊 1】
 「あの教官に関しては良い噂はサッパリ聞きませんから。」
 「それだと助かりますね。」

 

【大河内七美】
 「しかし艦隊シミュレーター戦は如何いたします ?」
 「前回の模擬戦ではあの変態教官に不覚をとりました。」

 

【山下奉雪】
 「あれはたまたま帯締の運が良かっただけだ。」
 「素人の変態教官が指揮したから、ビギナーズラックでたまたま勝利しただけの事で、あんな無茶苦茶なふざけた作戦が我が学園に何度も通じるとは思わないことだ。」
 「今度はコテンパに叩きのめしてやる。」

 

【大河内七美】
 「そうですね。」

 

【大河内七美】
 「そういえば教官はともかくとして、今回は個々の生徒では、警戒すべき戦闘力をもつ悪魔が何名かいるとか?」

 

【山下奉雪】
 「ああ、生徒会長と副会長か?」
 「確かに警戒すべき戦闘力を持っている。」

 

【山下奉雪】
 「それ以外の生徒に関しては特に特筆すべき情報は上がってきていないな。」

 

【大河内七美】
 「申し訳ございませんデータが足りておりません。」
 「なにしろ昨年の対抗戦でも決勝に上がってきた生徒はいませんでしたから。」

 

【大河内七美】
 「と、言うことは、やはり警戒すべきは生徒会長と副会長の両名のみですか・・・。」

 

【山下奉雪】
 「だが生徒会長と副会長がずば抜けて優れた戦闘力を持っていたとしても、あのハヤブサの能力では我々ルシファー級悪魔に対抗しようにも無理がある。」

 

【嶋田繁太】
 「その上、我が学園は決勝戦においては、お披露目を兼ねて最新鋭戦闘鬼も投入するのでさらに戦闘力の格差は拡大する。」

 

【大河内七美】
 「しかし、その決勝に帯締が上がってこれればの話ですよね。」

 

【山下奉雪】
 「・・・それもそうだな。」

 

【大河内七美】
 「予選では2年連続優勝機の雷電を今年も帯締にぶつけます。」
 「過去の戦績では、雷電の機動力、パワーは、帯締のハヤブサを凌駕していました。」
 「あの性能差を考えると、ハヤブサに多少のチューニングを施したところで雷電には及ばないでしょう。」

 

【嶋田繁太】
 「あとは経験値ですかね ?」
 「年間アラート出動回数はセカンド待機組の帯締よりもダントツで上回っており、実戦に近い経験値であれば我が学園の方が遥かに多いです。」

 

【山下奉雪】
 「ああ、そうだ、忘れるところだった」

【嶋田繁太】
 「何をです ?」

 

【山下奉雪】
 「今年は先日帯締へ留学してきたシナと統一朝鮮も戦闘鬼の試合に特別に参加してくるそうだ。」

 

【嶋田繁太】【大河内七美】
 「へぇー」

 

【山下奉雪】
 「そのために、あちらさんはどうやらブーメランを持ち込んでいるらしい。」

 

【嶋田繁太】
 「ほー、オーストラリアが主体となって開発した水陸両用型ってヤツですね。」
 「こりゃあ、ハヤブサよりも強敵ですね。」
 「ある意味、帯締よりも対戦が楽しみですね。」

 

【大河内七美】
 「でも、その情報はどこから?」

 

【山下奉雪】
 「学園長がスポンサーの実行委員会から聞いたそうだ。」
 「それによるとシナと統一朝鮮は、帯締とは別枠の親善試合が設けられて我々添下と対戦するカードが組まれたらしい。」

 

【嶋田繁太】
 「我が方の戦闘鬼の戦闘力を知るための情報収集ってわけですか?」

 

【山下奉雪】
 「そうだろうな。」
 「そして実行委員会を仕切るスポンサーの企業さまも、オーストラリアとシナや統一朝鮮などが独自に開発している戦闘鬼がどのていどの完成度なのかを知りたいところなんだろう。」
 「親善試合の相手は雷電で十分だろう。」

