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アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-6-3】なのましんは魔法でもない!

なのましんは魔法でもない!!

【1-6-3】


    現在、広島に派遣され訓練生は以下のとおり。

    大九野島 前衛陸戦隊【第一小隊】
        若林奈々【ナナ】
        赤松貞子【サダッチ】
        長谷川清子【キヨちゃん】
        ハインツ・グデーリアンレオンハルトレオンハルト
        エルメスロンメル・ブルクミュラーエルメス
        アルビータ・ケッセルリンク・フォーゲル【アルビータ】
        ドン・カンピオーニ【カンピオーニ】
        アグスティナ・ムニョス・グランデス【アグスティナ】

    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ 宇宙艦 直掩陸戦隊【第ニ小隊】
        池田末吉【おみくじ】
        島田豊美子【トミちゃん】
        井上奈瑠美【なるみ】
        小畑英子【ヒデコ】
        クリスティーナ・パットン【ジョージ】
        バネット・モントゴメリー【バネット】
        ルーシー・マウントバッテン【ルーシー】
        ジュリア・ジョンソン【ジュリア】

    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ 宇宙艦回収隊本隊
        有賀幸子【サッチ】
        浅野節子【セッちゃん】
        岡本清子【オカちゃん】
        福田啓二【フクちゃん】
        森下信子【もっちゃん】
        アンナ・ニミッツ【アン】
        レイチェル・スプルーアンス【レイチェル】
        伊集院松子【まっちゃん】

    アトランティス帝国十津谷駐屯地 帯締分屯地(広大字池) 受け入れ班
        辻政子【ノブちゃん】
        ヘンリェッタ・アーノルド【ヘンリェッタ】

    SU-50Jへの ライセンス取得試験の為 学校を欠席
        加藤ケンジ【ケンジ】
        斎藤学【マナブ】
        吉井ヒジキ【コンブ】
        板井三郎【サブ】・・・※
        岩木徹三【テツ】・・・※
            ※本来は学徒第5過程 1組の訓練生だが、普段から加藤の舎弟としてつるんでいる。

    留守番
        その他のみなさん。

 

    私はと言うと、ちょっとヤボ用で寮内でゴョゴニョしている。




    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【サッチ】
        「よっこいしょ・・・と。」

    【もっちゃん】
        「艦橋に何を持ってきたの ???」

    【サッチ】
        「簡易トイレ♪」

    【もっちゃん】
        「ちょっ、猫の砂じゃないのっ!!」
        「どっから持ち込んだのよ。」

    【サッチ】
        「幸洋船渠購買部のペットコーナーでフツーに売ってたよ。」

    【もっちゃん】
        「ぃやぃやぃや、売ってたとしても、それ艦橋に置いてどうする気なのよっ!!!」

    【サッチ】
        「あらあら森下さんてわけ分からないこと聞くわね。」
        「おトイレにきまっているじゃないの。」

    【もっちゃん】
        「ぃやぃやぃや、ワケがわからないのは私のセリフよ。」
        「その猫の砂をどうして艦橋に置く必要があるのですか ?」

    【サッチ】
        「ほら、だって、まだこのフネに慣れていないし、トイレちょっと遠いし。」
        「迷子になって戻れなくなったらイヤだし。」
        「だから、ここにおトイレ置いたら、わざわざ遠くまで行く必要が無いでしょ♪」

    【もっちゃん】
        「何の為のナノテクノロジーだと思っているのよ。」
        「ちゃんと艦内マップをダウンロードしないからよ。」


    【フクちゃん】
        「今、ナノリンク止まってるよー。」

    【もっちゃん】
        「そ、そうだった・・・_| ̄|○

    【もっちゃん】
        「と、とにかく、猫の砂はダメですっ!!」

    【サッチ】
        「どうして ?」

    【もっちゃん】
        「だって、任務中に用足したら、下半身むき出しになってるのが皆に丸見えだし・・・。」

    【サッチ】
        「そこは大丈夫♪ ぬかり無いよ。」
        「購買部のウラに積んであったカラのダンボールをおばさんに言って貰ってきたの♪」

    【サッチ】
        「これを、こーして、あーして」

    【サッチ】
        「ほら、ついたての完成♪」
        「これで陰部はガッチリガード♪」
        「にゃんこ的にはダンボールってところがやたらと落ち着くのよねぇー。」

    【もっちゃん】
        「ぃやぃやぃや、でも、音が・・・音が漏れるよっ!!」
        「皆に聴かれちゃうじゃないのよっ!!」
        まったく猫族って恥じらいというものが無いのかしら ???

    【サッチ】
        「そのへんも大丈夫だよ。」
        「携帯端末の音消しアプリ的な感じのヤツで、最近は脳内音消しアプリと言うのがあるんだ。」
        「これを脳内ストレージにインストしてあるから OK っ!!」
        「シッコする時は、このアプリを起動すると自動的に脳内でメロディーが流れ、用達した時の音がかき消されるって訳よ♪」

    【サッチ】
        「スゴイでしょ。 私も少しずつ機械音痴を克服しているのです♪」

    胸をはって機械音痴からの脱却を自慢してみた。

    【もっちゃん】
        「んーーーと・・・確認するけど、そのメロディーって・・・脳内で流れるの ?」

    【サッチ】
        「そだよ。」

    【もっちゃん】
        「やっぱりダメじゃないのよ、聞こえなくなるのは自分だけで、皆には丸聞こえだよっ!!!」
        だれだ、この無意味なアプリを作った奴はっ!

