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アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-5-3】なのましんは錬金術ぢゃない!!

なのましんは錬金術ぢゃない!!

【1-5-3】


    動かなくなった2頭の虎にターニャが寄り添うと、手をかざして何やらスキャンを始めた。
    放出したナノマシンが発光し青白くスキャン箇所が青白く照らしだされる。

    【ナナ】
        「私もそれとなくスキャンかけたけれど、メカがよく判らなくて内部構造がさっぱり理解できないのよ。」
        「しかも中は透視できてもその中への進入路が見つからなくて・・・。」
        「どこかに、扉を開くレバーのようなものがあれば、すぐに判るのですけれど・・・。」

    しかしターニャはナナですら見つけられなかった、サービスハッチを発見した。
    【ターニャ】
        「見つけた。」


    【サッチ】
        「ぇっ!? まさか ?」
    驚いて目をパチクリさせた。

    【ターニャ】
        「この子のサービスハッチは、内側からロックされてて外からは単なる繋ぎ目にしか見えない。」
        「中は原始的なバネ仕掛けで内側へ開くようになっている。」
        「バネの構造を知らなければそこにハッチがあるとは気が付かない。」

    【サダッチ】
        「でも、どうやってそれをこじ開けるのよ。」

    【ターニャ】
        「外部からのナノリンク通信でアクセスができる。」
        「電子レンジとガムテープ貸して欲しい。」

    【ナナ】
        「レンジで何をするの ?」

    【ターニャ】
        「見れば判る。」

    【セッちゃん】
        「レンジをもってくればいいのね ?」
        「ちょっと待っててね」

    しばらくして
    重そうにコードをひきづりながらレンジを玄関まで運んできた。
    【セッちゃん】
        「んこらしょっと」
        「思っていたより重かったわ・・・。」
        「そこの壁に掃除機用のコンセントがあるからプラグ挿して。」

    ナナがセッちゃんからコードを受け取るとプラグをコンセントに差し込んだ。
    【ナナ】
        「コンセントの準備が出来たわ。」(正確にはコンセントの準備とは言わない)
        「で、どうするの ?」

    ターニャは、ガムテープで電子レンジのフタの内側に安全のために付けてある扉のセンサーにガムテープをして、レンジの扉が閉まっているようセンサーを誤魔化す細工をした。
    そして、おもむろにレンジの開口部を虎に向け、タイマーを10秒にセットした。

    【ターニャ】
        「危ないから遠くへ離れて、(各自の)ナノリンクのセキュリティレベルをハイにして。」

    みんなが遠くに離れた事を確認すると、ターニャはおもむろにレンヂにスタートボタンを押した。

    レンジから発せられる Ghz帯の高周波が 2頭の虎の金属ボディーに反応し、火花を散らす。
    電子レンヂの中でアルミをチンした時と同じだ。
    電気がショートしたような焦げ臭いニオイが漂う。

    【セッちゃん】
        「だ・・・大丈夫なのかしら。」

    しかしターニャは動じない。

    【ターニャ】
        「反応あった!」

    ターニャはレンジの高周波で反応した虎のナノリンクからアクセス可能なポートを探り出し、ネットワークへの入り口を見つけ出した。

    【サダッチ】
        「どんな仕掛けなの ?」

    解析に忙しいターニャに代わってミーシャが答えた。
    そこは姉妹、ターニャのやっている意味をよく理解していた。
    【ミーシャ】
        「基本的に、この子(虎)は特定の周波数でしか反応しないようになっているのだけれど、それがどの周波数を使用しているかは外からではまったく判らないのよ。」
        「その周波数が判ればいいのだけれど、わからないから、電子レンジを使用して、広範囲に電波をばら撒いたわけよ。」

    【ミーシャ】
        「もし、その広範囲の周波数の中にこの子達が使用する周波数が見つかった場合、この子達が何かしらの反応を示せばビンゴよ。」

    【ミーシャ】
        「ナノリンクの仕様は、特定の周波数に特定のIDを付けて送信する事で、私は誰誰だけど、あなたと通信できないかしら ?と接続の許可を求めるの。」