 

【大河内七美】
 「ブーメランが相手でしたら、同じ水陸両用の強風をぶつけたいところですが、残念ながら太平洋でテストの日程が組まれていますからね。」

 

【嶋田繁太】
 「それは残念だなー。」
 「運営に働きかけて水中戦のプログラムを組んでもらおうと思ったのにな。」


【山下奉雪】
 「いいか、ヤツらとの対戦については親善試合形式となるのでスコアには影響しないとはいえ敗北は許されない。」

 

【大河内七美】
 「という訳で、総合力では我が学園の勝利は不動だが、気を抜くことは無いように。」
 「シナ統一朝鮮は帯締共々、徹底的に叩きのめして我が学園の優秀さをスポンサーと艦隊に見せつけてやりましょう。」

 

【生徒会 親衛隊 1】【生徒会 親衛隊 2】【生徒会 親衛隊 3】【生徒会 親衛隊 4】【生徒会 親衛隊 5】
 「はいっ!」

 

 


月面アトランティス帝国自治区のとあるホテル

 

シー・ブルドッグのスコットはバーのカウンターに腰掛ける女性を見つけると
背後から近づき小さく声をかけた。


【スコット】
 「お隣、よろしいですか ?」

 

【グレート】
 「ええ。」

 

【スコット】
 「私は、スコット・イースト。」
 「よろしく。」

 

【グレート】
 「話は聞いていますわ。」
 「アメリ環境保護局出身のシー・ブルドッグ幹部で・・・たしかエンジニアさん。」

 

【スコット】
 「ええ、その通りで、よくご存知ですね。」

 

【グレート】
 「貴方、有名人ですから。」
 「ポール・ワトキンソンが資金調達リーダーで貴方が実行部隊のリーダーでしょ。」

 

【グレート】
 「私は、グレート・トンベリーよ。」
 「よろしくね。」
 「貴方とは、いちどお目にかかりたいと思っていましたの。」

 

【スコット】
 「私のほうも、貴女の目的は聞いております。」
 「サンシャイン計画(※3)の妨害だとか。」

 

【スコット】
 「それにしても腑に落ちないのは、そもそもあの計画は、地球温暖化を防止して現在の地球平均気温を100年前の水準にまで下げる技術。」
 「それは貴女の環境活動方針にも合致する筈なのにどうして妨害されるのですか ?」

 

【グレート】
 「地球温暖化はCO2の排出が原因として、それを削減するという賛同を得て、巨大マーケットを形成したわ。」
 「なのに日本はCO2は地球温暖化とは無関係であるとして、サンシャイン計画を立案した。」

 

【スコット】
 「なるほどねぇ。」
 「達成が困難な、CO2の排出削減を目標に地球上のあるゆる産業が動き出せば莫大な金が動く。」
 「達成目標が困難であればあるほど巨額なマネーが動きやすくなり、関連企業に天文学的な利益が入ってくる。」
 「環境団体もそれらの企業から後ろ盾を得られればスポンサー料が得られる。」
 「しかし日本がその構図をぶっ飛ばしてくれた・・・。」

 

【グレート】
 「大きな声ださないで」

 

【スコット】 

 「ぉ、とスマン。」

 

【スコット】
 「しかし、サンシャイン計画で使用する原子炉はアトランティス軍のドッグで建造している筈。」
 「どうするつもりだったんだ?」

 

【グレート】
 「アトランティスが電力不足を補うために建造している新しい原子炉は熱転換冷却型。」
 「サンシャイン計画で使用する原子炉も熱転換冷却型で、ほぼ同じタイプ。」
 「コストを下げるために、同じ輸送船で運ばれて、炉心の大部分を同じドッグ内で同時に組み立てられる。」
 「貴方はエンジニアだから、入館パスが発行されているわよね。」