    【サッチ】
        「えっ!?  そうなの ?」

    【もっちゃん】
        「ぅぅぅ・・・この人ったら」
        それにしても副会長のサダッチってよく会長をコントロールできるわね・・・。

    【もっちゃん】
        「と、とにかく、そのトイレは艦橋に置くことだけは絶対に・・・」

    【サッチ】
        「ぁ、サダッチの識神っ!」

    【もっちゃん】
        「ぇっ!?」

    【オカちゃん】
        「大九野島の第一小隊とは連絡とれる手段がないから、伝令を飛ばしてきたのでしょうね。」

    【セッちゃん】
        「識神からのメッセは何て ?」

    【サッチ】
        「ナナ達が鹵獲用の大型船を目視で確認したそうです。」
        「そろそろ迎撃の準備にかかるそうよ。」

    【サッチ】
        「私達も警戒態勢を強化しないといけないわね。」

    【セッちゃん】
        「直掩の第2小隊に警戒厳にせよと伝令の識神を放ちますか ?」

    【フクちゃん】
        「そんな事しなくても、携帯基地局で艦内と艦外とつながっているから、普通に電話すれば ?」
        「ナナたちの識神は、きっとこちらの電話が使えるとは思っていなかったんでしょう。」

    【セッちゃん】
        「では、直接携帯に掛けてみる ?」

    【サッチ】
        「わかった、そうする。」




    大九野島 東海岸

    キヨちゃんとヨンギュンが対峙して、5分・・・。
    先に動いたのは、ヨンギュンだった。

    【ヨンギュン】
        「なるほど・・・相手が日本刀なら、こちらはその "日本刀" のベースとなった環刀(かんとう)の発展型だ。」
        「わが統一朝鮮が誇る現代鋳造技術の粋を結集した AMP 専用刀だ。 すなわち格闘戦でも負けはしないということだっ!!」

    ヨンギュンのブーメランは、同時に上陸したシナ軍とは異なり、格闘戦を重視した装備が施されており、使用できなくなった火器をアッサリ捨てて、環刀に持ち替えた。

    【キヨちゃん】
        ほほーーー。
        あっさりと飛び道具を捨てたか。
        やはりコイツ、格闘戦にも自信があるって訳か・・・。

    一気に間合いを詰めて左から斬撃を繰り返す、ブーメラン。
    ハヤブサはこれを刀で受け止めたが、右から別の斬撃が繰り出されてきた。

    【キヨちゃん】
        特攻剣術 !?
        「ひょぇーーーー」
        「コイツ二刀流かっ!!」

    ハヤブサはからくも上半身をのけぞらせ、第二撃を躱すと、上段回し蹴りで相手の頭部を吹き飛ばそうとした。
    対してブーメランは即座に刀で防御し、ハヤブサの右脚部深くに環刀がめり込んだ。

    特攻剣術とは、統一朝鮮軍が採用している近接格闘戦剣術の事で基本はアーミーナイフの使用を前提とした格闘戦を想定しているが、AMPでは、その発展型が考案され、環刀を使用した剣術として訓練を受けている。

    【ヨンギュン】
        あぶなかった・・・メインカメラを失うところだった。
        「第一撃はともかくとして、本命の第二撃が回避されただと !?」
        コイツ、カラテ使いなのか?
        しかし手応えはあった。

    脚部の強化樹脂製の軽量装甲が裁断され、内部フレームにまで環刀が到達していた。

    【ヨンギュン】
        ハヤブサの脚部フレームはもうもつまい・・・。
        「これでヤツの足は止めた。」


    【支援AI】
        「アヤウク、クビガ、トビソウニナリマシタネ。」

    【キヨちゃん】
        「なぜヤツが2本持ってるって警告ださないの ?」

    【支援AI】
        「タノシソウ ダッタカラデスヨ。」

    【キヨちゃん】
        「ぇっ!?」

    【支援AI】
        「アナタハ イマ テキヲ メノマエニシテ、タノシンデマスネ?」

    【キヨちゃん】
        「私がこの状況を楽しむだって ?」

    【支援AI】
        「ソウデス。」

    【支援AI】
        「シンパク、ノウハ、トモニ はいてんしょんヲ キロクシテイマス。」
        「アキラカニ アナタハ コノジョウキョウヲ タノシンデイマス」

    【支援AI】
        「ダカラ ワタシクシメハ、アナタノ タノシミヲ ウバワナイヨウニ ケイコクヲダシマセンデシタ。」
        「ソレトモ、オジゲヅイタ ?」

    【キヨちゃん】
        「私がビビるって ?」
        「まさか !?」

    【キヨちゃん】
        「まぁ確かに、これほどの本気のバトルは訓練でもしませんからね。」
        「ワクワクしているかぁ・・・正解かもしれないわ。」

    【キヨちゃん】
        ぅーん。 なるほど相手は環刀(※1)か・・・。
        が、所詮は鋳造。 鍛造で建造される頑強な日本刀に鋳造で形だけマネたコピー品が勝てるわけがない。