    【ミーシャ】
        「相手はそのIDが自分のライブラリと照合して安全なら接続を許可してナノリンクが確立されるのだけど、もしそのIDがない正体不明の信号だった場合、」
        「データ欠損等の理由か何かで正しいフォーマットではないけれど、自分が使用している周波数とポートだし、もしかしたら接続を求めている可能性もあるので、とりあえず相手が誰なのか確認してみよう・・・と応答を返すのよ。」
        「その時は、逆に自分が接続してきた相手に対して、自分のIDを通知する訳。」

    【ミーシャ】
        「ターニャはその仕組を利用して、電子レンジで電波を飛ばして、虎のナノリンクが、正体不明の電波を受信して、誰だお前は ? 私は誰誰だ、お前は何者か答えろっ・・・って反応を示している信号を探っているの。」

    【サッチ】
        「それって膨大な量の情報を処理する事にならない ?」

    【ミーシャ】
        「そうよ。だから送信は電子レンジにまかせて、ターニャは解析だけに専念したのよ。」
        「でも、今のはあくまで使用している周波数とアクセスポートを特定出来ただけよ。」
        「そこからルート権限で侵入できなければ、制御を乗っ取れない。」
        「ここからが長いわ。」



    一同、固唾を呑んでターニャを見守った・・・。



    【ナナ】
        「遅いわね・・・。」
        「暗号解読みたいに、シュルシュルシュルって、上の桁から順番にヒットするとかできないの ?」

    きっとイメージとしては、解読器を相手の端末にフラットケーブルで接続して、解読器が暗号を1桁ずつ解読して、右端から合致した番号が並んでいく・・・。
    まぁそんなものを想像したのだろう。

    【ミーシャ】
        「はぁ !? 何言ってるのよ。」
        「それは映画やアニメの話。」
        「世の中、そんなアホなセキュリティなんかあるわけないじゃないの。」
        「だいたい、1桁ずつ暗号がヒットするような仕組みだなんて、順番に番号合わせるだけだから解読器なんていらないし。」

    やれやれと呆れ顔。


    【ナナ】
        「えっ!? 違うの ?」

    【ミーシャ】
        「当たり前よ、IDとパスコードをいくら高速で入力できたとしても、その入力内容が正しいかどうかチェックするのはあくまであっちのCPU側の話。」
        「その処理速度以上の解析速度が出るわけないじゃん。」

    【ミーシャ】
        「それに、そもそもの話として、そのIDが何桁あるかなんて判らないわよ。」
        「そして全桁同時にチェックされるので、IDが間違ってもどの桁が間違ったのかも判らない・・・。」

    【ミーシャ】
        「組み合わせは無限にあるうえ、しかも、たいていは3回ミスでロックされてしまう・・・。」
        「現実世界のセキュリティはSFの世界よりも堅固なのよ。」

    【サダッチ】
        「それでは、ターニャは今は何をやっているの ?」

    【ナターシャ】
        「相手がパスコードを聞いてくる前にこちらから大量のパケットを送信しているのよ。」
        「本来は通信を遮断したいけれど、ログイン処理はやらなければならないので通信は遮断できない。」
        「無駄な大量のパケットを送信する事で、相手は処理しきれなくなってメモリをオーバーフローさせるのよ。」
        「オーバーフローしたパケットの中にルート権限を乗っ取るスクリプトが仕込まれてて、MCのプログラムがオーバーロードした瞬間にそのスクリプトが実行されて、ルート権限を奪うと言うやりかたよ。」
        「まぁ昔のOSでよく使わていたルート権限の乗っとり方法とよくにたやり方ですけどね。」
        「このやり方は相手が質問をしてくる前にこちらから先制して大量にパケットを送りつけると言うまだ誰も発見していない方法なので、見つかれば、そのうち対策は立てられるでしょうね。」

    ミーシャとナターシャがひとしきり解説を終えたところで、ターニャの作業が完了したようだった。

    【ミーシャ】
        「どう? いけそうかしら ?」

    【ターニャ】
        「大丈夫、ルート奪った。」

    【ターニャ】
        「この子たち死んでいない、まだ再起動可能。」

    【ターニャ】
        「今、スリープモードに入っているだけ。」

    【サダッチ】
        「では、生き返るのね ?」

    【ミーシャ】
        「アンタ何聞いてたのよ、死んでないって言ってたでしょ。」
        「パワーが切れそうだから省電力モードになっただけよ。」

    【ターニャ】
        「サービスハッチを開くコマンドを探してる・・・。」
    プログラムコードを逆ビルド(※1)して機械語からC#へ復調し、その中から外部インターフェイスを制御するコマンドを探し始める。