 

【スコット】
 「ああ、そうだが。」
 「君はパスがないのか?」

 

【グレート】
 「ええそうよ。」
 「でも心配いらないわ。」

 

【グレート】
 「サンシャイン炉は稼働する前に軌道へ運ぶ必要があり、どのみちドッグから出ていくわ。」

 

【スコット】
 「ドッグを出たところを襲うのか ?」

 

【グレート】
 「ええ。」
 「こう見えてもヨットクラスの小型宇宙艇の操縦くらいはできますのよ。」
 「無免許だけれど。」

 

【グレート】
 「でも、さすがに宇宙艇の手配については、私達の組織ではどうにもならなくて、そこで、エンジニアの貴方に協力頂いて、作業で使用する宇宙艇を手配してほしいワケ。」

 

【グレート】
 「ね?」

 

【スコット】
 「マジかよ。」
 「簡単に言ってくれるな。」

 

【スコット】
 「使用申請を出して許可をもらうだけでも一苦労なのに、怪しまれないように使用して、無傷で返却をしなきゃならんのだぞ。」
 「そもそも借りれたとしても君はどこで宇宙艇に乗り込むつもりだ?」

 

【グレート】
 「資金はありますから、それで手配さえして頂ければ、あとはどうにでもなりますわ。」
 「段取りは考えてありますの。」

 

【スコット】
 「そ、そうなのか ?」

 

【グレート】
 「まずは、ミッションの成功を祈って私の部屋で飲み直しましょ。」

 

【スコット】
 「いいのか ?」

 

【グレート】
 「ええ、もちろんですとも。」
 「これから活動を共にする同志なのですから、二人の親睦を深めるのはとても大事なコトよ。」

 

【スコット】
 「そ、そうだな。」

 

 

帯締学園を出て、寮に戻る東郷を尾行する者がいた。
しかし東郷は校門をでる前から不審な影が隠れていることはチェックしていた。

 

【東郷】
 スーツの隙間から見えるベルトからして拳銃のホルスターか・・・。

 

【東郷】
 膨らみ具合からして、2.5インチリヴォルヴァーってところか・・・。

 相手の動きを探るようにわざと角を多く曲がる。

 

【東郷】
 思っていたより接触してくるのが早かったな。


東郷を見失うまいと、角を曲がると走って東郷を追った。

しかし、曲がったところで東郷が待ち構えており、
尾行者が「ぁ」と言う間もなく、腕を掴まれて投げ飛ばされてしまった。

 

【尾行者】
 「歩行者を突然投げ飛ばすとは帯締も野蛮な教官を雇ったものだな。」

 

と、ホルスターの拳銃を引き抜こうとした。

 

【尾行者】
 「あ、あれ、無いっ!!」

 

【東郷】
 「探しているのはコレかな?」

 

【東郷】
 「こんな物騒なモノを隠し持ってて野蛮なのはどっちのほうだ。」
 「しかも、わざわざ2.5インチを携行しているという事はどこぞの組織に属している事になるな。」

 「誰の命令で俺を尾行していたんだ ?」
 「聞かせてもらおうか ?」

 

と、銃口を尾行者へと向けた。

 

【尾行者】
 「素人が!」
 「住宅地でぶっ放せば住民が出てくるぞ。」

 

【東郷】
 「おお、それもそうだな。」

 

【東郷】
 「この2.5インチは特殊任務用にスーツに隠れるようバレルのサイズを切り詰めたタイプ。」
 「命中精度が下がる分を至近距離でカバーしているが、通常炸薬ではマズルジャンプをコントロールするのが難しい。」

 

【東郷】
 「そこで近距離でも殺傷力が維持できるよう、おおかた弱装弾でも装填しているのだろ ?」
 「しかし弱装弾でもそこそこ音は出る。」

 

【東郷】
 「では、こうすればどうだ?」

 