    【キヨちゃん】
        「次は私の番ね♪」

    なんの予兆もなく、突然加速し始めたハヤブサにブーメランは後ろへ後退し間合いを取ろうとした。
    キヨちゃんの斬撃は躱されたが、即座にさっきと同じ回し蹴りで、失った間合いを足で距離を取り戻した。

    「ベコッ」と言う鈍い音とともにブーメランの頭部装甲の一部が吹き飛ばされ、内部センサーが露わになる。

    【ヨンギュン】
        くっ!
        「アイツは右脚部のフレームのダメージに気がついていないのか ?」
        「それともバカなのか・・・。」

    ブーメランも体勢を立てなおして反撃に転ずる。
    ブーメランの一撃が繰り出されたのを今度はハヤブサは刀で立ち向かわずに、見切りで躱し、予想していた第二撃に対して、渾身の力で日本刀を振りぬいた。

    「コン」と意外なほど軽い音とともに、環刀が裁断され、剣先がアスファルトに刺さる。

    【ヨンギュン】
        あの日本刀・・・相当に硬いぞ。
        これはマズイ。

    環刀で切りつけた筈のハヤブサの脚部は、どうやら異常をきたしていないようだ。

    【ヨンギュン】
        「確かに手応えはあったはずなのに・・・。」
        環刀ではダメージを与えられなかったのか ?
        そんなはずはない。
        環刀は日本刀より優秀なはずだ。

    【ヨンギュン】
        そうか、欠陥品をつかまされたんだ。
        あの裁断された環刀がそれを証明している。
        「くそ、欠陥品ではこちらの分が悪い。」

    機体に受けた被害状況を即座に洗い出し、潜水に支障がないことを確認する。
    【ヨンギュン】
        やむをえまい、引くしかないか・・・。

    ドッグの方を見渡すと、友軍の強襲部隊もスタンバイしているのが確認できた。
    予定通りミサイルが飛んでくればアイツラの突撃が行われる。

    【ヨンギュン】
        今さら小日本どもが、アイツラに気がついたところで、もう手遅れだ。
        俺の役目も十分に果たしたとして、ここは撤退したほうが良さそうだな。

    背部からスモークディスチェンジャー(※3)を放って離脱にかかる。


    【キヨちゃん】
        「煙幕 ?」

    【支援AI】
        「ニゲルヨウデスナ」

    【キヨちゃん】
        「わかってるわよっ!」

    真っ白のスモークが炊かれた為、光学センサーを可視光から赤外線モードに切り替えたが、すでにブーメランは、砂浜から海へ逃げようとしていた。
    それを追いかけようとしたキヨちゃんに AI は制止した。

    【キヨちゃん】
        「なんで止めるのよっ!」

    【支援AI】
        「ハヤブサは泳げません。」

    【キヨちゃん】
        「そ・・・そうだったわね。」


    しかし、残る7機が島の北側に回ったのをすぐに思い出した。
    【キヨちゃん】
        「はやく追いかけなきゃ。」

    【キヨちゃん】
        「あなたダメージは ?」

    【支援AI】
        「イチブ、ソウコウガソンショウヲウケ、ばってりーノイチブヲ ウシナイマシタ。」
        「ソレイガイ、だめーじナシ。」

    【キヨちゃん】
        「わかったわ」
        「追撃するわよ。」

    【支援AI】
        「リョーカイ」



    大九野島 北部サイクリングコース上。

    大九野島は小高い丘を一周するサイクリングコースが設けられていた。
    もともと大九野島は旧帝国陸軍の毒ガス研究施設が置かれていた極秘の島で、島のあちこちに朽ち果てた軍の施設が放置されている。
    これらの施設はサイクリングで移動しながら自由に見学できるようになっていたが、シナ人民解放軍のAMP(ブーメラン)は、このサイクリングコースをたどる形で北側から迂回して西海岸の帯締学園に迫ろうとしていた。

    【シナ人民解放軍 A】
        「ここが一番北側だな。」
        「地図によれば、この構造物を曲がって坂を下れば敵の背後に出られるはずだ。」

    とつぜん、センサーに熱源を感知しアラートが鳴り響く。

    【シナ人民解放軍 C】
        「敵か !?」

    【シナ人民解放軍 B】
        「隊長っ!!」

    【シナ人民解放軍 A】
        「どうした ?」

    【シナ人民解放軍 B】
        「敵のお出ましです。」
        「左側面の丘の上です。」

    見上げると、1機の迷彩 AMP がシナ軍のAMPを見下ろしていた。
    いつからそこに居たのか・・・。
    般若のような独特な頭部装甲は、ひと目でハヤブサと判る特徴的な "顔" をしている。
    どっからどう見ても悪役の顔にしか見えない形相だ。
    2本の鬼角のように見えるブレードアンテナは、一つは通常のデジタル戦域無線で
    もう一本がナノリンクブレードとなっており、今後の帯学園陸戦型戦闘鬼の頭部装甲のスタンダードデザインとして統一されていく。

    【シナ人民解放軍 A】
        「敵はこの1機だけか ?」

    【シナ人民解放軍 B】
        「そのようです。」

    【シナ人民解放軍 C】
        「おそらく部隊から周辺警戒に出てきた1機かと思われます。」

    【シナ人民解放軍 A】
        「とにかく、幸いなことに日帝のAMPは1機のみ」
        「ジャミングが効いている今なら、ここで倒しておけば敵本隊に知られずに奇襲をかけられるぞ。」