    しばらくして、首の後ろに隠されていたサービスハッチがカチャンと言うバネ仕掛けの軽い音とともに内側に向かって開いた。

    【サッチ】
        「なんか思いっていたより構造が簡単ね。 ハッチはバネ仕掛けで開くとは・・・。」

    【サダッチ】
        「でも、その電磁式ロックを解除するのに手間がかかったのね・・・。」

    【サッチ】
        「充電用ポートは ?」

    【ターニャ】
        「ない。」
        「この子はもともと使い捨てられる運命だった」

    サダッチたちは落胆した。
    【サダッチ】
        「充電手段がなければ、もう終わりじゃない。」


    しかしターニャはサービスハッチに手をかざし、何やら再構築を始めた。
    さきほどのスキャンしたときとは別のナノマシンを放出し、ハッチ周辺が黄色に輝き始めた。
    その作業は造作もなくすぐに終わった。

    【ターニャ】
        「内部のバッテリー構造を再構築して、再充電できるようにした。」
        「ついでに急速充電用アダプターも作ったので、これでしばらく充電すればすぐに元気になる。」

    【サッチ】
        「スゴイっ!!」
        「でも、それなら、最初からこの子全体を再構築すれば良かったんじゃないの ?」

    【ターニャ】
        「それ、してしまえば、この子はこの子たちではなくなる・・・。」
        「それは新しい別のものを作るに等しい。」

    【サッチ】
        「そっか個性を残してくれたのね。」

    【サダッチ】
        「ターニャ、ありがとうっ!!」
    ハグしてくるサダッチにターニャは黙ってうなづくと、そのまま自分の部屋に戻っていった。

    【ナナ】
        「彼女、ほんとに表情出さないわね・・・。」

    【ミーシャ】
        「ターニャは、分析等の高速計算は強いけれど、その分、喜怒哀楽に必要な感情プロトコルは抑制されているのよ」

    【サダッチ】
        「ぇっ!?」
        「ターニャもロボットなの ???」

    【ナターシャ】
        「しっ失礼なヤツねっ!」
        「そんなワケないでしょっ!!」
        「ターニャの代わりにサダッチをぶってもいい ???」

    【サッチ】
        「一発だけならいいわ。」

    【ナナ】
        「そういえば、サダッチ、頬の傷はどうしたの ?」
    心配そうにサダッチの傷を、そっと指でなぞった。


    【サダッチ】
        「ぇっ!? この傷 ?」
        「この子たちに引っ掻くられだのよ。」
        「危うくクビが飛びそうになったけど・・・。」

    【ナナ】
        「そ・・・それは怖いわね。」
        「目撃したら夜はおトイレ行けなくなっちゃうかも・・・。」

    【サダッチ】
        「今、何を想像したのか、なんとなく理解できた・・・。」
        「首が空を舞うとかそう言う意味じゃないから・・・。」

    【サッチ】
        「帰りはこの子達の背中で戻ってきたから・・・。」
        「サダッチになついちゃったみたい。」

    【セッちゃん】
        「まだお食事の用意が出来ていないので、皆さん先にお風呂に入ってくださいね。」

    【サダッチ】
        「ちょっと傷にしみるかもしれないな・・・。」

    【セッちゃん】
        「私がコーティングしてあげるから、ちょっとまって。」

    エプロンのポケットから、呪符を取り出すと、軽く九字を切り眠っていた機能を起動させた。
    それをサダッチの傷口に絆創膏のように貼り付けた。

    【セッちゃん】
        「これで OK よ。」
        「あとはナノマシンが細胞を修復してくれるから明日の朝には傷は消えてると思うわ。」

    【サダッチ】
        「いつも済まないねぇ。」

    【セッちゃん】
        「これが私の得意分野だから、いいって事よ。気にしないで。」

    【ナナ】
        「そのワザ、東郷教官にも使えないの ?」

    【セッちゃん】
        「と、とんでもないっ!」
        「できないわよ。」

    【セッちゃん】
        「ぁ、ゴメンなさい。」
        「東郷にはできない・・・と言う意味ではなく、」
        「知っての通り、技術はあっても、知識と経験がなければどうにもならないの。」
        「ターニャちゃんがいろいろなメカを作れるのも知識と経験があるからよ。」