東郷は着ていたジャージの上着を脱ぐと、拳銃ごと手をぐるぐる巻きにした。

 

【東郷】
 「こうすれば、音はほとんど聞こえないだろ ?」

 

【尾行者】
 「こ、こいつ・・・。」

 

【東郷】
 「さぁ、誰の命令だ ?」

 

【尾行者】
 「お前が知る必要はない。」

 

【東郷】
 「そうか。」

 

東郷は間髪入れずにトリガーを引いた。
バスンっと小さく低い音がして、男の太ももから血が滲み出してきた。

 

【尾行者】
 「正気かっ!!」
 「こいつ躊躇なくマジで撃ちやがったっ!!」

 

【東郷】
 「馬鹿か ?」
 「お前は、これを飾りで持ち歩いていたのか ?」
 「使う気でぶら下げていたんだろ ?」

 

【東郷】
 「だったら、1発食らった程度でギャーギャー喚くな。」

 

【東郷】
 「もう一度聞くぞ。」
 「誰の命令だ ?」

 

【尾行者】
 「くっ・・・。」

 

東郷は再びトリガーを引いた。
男のもう一本の太ももからも血が噴き出した。

 

【東郷】
 「あらら、間違って血管を抜いてしまったか・・・。」
 「こりゃ悪いな。両足ヤられたとなりゃ、逃げられないな。」

 

【東郷】
 「さて、今度はどこを狙おうか ?」

 

【尾行者】
 こ、こいつマジでヤバイやつだ・・・。
 上の連中、こんなヤバイイカれたやつが帯締の教官だなんて一言も言ってなかったぞ。

 

【尾行者】
 「わ、わかった言う、言うから、その銃を下ろせ。」

 

【東郷】
 「下ろせ・・・だと?」
 「自分が今置かれている状況を理解しているのか ?」
 「お前は俺に命令できる立場ではなかろう。」

 

【尾行者】
 「くそ・・・」

 

【尾行者】
 「実行委員会だ。」

 

【尾行者】
 「正確には実行委員会のバックについているスポンサー企業のお偉い方たちだ。」
 「それ以上は言えない。 オレだって命は惜しい。」

 

【尾行者】
 「ヤツらは、イカレているアンタよりもさらにイカれた連中だ。」

 

【尾行者】
 「悪いことは言わん。」
 「今年の対抗戦もあまり張り切りすぎないようにしてくれれば、なにもかも丸く収まる。」
 「もちろん相応の謝礼は支払われる。」

 

【東郷】
 「なるほどな。」
 「去年もそうやって教官を買収して帯締を早期に敗退させ、添下のスポンサー企業が開発した戦闘鬼をうまくPRして、艦隊への売り込みを優位に進めたって事か。」

 

【尾行者】
 「そ、そこまではオレには解らない・・・。」

 

【東郷】
 「聞いたとおりだ。」

 

【風紀員 委員長】
 「よく分かりました。」
 「今までの帯締が意図的に敗北されていたワケですね。」

 

ナノリンクですべてのやりとりを聞いていた風紀員がどこからともなく姿を現した。

 

【風紀員 委員長】
 「まずこちらで背後関係と過去の分まですべて吐かせた上で、アトランティス司法警察へ引き渡します。」

 

【東郷】
 「頼めるか ?」

 

【風紀員 委員長】
 「ええ、その為の風紀員ですから。」

 

【風紀員 委員長】
 「連れて行け。」

 

【風紀員A】【風紀員B】
 「了解っ!!」

 

 


寮に戻った東郷は、自室でくつろいでいた生徒会役員とクラス委員をリビングに招集して事情の説明を行った。

 

【ナナ】
 「しかし、実行委員会が八百長を仕込んでいたとはね。」

 

【サッチ】
 「以前に1組を率いた教官も買収されていたって事はウスウス感じてはいたけれど、確証がなかったので問題は放置されていたのよ。」

 