    【シナ人民解放軍 A】
        「総員戦闘配置っ!!」

    号令を掛けた時には、鬼の形相のハヤブサはすでに丘から飛び降りサイクリングロードに着地していた。

    【シナ人民解放軍 A】
        「ぅ、撃てっ!!」

    12.7mm マシンガンを連写モードにセレクトして、7機のAMPがハヤブサを狙う。

    【サダッチ】
        「あら、いきなり撃つわけ ?」
        「せっかちねぇ。」


        キヨちゃんと同じタイプの索敵結界を展開する事で、あらゆる方向から飛来する弾道が瞬時に計算され、被弾しない最適かつロスの無い挙動で回避行動をとる。

        一気に間合いを詰め、シナ軍のブーメランに肉薄するとマシンガンを蹴りあげた。
        左腕マニュピレーターで保持していたマシンガンは、吹き飛ばされ丘の土に突き刺さった。
        素手となったブーメランは、装備しているアーミーナイフを取り出す余裕もなく、ハヤブサとガッツリと両手で組合となった。

    【シナ人民解放軍 C】
        「つ、捕まえましたっ!!」

    【シナ人民解放軍 A】
        「発砲止めっ!」
        「味方に当たるぞ」

    【シナ人民解放軍 A】
        「大丈夫かっ!?」

    【シナ人民解放軍 C】
        「ええ」
        「コイツをねじ伏せますので、パイロットを引きずりでしてください。」

    【シナ人民解放軍 A】
        「よし。」
        「よくやった。」


        シナ軍の会話の内容は、無線ではなく空気振動により猫族のアトランティス人であるサダッチに直接に聞こえていた。
    【サダッチ】
        「私を捕まえた ?」
        「冗談でしょ ?」

    ハヤブサのアクチュエーターのトルクが増し、徐々にブーメランを押していく。

    【シナ人民解放軍 C】
        「こ、こいつ押し戻してやがる」

    【シナ人民解放軍 B】
        「ハヤブサのパワーが上回っているのか ?」
        「ブーメランのモーターはハヤブサで採用されているのより大幅に出力を向上させた改良発展型だったハズ」
        「最新のモーターが旧型モーターに出力で劣っているわけがない。」

    【サダッチ】
        なるほど、ハヤブサとアクチュエーターの音が似ていると思ったらコピーしたのね。
        しかしコピーはしたものの製造精度が低く、無理やり出力を追求したせいで、出力波形にノイズが乗っている。

    【サダッチ】
        「組み立て精度と言うのは、極限下において性能を大きく左右するもんなんだよっ!」

    力勝負に優勢に立ったハヤブサがそのままブーメランを押し倒す。
    ハヤブサの右腕マニュピレータがブーメランの頭部装甲のジョイント・・・要するに首に相当する部位を締め上げた。

    仲間のピンチに
    【シナ人民解放軍 B】
        「まってろ」

    マシンガンのセレクターを連写モードから単発に切り替え、肩撃ち姿勢を取った。。
    それは、瞬時にハヤブサの警戒センサーにアラートが出される。

    【シナ人民解放軍 A】
        「パイロットだけを狙え。」

    【シナ人民解放軍 B】
        「これだけ至近距離だとハズレねぇよ。」

    バンっ! 銃声とともに砂埃が立ち上った。

    【シナ人民解放軍 B】
        「らくしょーだぜ。」

    しかし、ハヤブサは左腕マニュピレーターで銃弾を受け止めていた。

    【シナ人民解放軍 A】
        「受け止めただと ?」
        あれが噂のシールドと言うものか !?

    ハヤブサの左腕マニュピレーターから1m前方にサークル型シールドを発動させ着弾を阻止していた。
    実のところ、サークル型シールドは対熱エネルギー弾に対して最も効果を発揮し、実体弾に対しては完全な防御ができない欠点があった。 しかし地球製の火薬投射兵器くらいであれば、十分に防御を発揮する。

    【シナ人民解放軍 B】
        「こいつ、魔法みたいなもので、銃弾を受け止めやがったっ!!」

    即座に、セレクターを連写に切り替えると、一気にマガジン内のすべての弾丸を消費するまで射撃を続けた。

    マガジン内の銃弾をすべて消費したところで発砲は終了した・・・。
    これでカタがついたとシナ軍の誰もが思った瞬間、ナノシールドが発する反発力により砂塵が掻き消され、ハヤブサは何事も無く押し倒したブーメランの頭部ジョイントをマニュピレーターの握力でへし折った。

    さすがにマシンガンの連射を受け止めるためにシールドをやや強化したらしく、さきほどまで省パワー重視の透過モードで展開させたシールドは、表面に浮かび上がった術式がシナ軍にもハッキリと目で認識できるほどの強さで展開されていた。

    【シナ人民解放軍 B】
        「ワケの判らない魔法を使いやがって!!」

    マガジンを交換すると、再び連射を開始し、他の隊員も射撃に加わった。

    倒したブーメランの頭部を投げ捨てると、丘の傾斜面を駈上ったかと思うと、そのまま空中で反転してブーメランの陣形のどまんなかに着地してきた。
    この状態では同士討ちとなるため射撃を止めなければならなかった。