    【セッちゃん】
        「たしかに得意とはいったけれど、サダッチの切り傷くらいなら、細胞をどのように活性化すればすぐに治癒するかは知識としてあるけれど東郷教官の傷は複雑で私の知識ではまったく治せないわ。」
        「直すにはきちんとした医療コースを専攻しなきゃ。」
        「魔法のように呪文を唱えるだけでどんな複雑な怪我でも治せるわけではないのよ。」

    【ナナ】
        「ぁ、ゴメン、別にアイツを治してあげたいと思って聞いた訳ではないんだから。」

    【セッちゃん】
        「ごめんね力になれなくて。」
        「さっはやく、お風呂に入ってらっしゃい。」

    【ナナ】
        「ぅん、そうする。」




    統一朝鮮大統領府 執務室

    【秘書】
        「大統領、現地工作員からの報告です。」
    恐る恐るの報告だった。

    【大統領】
        「いい知らせなのか ?」

    【秘書】
        「ぃえ、悪い知らせ・・・です。」
    大統領の鋭い眼光に言葉を濁らせた。

    【大統領】
        「まったく君たちは与えられた仕事も満足にできないのかね。」
        「なにがあった ?」

    【秘書】
        「現地工作員からの情報では、大阪のジャンクショップにて宇宙艦のパーツを購入した子どもたちと遭遇し、強奪を試みましたが返り討ちにされた・・・との報告です。」

    【大統領】
        「なんだと ?」
        「プロがガキ相手に、持っている荷物を奪えなかったと言うことなのか ?」
        「しかも返り討ちに遭うとはどういう事なんだ ?」

    一瞬、話すかどうか躊躇ったが
    【秘書】
        「そ・・・それが、その子どもたちが悪魔のように攻撃がまるで通じなかった・・・との事で・・・。」
        「現在、その工作員は現地公安の手に落ち身柄を拘束されておりまして、我が国の大使館職員が公安に出向き確認しました。」
        「しかし全員が失明しております。」

    【大統領】
        「悪魔 ?」
    しばらく考え込んでいたが・・・。

    【大統領】
        「たしか、悪魔を養成する機関が、あるとは聞いた事がある。」
        「日本のAMPは、もともとその悪魔養成機関が開発したと報告を聞いたな・・・。」

    【大統領】
        「まぁいい、あの機関は別件でこちらでなんとかする手配をしている。」
        「この件は忘れてくれたまえ。」

    【秘書】
        「はっ、かしこまりました。」
    緊張のあまり吹き出した冷や汗を拭きながら執務室を後にした。



    その日の夕食

    【セッちゃん】
        「ビーツが手に入らないから、思い切って、ビーツなしで作ってみたの。」

    【ミーシャ】
        「はぁ!? 何言ってるのよ!」
        「ボルシチは、ビーツと豚肉のスープなのよ!」
        「そのボルシチにビーツがなければ、タコの入っていないタコ焼きと同じじゃないの!!」
    やれやれ・・・と手を広げて呆れた。


    【サダッチ】
        「最近、タコが高くて、こんにゃくが入ってるタコ焼きが多いわよ。」
        「櫻井の美輪大明神の参道の途中に細い路地があって、そこのカドのたこ焼き屋さんなんかそうよね。」
        「タコよりこんにゃくの比率の方が高いわよ。」
        「何年か前に初詣に行った時、サッチがそこのたこ焼き屋で買ったんだけれど、1個もタコが出てこなかったから。」
        「それ以降、そこのタコ焼きは当たり付きタコ焼きと言って、タコが出てきたら当たり・・・とオミクジみたいな扱いになってるわよ。」
        「そのお店、潰れてなければいいんだけど・・・。」