【サダッチ】
 「教官は、その買収案を飲まれるのですか ?」

 

【東郷】
 「ああ、そうだな。」
 「飲んでみようと思う。」

 

【ナナ】
 「ぇっ!?」

 

【サッチ】
 「教官っ!!」
 「教官まで私達を裏切る気ですかっ!!」

 

【ナナ】
 「それは、どういうことですか ?」


【東郷】
 「ちょっと待っくれ!!」
 「あくまでフリだよ、フリ。」

 

【サダッチ】
 「理由を聞かせてもらえるのでしょうね ?」

 

【東郷】
 「こちらが買収されたと思って油断させておいて、こちらが勝利すれば相手が受ける信用的ダメージも大きいだろうからな。」
 「もちろん実行委員会も仕返ししてくるだろうからコテンパに叩きのめす。」

 

【東郷】
 「これはきっと大きな利権が絡んだ汚職事件に発展する可能性もある。」
 「なので放置はできない。」

 

【東郷】
 「戦闘鬼の開発にはいくら掛かる生徒会なら分かるな ?」

 

【サッチ】
 「ええ、1鬼種あたり、日本円でざっと500億くらい・・・。」
 「量産すると1鬼あたりの製造コストはだいたい20億くらいになるわね。」
 「量産効果によるコストダウンは考慮しないとして前提でね。」

 

【ナナ】
 「そんな掛かってるの ?」

 

【サッチ】
 「そうよ。」
 「でもそれは帯締の話で、資金が潤沢にある添下はもっとお金を掛けているでしょうね。」

 

【ナナ】
 「どうりで、普段から金欠なワケだと思った。」

 

【東郷】
 「そうだな。」
 「たとえば、100人分の戦闘鬼を用意するとしたら、2000億となる。」
 「量産効果でかなり安くはなるだろうけどね。」

 

【ナナ】
 「に、2000おく !!!」

 

【東郷】
 「当然、100人ユニットぽっちという訳にはいかないから、数千、数万単位の戦闘鬼を建造しなきゃならないので、ものすごい金額になる。」

 

【サダッチ】
 「確かに企業としても必死になりますね。」

 

【ナナ】
 「この交流戦は各校が保有する戦闘鬼の戦いとも言えるので勝利すれば格好の PR になるわけですね。」

 

【ナナ】
 「だから八百長が蔓延るのですか・・・。」

 

【東郷】
 「まぁね。」

 

【ナナ】
 「そう言うことなら、私も協力します。」
 「ね、委員長もそう思うでしょう。」

 

【サッチ】
 「そうね。」
 「アナタはどう ?」

 

【サダッチ】
 「分かりました。」
 「いいでしょう。」

 

【サダッチ】
 「ただし、生徒たちに危害が及ばないことに十分に配慮する必要があります。」

 

【サッチ】
 「もちろんよ。」

 

【サッチ】
 「でわ、明日、早速これを生徒会から学園各組織委員にも共有してもらえる ?」

 

【サダッチ】
 「分かりました。」

 

【東郷】
 「話を付け加えるとしたら情報漏えいを防ぐために、アクセス権限がAのみに限定してくれ。」
 「訓練生を疑いたくは無いが、万一情報が漏洩すればパーになるからな。」

 

【サッチ】【サダッチ】【セッちゃん】
 「了解しました。」

 

話がおわったちょうどいいタイミングで、転校生たちがリビングに入ってきた。

 

【ニーナ】
 「あらお邪魔だったかしら ?」

 

【東郷】
 「もう終わったところだ。」

 

【ニーナ】
 「そう ?」

 

【セッちゃん】
 「ナナ、そろそろ準備しましょうか。」

 

【ナナ】
 「そうですね。」

 

【ナナ】
 「お食事の準備をしますので、それまで三人方はお先にお風呂に入ってもらえるかしら?」

 