    【シナ人民解放軍 A】
        「作戦変更だ。 なんとしても、そいつを持ち帰るぞ」
        あのシールドが手に入れば、我軍は無敵の軍団になれる。
        アメリカ軍だって打ち負かすことが可能になるぞ。

    すでに機動力で圧倒されている事を悟ったシナ軍は、格闘戦を避け、間合いを確保しながら有利な射撃位置を確保しようとした。

    【サダッチ】
        「ふん、限界性能では勝てないとみて、格闘戦を避けてきたか・・・。」

    背後に回りつつあったブーメランを足払いで倒すと、頭部センサーを貫手で破壊し、マシンガンを保持したマニュピレーターを踏みつけて破壊した。
    汎用性を求めて人間の指を模したマニュピレーターは、数々の武器や装備を柔軟に扱える便利な機巧ではあったが、その分構造が複雑で衝撃に脆い欠点があった。
    一方で帯締学園の陸戦も開発当初は通常のマニュピレーターを装備していたが、訓練を重ねるうちオロチを相手にした格闘戦ではマニュピレーターの強化が必須と言う結論が早い段階で出されており、今ではすべての機体が武器としても使用可能な強化型のマニュピレーターを装着している。

    ハヤブサの背後の味方機がヤラれたことで相打ちの危険が減少し、残った5機のブーメランが斉射を仕掛けてきた。

    対して、
    サダッチの脳内では画像処理アプリがブーメランが構える銃口の角度から射線を計算し、即座にハヤブサに回避機動を指示した。
    ブーメランがトリガーを引く頃にはハヤブサはすでに回避行動に入っており、結局全弾が躱されてしまった。

    【シナ人民解放軍 A】
        「コイツ強いぞ。」
        マズイな。 シールド貼っていなくても全弾回避できるのか・・・。

    とっさにハヤブサの確保は無理だと判断した。

    【シナ人民解放軍 A】
        「くそっ!」
        「撤退するぞっ!!」

    【シナ人民解放軍 D】
        「てっ撤退ですか !?」

    【シナ人民解放軍 A】
        「そうだ。」
        「戦闘力に格差がありすぎる。」
        「ハヤブサの生け捕りは不可能だ。」

    【シナ人民解放軍 D】
        「しかし、西海岸のハヤブサはどうします ?」

    【シナ人民解放軍 A】
        「諦めろ。」
        「我々7機がかりでもコイツをヤレんようじゃ、西海岸のAMP部隊とはどのみち戦えん。」

    【シナ人民解放軍 D】
        「ヨンギュン少尉はどうします ?」

    【シナ人民解放軍 A】
        「ヨンギュン少尉の腕前なら心配はいらないだろ。」
        「我々よりもAMPのテクは上だ。」

    【サダッチ】
        「あら、そのお仲間は、戦いに敗れたそうよ。」

    【シナ人民解放軍 A】
        「な、なんだと ?」
        バカな!? コイツ、我々のデジタル無線を傍受できるのか ?
        しかもシナ語を理解できるのか ?

    【シナ人民解放軍 D】
        「どうやって秘匿回線を傍受してるんだ ?」

    【シナ人民解放軍 A】
        「わからん。」

    【サダッチ】
        「私、耳がいいから、あなたたちの会話がまる聞こえなのよ。」

    耳から入った会話は自動的に脳内アプリで翻訳され、サダッチにはリアルタイムで聞こえていた。
    また脳の発声中枢を直接駆動するアプリにより日本語やアトランティス語を自動的にシナ語に変換して発声する事もできる。


    【シナ人民解放軍 A】
        戦闘中の我々の会話がすべて生身で聴かれているだと ?
        ありえんっ!
        どんな魔法をつかいやがった。