    【ミーシャ】
        「タコが出てこないのなら、それは、もはやタコ焼きと呼ぶ資格なんてないんぢゃないのかしら ?」
        「むしろ詐欺でしょ。」
        「ってか、そう言う話ではなくて、私が言いたいのは、なんでビーツではないの ?と問うているわけなんですっ!」
        「ホラ、代用として赤カブがあるとかネット検索でヒットするじゃない。」

    【セッちゃん】
        「よく知ってたわね。 でもね、赤カブは確かに似ているけれど、ビーツとはまったく異なる野菜だから使えないのよ。」
        「なので、偽物を作るよりは、無いのなら無いまま出来る限りホンモノに近づけてみたのよ。」
        「お口に合えばいいのですが。」

    すでにターニャが食べ始めていた。

    【ナターシャ】
        「すでにターニャがフライングしてるわよ。」

    【ミーシャ】
        「ぁっ、ズルイっ!!」
        「私も早くボルシチっ!」

    【セッちゃん】
        「はいはい」

    【セッちゃん】
        「どう? ターニャちゃん。」
        「お味は ?」

    返事はない・・・。

    【セッちゃん】
        「お口に合わなかったのかしら ?」

    【ナターシャ】
        「そんな事ないわ。」
        「ボルシチにウルサイあの子が、黙々と食べているのだから、美味しいはずよ。」

    【セッちゃん】
        「そうなの ?」

    【ターニャ】
        「ん・・・。」

    黙って、カラになった皿を差し出した。

    【ナターシャ】
        「ほら」
        「美味しかったから、おかわりよこせって事よ。」

    【セッちゃん】
        「気にいって頂けてよかったわ。」

    ビーツが無いことで、ボルシチとしての完成度に疑念を持っていたミーシャだったか、ターニャが美味しそうに食べているのを見て慌てて追従した。
    【ミーシャ】
        「ふむふむ・・・。」
        「いいんじゃない?」
        「悪く無いわね。」

    【ナターシャ】
        「それよりビーツなしで、どうやってこの赤いスープを実現したのよ ?」

    【セッちゃん】
        「トマトジュースよ。」

    【ナターシャ】
        「ふーん、適度な酸味が効いてるのはそのせいか・・・。」

    【ナナ】
        「満足したようね。」

    【ナターシャ】
        「まぁまぁってとこね。」



    日曜日になった。
    しかし、なんだか朝から騒々しい・・・。

    【サッチ】
        「朝からウルサイわねぇ。」
        「どうしちゃったのよ。」

    【サダッチ】
        「あの子たちが、元気になったのよ。」

    【サッチ】
        「あの子って ?」

    【ターニャ】
        「阿と吽の事。」

    【サダッチ】
        「そうそう、あの子たちよ♪」
        「って、おぃっ!!
        「いつ名前つけたんだよっ!」
    朝からどんな名前をつけてあげようか、それを楽しみに起きてきたのにガッカリしてしまった。

    【サダッチ】
        「ま、まぁ確かにこの子たちの連携は見事だったわ。」
        「2頭で阿吽かぁ。」
        「いいんじゃないの ?」

    【ターニャ】
        「そう思う。」

    【サダッチ】
        「ところで、サッチ」
        「なんで日曜に制服なの」

    【サッチ】
        「ん ?」
        「今からガッコー」
        「会計から先週分のトレードの戦績報告があるから学校に来てって言われたの。」

    【サダッチ】
        「今から ?」
        「そらご苦労なこった。」

    【サッチ】
        「先週はパォーマンスが良かったらしくて、それで補正予算を組みたいと言ってるのよ。」

    【サダッチ】
        「生徒会にも予算は ?」

    【サッチ】
        「ありませんっ!!」

    【サダッチ】
        「ケチっ!」

    【サッチ】
        「ノブちゃんが必死で頑張って稼ぎだしてくれた資金なのですから、適材適所に振り分けてあげないと。」

    【サダッチ】
        「わかってるわよ」
        「ノブちゃんによろしくね。」

    【サッチ】
        「わかったわ。」
        「でわ行ってくるね。」

    【サダッチ】
        「はーい、いってらっさー」


    【ナターシャ】
        「おはよー」
    眠い目をこすりなからリビングに登場。

    【ナターシャ】
        「もう傷はなおったの ?」

    【サダッチ】
        「もうバッチリよ。」
        「セッちゃんのおかげね。」

    【ナターシャ】
        「そのままおいとけば良かったのに・・・。」

    【サダッチ】
        「まぁなんてことを言うわけ ?」

    【ナターシャ】
        「明日は、ナノメディックの授業があるじゃないの。」
        「せっかくホンモノの傷で試せる機会だったのに勿体無い・・・。」