【ニーナ】
 「お風呂 ? いいですわね。」

 

【ネーナ】
 「そうですね。 お姉さま先に如何ですか ?」
 「久しぶりに水いらずって事で ?」

 

【ニーナ】
 「そうね。 じゃ、そうさせていただくわ。」

 

【ニーナ】
 「ターニャちゃん、ミーシャちゃん、ナターシャちゃん、あなた達も来るわよね ?」

 

【ターニャ】【ミーシャ】【ナターシャ】
 「い、ぃぇ、私は・・・」

 

【ニーナ】
 「ねぇ!!! 来るでしょ?」

 

【ミーシャ】【ナターシャ】
 「は、はい、行きます・・・。」

 

【ナナ】
 「どうかしたの ?」

 

【ミーシャ】【ナターシャ】
 「ぃ、ぃえ、なんでもありません・・・。」

 

5分後、ナナが異変に気づいた。

 

【ナナ】
 「あれ ?」

 

【東郷】
 「どうかしたのかい ?」

 

【ナナ】
 「おかしいな・・・。」

 

【サッチ】
 「何が ?」

 

【ナナ】
 「ぃえ、あの姉妹と一緒にお風呂に入ったヒトたちはたいていは今頃真っ裸で飛び出してくる頃なんですが・・・。」

 

【東郷】
 「ん? 何の話だい ?」

 

【サダッチ】
 「例の放尿事案ですか ?」

 

【ナナ】
 「そう、それ。」

 

【東郷】【サッチ】
 「そういえば・・・。」

 

【ナナ】【東郷】【サッチ】【サダッチ】
 ・・・・・・。

 

【ナナ】
 「何も起きないわね・・・。」

 

【東郷】
 「ま、まぁ何も騒ぎにならないのはいい事じゃない。」

 

【ナナ】
 「そうなんだけど・・・。 なんだか・・・、うーーーん、何かが変・・・」

 

何か釈然としないままキッチンへ向かうナナだった。

 

30分後

 

【ニーナ】
 「お先にいただきました。」

 

【サダッチ】
 「お湯加減、どうでした。」

 

【ニーナ】
 「いいですね♪」

 

【ニーナ】
 「それに、この浴衣って言うのかしら ?」
 「初めて着たけれど、可愛いじゃないの♪ 気に入ったわ。」

 

【サダッチ】
 「それは良かったですね。」

 

【サッチ】
 「どうしたのあなた達・・・さっきからおとなしくなっちゃって。」

 

【ミーシャ】【ナターシャ】
 「なんでもありません・・・。」


【ネーナ】
 「さてと、私はリヒターナさんと入るとしましょうか。」

 

【リヒターナ】
 「い、ぃえ私は・・・。」

 

【ネーナ】
 「何 ? もしかして、お風呂が怖い ?」

 

【リヒターナ】
 「そんな事はないっ!!」

 

【ネーナ】
 「じゃ、問題ないでしょう。」
 「それとも私と一緒がイヤなのかしら ?」

 

【リヒターナ】
 「そういうワケでは・・・。」

 

【ネーナ】
 「じゃ、行くわよっ!!」

 

【リヒターナ】
 「ぇ、え、ぇーーーーっ!!!」

 

無理やり腕を捕まれ連れて行かれたリヒターナでした。

しばらくすると激しく抵抗する声が寮中に響いた。

 

【リヒターナ】
 「んぎゃーーーーーーっ!!!」

 

【ネーナ】
 「こらっ! 暴れるなっ!!」

 

【リヒターナ】
 「ん、わぉーーーーー」
 「ん、わぉーーーーー」
 「ん、わぉーーーーー」

ガリガリガリ

浴室のドアを引っ掻く音も響く。

 

【ニーナ】
 「あの娘、野良ね。」

 

【サッチ】
 「お風呂が相当怖いのね。」
 「無理はないか・・・ネコは水が嫌いですからね。」

 