    【シナ人民解放軍 D】
        「どうします ?」
        「撤退しますか ?」

    【シナ人民解放軍 A】
        「ああ、撤退だ。」
        「魔法使い相手では我々に勝ち目がない。」

    【サダッチ】
        「あら、早かったのね。」

    【シナ人民解放軍 A】
        「ぇっ!?」

    【キヨちゃん】
        「ええ、まんまと逃げられたわ。」

    【サダッチ】
        「そのようね。」


    【シナ人民解放軍 A】
        「な・・・いつからいたんだ。」

    とつぜん、もう一機のハヤブサの存在にシナ軍が気づく。

    【サダッチ】
        「東海岸で1機で頑張っていたお仲間さんは、その娘に敗れて逃げたのよ。」
        「その人、逃げられて運が良かったわね。」

    【シナ人民解放軍 A】
        「なんだと!」
        「本当にヨンギュン少尉は敗れたと言うのか ?」

    たしかに、新たに出現したハヤブサには、そのヨンギュン少尉のブーメランと戦った痕跡らしき傷跡が残っていた。


    【キヨちゃん】
        「この人達、残りぜんぶやっつけていい ???」

    【サダッチ】
        「いいわよ。 貴女に譲ってあげるわ。」
        「私は戻ってナナをフォローしなきゃ。」

    【サダッチ】
        「ただし」

    【キヨちゃん】
        「ただし ?」

    【サダッチ】
        「あまり遊んじゃダメよ。」
        「さっきジャレてて逃げられたんでしょ。」

    【キヨちゃん】
        「ち、違うわよっ!!」
        「私は猫族のあなたたちとは違うんだからっ!」

    【サダッチ】
        「なら、今度は逃さずに、全員抹殺するのよ。」

    【キヨちゃん】
        「わ、わかってるわよっ!」

    【サダッチ】
        「じゃ先に行くわね。」
    と言い残して、サダッチはあっという間に丘を駆け上がって消えていた。


    【シナ人民解放軍 A】
        くっ・・・見逃してくれそうもないか。
        どうする ?
        このままでは皆殺しにされる。

    【シナ人民解放軍 A】
        「降伏する。」

    【シナ人民解放軍 D】
        「ぇっ!?」
        「降伏しちゃうんですか ?」

    【シナ人民解放軍 A】
        「そうだ。」
        「降伏だ。」
        「捕虜交換で帰国できればまだ挽回のチャンスがある。」

    【シナ人民解放軍 D】
        「そ、そうですね。」
    再びの作戦変更に驚いたものの、それしか生き残れるチャンスはなさそうだった。

    【シナ人民解放軍 A】
        「やつらは我々の会話が聞き取れている。」
        「降参の意思を示せばとりあえず捕虜として収容してくれるだろう。」

    しかし、運悪く、キヨちゃんはアトランティス人ではなくフツーの日本人だった。
    彼らの会話が聞こえるはずがなかった。

    しかし、マシンガンを捨てホールドアップの状態となったブーメランは明らかに降伏の意思を示し、それはシナ軍の会話を聞き取れなかったキヨちゃんにも彼らの意思が理解出来た。

    【キヨちゃん】
        「今朝、念の為に日本国外務省経由で大型輸送船の行動の真意を問いただしたところ、みなさんの外務省からは、日本領海内で不法な行動をとる同胞は一切存在しない・・・って正式な回答を貰っているの。」
        「つまりあなた達は、今この場には存在しないはずなのよ。」

    【キヨちゃん】
        「なので、かわいそうだけれど捕虜として捕縛できないわ。」
        「あなたたちは国の命令でこの場にいるのでしょうけれど・・・貴方の祖国はあなた達はここには居ないと言った。」
        「わたしたちと遭遇した運の悪さを呪ってちょうだい。」



    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦


    【サッチ】
        「・・・」

    【セッちゃん】
        「どうしたの ?」
        「大丈夫 ?」
        「携帯の使い方判る ?」

    【サッチ】
        「繋がらない。」

    【アン】
        「どうせ通話ボタン押すの忘れてんじゃないの ?」

    【セッちゃん】
        「ぁ、そっか、そうよね。」
        「ちゃんと通話ボタン押さなきゃダメよ。」

    【サッチ】
        「何言ってるんだぃ。」
        「ちゃんとやってるよ。」
        「ちゃんと押してるよ。」
        「でも繋がらないんだ。」

    【アン】
        「おかけになった電話番号は現在電源が入ってないか・・・的なこと言ってない?」

    【サッチ】
        「言ってない・・・。」

    【アン】
        「ほら、やっぱりちゃんと通話できてないんじゃないの。」

    【フクちゃん】
        「おかしいですね。」
        「回線が使えると言うことなので、さっき外部とSNSしたときは、ちゃんと繋がってましたよ。」
        「今確認してみますね。」

    そう言いながら、持参した端末で通信ネットワークのチェックにとりかかった。

    【フクちゃん】
        「やはり、おかしい。」

    【レイチェル】
        「じつは通信が妨害されていたりしてねぇー。」

    【アン】
        「まさかぁ」

    【フクちゃん】
        「ぃや、どうやら、それっぽい。」

    【レイチェル】【アン】
        「ぇっ!?」「うそ」

    【フクちゃん】
        「艦内基地局は正常に動作してて、艦外基地局も正常。」
        「しかし、三原、竹原周辺の基地局からの応答がない・・・。」
        「妨害を受けている可能性が大きい。」

    【もっちゃん】
        「艦外スタッフと第2小隊との連絡はどうする ?」

    【サッチ】
        「やはり識神放つしかなさそうね。」

    【セッちゃん】
        「わかったわ、とりあえず第2小隊に警戒レベルを上げるように連絡します。」

    【サッチ】
        ・・・何かが変だわ。
        「まってっ!!」

    【セッちゃん】
        「どうしたの」

    【サッチ】
        「嫌な予感がするわ。」
        「もっちゃんっ!!  このフネを緊急発進させてください。 急いでっ!!」

    サッチはこの状況を戦闘前の広域電子妨害と断定した。

    【もっちゃん】
        「ちょっ、ちょっと待って下さいよ。」
        「燃料がまだぜんぜん入ってません。」
        「タンクはカラですよっ!!」

    【サッチ】
        「そんな事ないと思うわ。」
        「亜光速ドライブの燃焼テスト用に燃料が入ってるのデータで見たもの。」

    【もっちゃん】
        「それっぽっちじゃ、30分も持ちませんよ。」
        「広大字池分屯地までスラスターの連続噴射で飛行するには距離が足りません。」