    【サダッチ】
        「ぃやぃやぃや」
        「乙女の肌についた傷を明日まで放置なんてあり得ないからっ!」

    【ナターシャ】
        ちっ。

    【サダッチ】
        「いま、心で、舌打ちしたでしょ ?」

    【ナターシャ】
        「べつに」

    【サダッチ】
        「ぃや、さっき一瞬、目が横向いたし。」
        「ぜったいに、"ちっ" て言ったよ。」

    【セッちゃん】
        「ほらほら、朝から賑やかね。」
        「片付かないから、サダッチもナターシャちゃんも早く朝ごはん食べてね。」

    【ナターシャ】
        「ターニャはどうしたのよ。」

    【セッちゃん】
        「今日は一番に起きてきて、ご飯食べたわよ。」

    そこへ車いすの東郷がリビングに入ってきた。
    【東郷】
        「おはよう・・・。」

    【セッちゃん】
        「あら、先生、今日はお体は大丈夫なの ?」

    【東郷】
        「ぅん、まぁ痛みは引いてる。」

    【セッちゃん】
        「ナノマシンを使っても治癒には時間がかかるのですから無理してウロウロすると回復が遅れますわよ。」

    【東郷】
        「君はナースと同じ事を言うんだな。」

    【セッちゃん】
        「そう ?」
        「こんな若くてボインのナースだったら先生も嬉しい ?」

    【東郷】
        「ぇ ?」
        「ええ、まぁそりゃ・・・」

    返事しかけたところで周囲の冷たい視線が突き刺さるのを感じた。

    【ナターシャ】
        「不潔っ」

    ナターシャの感情のこもっていないひとりごとに
    【東郷】
        「ぁ、ぃや、なんでもありません。」




    帯締学園トレーディングルーム

    【サッチ】
        「おはよう、ノブちゃん」

    【ノブちゃん】
        「あらお姉さま、おはようございます。」
        「思っていたより早かったのね。」

    【サッチ】
        「そらもう、ノブちゃんに会いたくて全速力よ。」

    【ノブちゃん】
        「そ、それはども・・・。」

    【サッチ】
        「で、先週はどれだけ稼げた ?」

    モニターに映し出される口座情報をチェックした。

    【サッチ】
        「あら、そこそこいい感じじゃない ?」
    思っていたより口座残高が増えている事にご満悦の表情だ。


    【ノブちゃん】
        「とりあえず、三原造船所で建造中の実験艦・・・建造が止まったまま、そのまま解体されそうなんですが如何致します ?」

    【サッチ】
        「ぁ、前に話していた、幸洋船渠 宇宙事業部でつくっていたアレ ?」
        「本当に解体されるの ?」

    【ノブちゃん】
        「来週のアトランティス議会選挙で艦隊派が議席過半数を取りそうなのよ・・・。」
        「その艦隊派の議員曰く、量産化する計画のない、そんな無駄なものにお金なんか投資できるかって話になってるそうよ。」

    【サッチ】
        「秋月なんて戦艦を何隻も買えるって話よ、あっちの方が無駄使いのような気がするわ。」

    【ノブちゃん】
        「秋月はもともと近衛艦隊発注のものですから、そこは仕方ありませんよ。」
        「しかし、それでも艦隊派は近衛艦隊とは犬猿の仲ですから、いろいろと小言は言われるかもしれませんね。」

    【サッチ】
        「ぅーーーん。」
    しばらく悩んでいる様子。

    【ノブちゃん】
        「とりあえず、買ってみる ?」

    【サッチ】
        「そうね、手配頼むわ。」

    【ノブちゃん】
        「それから資金に余裕が出てきましたので、45式改の屠龍と60式、」
        「そして61式飛燕 甲1型の建造に着手が可能です。」
        「各機の制御用ソースコードはほぼ完成しているそうよ。」