【サダッチ】
 「どういう身分の方なのでしょう・・・。」

 

【東郷】
 「君たちはお風呂を苦手としていないよね ?」

 

【サッチ】
 「まぁ、小さい頃から入ってて慣れているからね。」
 「でも、私達も小さい頃はお風呂は超苦手だったよ。」


【リヒターナ】
ガリガリガリ・・・
 「ん、わぉーーーーー」
 「ん、わぉーー・・・」
 「ん、わ・・・」

 

リヒターナが粗相するのを見てネーナが耳元で囁いた。

【ネーナ】
 「気持ちよくなったのね」

【リヒターナ】(*´Д`)
 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

【サッチ】
 「目標、沈黙しました。」

 

【東郷】
 「静かになったね。」

 

【サダッチ】
 「観念したようですね。」


そこへ、コハルたちが戻ってきた。

 

【コハル】【コユキ
 「ただいまぁ」

 

【東郷】
 「おお、今帰ったか。」
 「遅くまでおつかれさん。」

 

【東郷】
 「で、どうだった ?」

 

【コハル】
 「結構手を焼いてますわ。」

 

コユキ
 「あのヒトたち、まったく集中力が続かない・・・。」

 

【東郷】
 「そうかそうか、まぁ気長に指導してやってくれ。」

 

【サッチ】
 「すいません。」
 「お客さんの扱いなのにウチの生徒をしごいていただいて。」

 

【コハル】
 「いいのよ、東郷さまのお願いですから。」


【ナナ】
 「夕食が出来上がるから、テーブルの上を片付けてーーー!」

 

【コハル】
 「はーーい♪」

 

【ナナ】
 「あら、帰ってきてたのね。」
 「おかえり。」

 

エプロンで手を拭きながらキッチンから出てきたナナは、すっかり料理に慣れた事がその仕草からわかるようになった。

 

【コハル】【コユキ
 「ただいまでした。」

 

【コハル】
 「夕食並べるの手伝うよ。」

 

【ナナ】
 「コハルは今帰ったのだから、手伝わなくていいのよ。」
 「教官はさっきからそこで喋ってただけだから教官はさっさと手伝うのよ。」

 

【東郷】
 「えーーー・・・」

 

【ナナ】
 「抜くわよ。」

 

【東郷】
 「手伝わせていただきますっ!!!」

 

 

 

大阪アメリカ大使館(※4)執務室

 

【在日アメリカ大使】
 「マーチン、着いたそうそう申し訳ないが、大統領閣下から君宛に指令が届いている。」
 「読んでみたまえ。」

 

大使公邸の執務机の引き出しから封書を取り出すとCIA極東支部:マーチン・レパード部長に手渡した。

 

【CIA極東支部長】
 「・・・。」

 

内容をチェックするレパード部長に話しかけた。

 

【在日アメリカ大使】
 「そのプランは君が立案したのだろ ?」

 

【CIA極東支部長】
 「キンゼイ、必要なモノは用意されているのか ?」

 

【在日アメリカ大使】
 「ああ、すでに整えてはある。」

 

【在日アメリカ大使】
 「現在の政権はアトランティスに傾倒しずぎた。」
 「大統領閣下はそれを危惧しており、マーチン、君に日本の行くべき道を軌道修正してもらいたいのだよ。」

 

【在日アメリカ大使】
 「だが、今回の相手は手強いぞ。」
 「君がプランに示したとおり、この国は、仕組み上、簡単には政府関係者に対して暗殺ができない。」
 「それが大きなネックだ。」

 

【CIA極東支部長】
 「治安が良すぎるのも困りますね。」

 

【在日アメリカ大使】
 「そこで・・・だ。」

 

【在日アメリカ大使】
 「君が提案したレポートの通りに複数のダミー企業と現金を用意しておいた。」
 「ニッポンの政治家は金には弱い。」
 「だが、ソウリと防衛大臣については別だ。 彼らには付け入る隙きがまったくなかった。」