    【サッチ】
        「亜光速ドライブを使用して、弾道コースで地球を一周して分屯地まで戻るわ。」
        「一瞬加速すればいいだけじゃないの」

    【もっちゃん】
        「ぅーーん。」
        「確かに、その方法だと戻れるわね。」

    それを聞いた幸洋船渠のスタッフが慌てた

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「ちょっと待って下さいよ。」
        「このフネは、まだ支援AIはインストールされていなんですよ。」
        「どうやって動かすのですか ?」

    【まっちゃん】
        「どれくらいでインストールできますか ?」

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「約2時間ほどかと・・・。」

    【サッチ】
        「それは待てないわ。」
        「きっと、それまで鹵獲隊が先に仕掛けてくるかもしれません。」
        「手動操艦システムは動くんでしょ ?」

    【まっちゃん】
        「ひととおりチェックしましたが、手動では動きそうです。」

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「そりゃ、基本的な装備ですから、使える状態で装備はしていますけれど、」
        「だとしても、たったこれだけの人数で手動で動かすのは無理ですよ。」

    【サッチ】
        「支援AIが間に合わないのであれば、やってみるしかないでしょっ!」

    【サッチ】
        「第2小隊を艦内に退避の伝令を」
        「そして、艦外で活動中のスタッフ全員を艦内に収容してください。」
        「貴方もです。」

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「私もですか ?」

    【レイチェル】
        「サッチは鹵獲隊との戦闘になる事を想定しています。」
        「会社に残るよりは、このフネに居るほうが安全です。」

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「ぃや、しかし。」

    【アン】
        「あら、アナタはこのフネを信用出来ない訳ね ?」

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「そんな事はない。」
        「我が日本の最高水準の技術で建造したこの艦、そう簡単には沈みはしませんよ。」
        「しかし、軍人とはいえ、訓練生は素人同然、操艦ミスで落ちては意味が無いんですけどっ!!!」

    【アン】
        「男なら、覚悟を決めなさいっ!!」
        「今度泣き言を言ったら、そのニッパーでキ●タマちょん切るからねっ!!!」

    ただち、識神が放たれ、第二小隊は艦内に収容され、艦外活動のスタッフや幸洋船渠宇宙事業部ドッグ社員たちも艦内に避難した。


    【サッチ】
        「発進するわよ。」
        「まずスラスターで大九野島に接近して、第一小隊を回収してください。」
        「そこから広い海域まででて、亜光速ドライブを使用し、弾道コースで地球を一周して帰還します。」
        「いいわね」

    【もっちゃん】
        「乗員が定数を割っていますので、発進シーケンスを省略します。」
        「各システムの単体テストは終わっているようなので、信用しましょう。」

    【サッチ】
        「フクちゃん、まっちゃん、もしエラーがでたら対処をお願いするわ。」

    【フクちゃん】【まっちゃん】
        「了解っ!」

    【もっちゃん】
        「ドライブ駆動用電力が足りませんっ!!」
        「新型核融合炉の運転が安定しません。」

    【サッチ】
        「核融合炉って、電気いるの ?」

    【もっちゃん】
        「従来の原子炉と違って、核融合炉は必要なエネルギーを得るには最低限のエネルギーが必要なのです。」
        「今、外部電力で核融合炉を起動をかけていますが電力が足りずに立ち上がりに時間がかかっています。」

    アメリカが開発した新型核融合炉はつい数十年前までは今世紀中の実現は不可能と言われていた。
    課題のブレークスルーに成功して一気に実用化に近づき、実証炉が完成したのが5年前。
    "地球製" の艦船搭載型核融合炉としては、水上艦、宇宙艦ともに、本艦が最初の搭載事例となった。
    しかし激しい機動を行う宇宙艦への搭載にあたっては様々な課題を克服しなければならず、それが原因で安定した稼働を維持するのに難航していた。


    【おみくじ】
        「こちら船外デッキ、第ニ小隊配置についた。」
        「艦内との通信も良好。」

    収容した第二小隊は、哨戒と警備を担当する為、各機が分散して船外デッキにでていた。
    これらの各ハヤブサは、搭乗するパイロットのスキルによって索敵結界を分担して展開し、艦の半径100Kmまでの全周を監視下に置いていた。

    さっそく捉えたのは前方の大九野島で起こっていた戦闘だった。

    【トミちゃん】
        「大九野島の第一小隊が戦闘中ですっ!」
        「そして例の大型船がすぐ近くに来ていますっ!!」

    【オカちゃん】
        「なんだって ?」
        「支援射撃はできないの ?」

    しかし、新たな報告が入ってくる。

    【ジュリア】
        「愛媛方向から高速熱源体!」
        「数、4個!」
        「対水上艦用のドローンですっ!!」
        「しまなみ街道を沿う形で迂回しながら接近中!!」
        「着弾まで180秒っ!!」

    【ヒデコ】
        「結界に新たな反応っ!!」
        「こっちは航空機のようよ。」
        「数、48機」

    【なるみ】
        「こっちにも反応あったわ。」
        「数、32」
        「やはりヒコーキのようね。」

    【セッちゃん】
        「第一小隊方面でも戦闘ヘリとおぼしきものが飛んでると報告が入ってるわ。」


    【サッチ】
        ドローンとは別に航空隊の支援 ?
        「つまり、ドローンはコッチの足止めね。」
        「航空機の方は、鹵獲隊の航空支援でしょう。」
        「と言うことは、すぐ近くに潜む鹵獲隊本体がいる筈よ。」

    【サッチ】
        「ドライブは ?」

    【もっちゃん】
        「動かせませんっ!!」
        「まだ電力が不足です・・・」
        「ちょっとまってください。」
        外部電源のゲインが急速に上昇している ???