    【ノブちゃん】
        「疾風の開発は5号機で打ち切ってくれれば、その予算を五式戦に回せますが ?」

    【サッチ】
        「わかったわ。」
        「45式改と60式、そして61式の建造は生徒会承認 OK です。」
        「あとは疾風かぁ・・・。」
        「あの不良グループの機体でしょ ?」

    【ノブちゃん】
        「ちょうど5名ですね。」

    【サッチ】
        「あらそうだったかしら ?」
        「普段から3人でツルんでいるところしか見かけないけれど ?」

    【ノブちゃん】
        「5名です。」
        「可愛そうですからあとの2名も覚えてあげて下さい。」

    【サッチ】
        「その残り2名は誰なの ?」

    【ノブちゃん】
        「知りません。」

    【サッチ】
        「どの口がしゃあしゃあとっ!!」

    【ノブちゃん】
        「お姉さま生徒会長ですから覚える義務がありますが、私にはカンケーない話ですので覚える必要がないのです・・・。」

    【サッチ】
        「ノブちゃん・・・彼氏できない理由はそれだね。 ぅん、絶対にそうだ。」

    【ノブちゃん】
        「私は、お姉さまさえいてくだされば、オトコなんて必要ありません。」
        「それより、このあと、ご一緒にシャワーでも如何です ?」

    あとずさりしながら、丁重にお断りした。
    【サッチ】
        「そ、それは、またの機会ね、あははは・・・。」


    【サッチ】
        「ぁ、それから五式戦ですが、それも OK よ。」
        「明日、朝の職員会議にまで予算書を作っておいてね。」

    【ノブちゃん】
        「判りました。」

    【サッチ】
        「これで、いろいろと停滞していた開発も再開できるわね。」


    【ノブちゃん】
        「でも、フクちゃんが、月光の開発をやってるって言ってたわよ。」
        「開発が遅れなければいいのだけれど・・・。」

    【サッチ】
        「近衛研究機関から発注されたステルス機の事ね。」

    【ノブちゃん】
        「近衛隊からは、かなの予算が出たらしいわよ。」

    【サッチ】
        「うそ!?」
        「いくら?」

    【ノブちゃん】
        「大きな声では言えないけれど、確か、チョー最新の26式戦車が2個中隊揃えられるとか・・・。」

    【サッチ】
        「に、2個中隊 !?」
    トレーディングルームから廊下に漏れそうな大声が出てしまった。


    【ノブちゃん】
        「お姉さまっ! 声が大きいですっ!!!」

    【サッチ】
        「それ本当なの ?」

    【ノブちゃん】
        「まっちゃんからの極秘情報だから間違いなしです。」


    その頃まっちゃんの自宅では
    【まっちゃん】
        「へっくしっ!!」
        「風邪かなぁ??? いゃ、きっと誰か私の噂をしているな ?」
        「ターニャちゃんかな ?」

    その頃ターニャは
    【ターニャ】
        「へ・・・へっくち!!

    【ミーシャ】
        「んーー?」
        「ターニャ風邪 ?」

    【セッちゃん】
        「あらあらそれは大変ね。」
        「葛湯でも作りましょうか ?」

    【ターニャ】
        「大丈夫、誰かが噂したに違いない・・・。」
        「サッチとか ?」

    帯締学園トレーディングルーム

    【サッチ】
        「へっくしっ!!」
        「うーーーなんか急にくしゃみが出て来た・・・。」

    【ノブちゃん】
        「お姉さまっ! 大丈夫ですか ?」
        「お体すぐれないようでしたら、奥の仮眠室で休まれては如何ですか ?」
        「私も添い寝致しますからっ!!」

    【サッチ】
        「だ、大丈夫ですよ。」
        「あはははは・・・。」



    そして月曜日になった。

    第6過程1組の担任の東郷は負傷により欠席のため、他の教官が持ち回りで担任を引き受けていた。
    【さえ】
        「はい、皆さん、おはよう御座います。」
        「東郷教官は、今日もお休みですね。」