 

【在日アメリカ大使】
 「そこで君たちの上層部がリストを作成したので、その議員にアプローチするといい。」
 「私のほうは、その案が失敗したときに備えてプランBの準備も手配しておく。」

 

【CIA極東支部長】
 「わかった。」
 「さっそくリストにある議員たちには私の部下を送って面会をするとしよう。」

 

【在日アメリカ大使】
 「メディアへのリークは大統領閣下が決断する。」

 

 

 

 

※1.遅来矢(ちくし)
 キヨちゃんが保有する固有武装の妖刀で、見かけによらず非常に重量があり、戦車装甲並みの強度を誇るオロチのウロコに有効とされる。
 切るというより衝撃で破壊する使い方をする。


※2.両学園それぞれに、生徒会直轄の自警団が編成されており、大和盆地防衛の警備を行っている。
 本来は日本軍、警察、各市町村の自警団が日本や自治体の治安を守っているが、シナの進出により日本本土ギリギリまで国境線が後退してからは、国籍不明の飛行物体や戦闘鬼が日本各地に頻繁に出没するようになり、ここ大和盆地も例外ではなかった。


 添下学園には世界各国から優秀な人材が集められ、さらにスポンサーとなる大企業の莫大な資金によって最先端の戦闘鬼の研究開発が行われている。

 そして、ここ帯締はアトランティス帝国の地球で唯一の大使館が置かれ、その大使館敷地内に王立帯締学園が置かれ、将来のアトランティス艦隊を担う幹部候補を育成する・・・という事にはなってはいるが、個々の能力は非常に高いが、実際ににはいろいろと問題があるため、優秀なエリートが集められて企業の支援によって潤沢な資金のある添下学園では受け入れてもらえずに受け皿的な位置関係となっているのが帯締である。

 
※3.サンシャイン計画
 太陽系の公転軌道がダイダロス(天の川)銀河を構成するアームの外へ抜けつつあり地球大気中の水蒸気を反応させて雲を形成するに必要な宇宙放射線が減少し、地球温度の平均気温が上昇する原因となっている。

 Co2の削減が温暖化防止につながるという偽情報が大々的に流布された為に、適切な温暖化対策が施されないまま熱帯期に突入しつつあったが挽回する計画としてサンシャイン計画が策定された。

 計画の要はサンシャイン炉と呼ぶ原子炉を太平洋と大西洋、そしてインド洋上空の3箇所の静止軌道上に配置し、減少した宇宙放射線の代替として核分裂反応で生じた放射線を地球に降らせて人工的に雲を形成すると言う計画。

 降り注ぐ放射線は宇宙放射線同様にほとんどが大気で吸収されるため地球上の生物には影響を及ぼさないが、それでも放射能が降り注ぐことで人類が死滅すると主張する反原発団体や環境団体、事故で原子炉が落下して被害が生じる事を危惧する市民団体の反対運動が根強い。
 とりわけ、CO2が温暖化の原因であると主張して、莫大な利益を上げていた投資家や企業からは利権を奪われたことへの恨みが強く、度々サンシャイン計画関連施設への破壊行為を繰り返している。

 サンシャイン炉は放射線防御壁を持たないため、一度トラブルが発生すると容易に接近できない。
 ただ、強力な放射線を放出するとは言っても、炉心から離れると宇宙放射線と比較して弱くなるため、付近を周回するドローン(地球で言う人工衛星)には影響を及ぼさない。

 この計画により、世界各地の年間平均気温は、-15度押し下げる効果が得られると見積もられている。

 

※4.大阪アメリカ大使館
 対馬戦争で首都機能のある関東がミサイルによる集中攻撃を受けて甚大な被害を受けたため、首都機能を関西へ遷都する事になり、アメリカ大使館もそれにともない関西へと移転している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RSS Feed Widget