    【さえ】
        「そういえば、まっちゃんは、日本人に帰化申請したんですってね。」
        「どう ? 日本人になった気分は ?」

    【まっちゃん】
        「ぁ、はい。」
        「なかなか実感がわかないものです。」
        「でもネコ耳がないから、普段から日本人と間違われていたのですが、これでようやく否定する必要もなくなりました。」

    【さえ】
        「着席していいわよ。」

    【まっちゃん】
        「はい。」

    【さえ】
        「さて、本日は、ナノメディックの実習を行いますので、朝礼が終わったら、すぐに体操着に着替えて屋内バトルフィールドに集まってください。」

    【さえ】
        「それからクラス委員から報告があります。」
        「ナナよろしく。」

    【ナナ】
        「はい。」

    【ナナ】
        「すでにご存知の方もおられるとは思いますが、土曜日、でんでんシティーにて、我が校の生徒が何者かに襲撃される事件が発生しました。」

    ナナは自分たちが襲撃された事はふせておいたが、
    それでも襲撃と言う言葉に、クラスが一瞬どよめいた。
    しかし、今まで経験したことが無いケースだった為にすぐに静まり返った。

    【ナナ】
        「犯人は統一朝鮮の工作員と言うことが判っており、すでに日本の公安が身柄を拘束しています。」
        「統一朝鮮内務省からは捕虜引き渡し条約にのっとり、工作員の身柄の引き渡しを要求しているそうです。」
        「日本の外務省は工作員の引き渡しに応じるようですが、今後も同様のケースが起きることが懸念されます。」
        「今後、帯締校外で行動する際は、いつも以上に注意して出来る限り一人では行動しないようにしてください。」

    放課後の行動に制限が掛けられることにクラスから不満の声も上がったが、
    構わず
    【ナナ】
        「そして統一朝鮮工作員とは別に、ナノスキルを持った者も我々を狙う可能性があります。」
        「実際に先日のでんでんシティーでの我が校生徒への襲撃事件では、MCも確認されました。 統一朝鮮工作員は、ナノスキルを有していませんので、MCの術者にはなり得ません。なので、工作員とは別の何者かが騒動に便乗した事も考えられます。」

    MCが可能なのはナノスキルを有する術者・・・それは身内にも敵がいるかもしれない事を意味し、クラス全員、その意味の重大さを理解して沈黙した。

    【さえ】
        「正確な日取りは今のところはまだ未定ですが、その統一朝鮮とシナから留学生がやってくるわ。」
        「彼らは自国で開発した陸戦と我が校の陸戦との交流戦を通じで経験値を獲得する事を留学の目的としていますが、わざわざ休戦状態の敵国と軍事交流をやろうってんですから、それ以上の目的があると思われます。」
        「もちろん留学生の正体は工作員の可能性も非常に高いです。」
        「ですが、これは日本が突出して先進技術を保持する事が危険だと喧伝する行為が少しでも和らぐのであれば・・・と言う政治的な思いから、日本の外務省から強く受け入れを要請されたのよ。」
        「この学園としても相手が "生徒" である以上は仲良くしてはいけません・・・とは言えませんしそこはお互いの文化を知る上で大変貴重な経験になると思うので、仲良く接してあげてくださいね。」
        「外交問題となりますので、決してイジメないように。」

        (※1)・・・逆ビルド
            逆アセンブルとも言う。
            大抵のマシンはプログラム言語と呼ばれる命令の塊で動作している。
            プログラムを製造する段階では、人が理解しやすい、命令に近い表現で文章にする。
            これをコーディングと呼び、その命令集がソースコードと呼ばれる。
            そして、そのソースコードをさらに機械が高速で理解しやすい命令に変換する行為をビルド、或いはコンパイルと呼ばれ、ここまでして始めて機械を制御する事が可能となる。
            しかし、一度機械が理解できるレベルにしてしまうと、人間が理解するには不向きな文字の羅列に変化してしまうので、それを再び人間が理解できる形に戻すことを逆ビルドと呼んでいる。 ただ完璧に最初のソースコードの状態にまで戻せる訳ではない。

 

 

 

 

 

 

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