    どうやら、外部から提供される起動電力が増強されたようだ。
    【もっちゃん】
        「来ましたっ!!」
        「外部から大量の電力供給を受けています。」

    船外デッキのハヤブサからモニター映像が回されてくる。
    大九野島 西側に位置する竹原市の映像がアップされた。
    赤外線映像に切り替わると、激しく熱を放出している施設が映しだされていた。

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「竹原火力1号機と2号機が全力運転に入ったんだ。」

    【サッチ】
        「どうやら手配していた電気が間に合ったのね。」

    【もっちゃん】
        核融合炉、起動しましたっ!」
        「通常15分ですが、5分でミリタリーパワーに入ります。」

    起動電力に火力発電から供給される電力が加わった事で、立ち上がりが大幅に短縮できる見通しがついた。
    これで大量の敵にとりつかれて面倒な事になる前に離陸が可能となる。


    鹵獲隊本体

    ドッグのガトリングクレーンが退避しているのを察知した。

    【鹵獲隊 戦闘員】
        エンジンが起動した ?
        事前に入手していた操艦マニュアルでは、エンジンが起動して離陸できるようになるまでは15分掛かるとあった。
        しかし、もう遅い。
        対艦ミサイルはもうじき命中する。
        いまいましいセンパンキ(キョクジツキ)を付けて飛び立つことはないだろう。

    【鹵獲隊 戦闘員】
        「もうじき、我が方の対艦ミサイルが目標に命中する。」
        「命中と同時に乗り込むぞ。」
        「全員戦闘準備っ!!」
        「敵 AMP との格闘戦に備えよっ!」



    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【バネット】
        ん? 高周波音 ?
        「多数の陸戦型戦闘機の動作音を確認っ!!」
        「数、48っ!」

    【サッチ】
        「とうとう来たわねっ!!」
        「鹵獲隊本体だわっ!」

    【サッチ】
        「総員おこしっ!!」

    号令が掛かり、全員が事前に打ち合わせした持ち場についた。
    スポーツカー流用のブリット社のフルバケットシートに6点ハーネスのシートベルトで体を固定した。
    頑丈なシートシステムが、高機動の宇宙艦である事を物語っていた。

    【もっちゃん】
        「まだフルパワーではありませんが発進できますっ!!」

    【サッチ】
        「スタンバイエンジン」

    【もっちゃん】
        「スタンバイエンジン、アイっ!!」

    【サッチ】
        「全員、衝撃に備えてっ!」

    【サッチ】
        「スラスターセンター」(スラスターを中央)

    【もっちゃん】
        「スラスターセンター、アイっ!!」


    【サッチ】
        「レッコー」
        「艦体固定クランプ、爆発ボルト点火っ!」
        「緊急離岸っ!!」

    艦を固定していたクランプが爆破され、噴射していたスラスターにより艦は高度100mでホバング状態を維持した。

    【サッチ】
        「コンバット・オープン」
        「第二小隊、敵を発見次第、各個撃破っ!!」



    鹵獲隊本体

    【鹵獲隊 隊長】
        「なんだとっ!! 離陸するのか ?」
        「想定より速いではないかっ!!」

    【鹵獲隊 戦闘員B】
        「どうします ?」
        「突入しますか ?」

    【鹵獲隊 隊長】
        「まて、今飛び出したら、味方のミサイルに当たるぞ。」
        「あと少しでミサイルが命中する。」

    【鹵獲隊 戦闘員B】
        「来ましたっ!」
        「ミサイルですっ!」

    【鹵獲隊 隊長】
        「間に合ったようだな。」
        「小日本めっ」
        「そのフネは我が人民解放軍が大事に使わせてもらう。 感謝するんだな。」



    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【ジュリア】
        「対水上艦用のドローン、衝突コースっ!!」
        「着弾まで15秒っ!!」

    多々羅大橋をくぐり抜けた4発のミサイルは、ただちにセンサーで艦を捉え、プログラミングモードから自立モードに切り替わり、独自の判断で追尾を開始した。

    【サッチ】
        「ミジップ」(舵中央)
        「フル スラスター トップ スターボード」(右舷スラスター上方最大出力)
        「フル スラスター ボトム ポート」(左舷スラスター下方最大出力)

    【もっちゃん】
        「フル スラスター トップ スターボード、アイ」(右舷スラスター上方最大出力、了解)
        「フル スラスター ボトム ポート、アイ」(左舷スラスター下方最大出力、了解)

    高度100mで艦中央の軸線で左方向に回転させつつ、

    【サッチ】
        「スラスターサイド」(スラスターを右舷側にセット。)

    【もっちゃん】
        「スラスターサイド、アイ」(スラスターを右舷側にセット、了解)


    これにより、右側のスラスター出力が左に勝り、艦は左側にロールをうつ形となった。
    しかし左側のスラスターの出力が低下した事で高度が下がった艦は水面に叩きつけられそうになる。

    その直後、ずさーーー・・・と何かが飛び散らかる音と、サッチの悲鳴がブリッジに響く。

    【サッチ】
        「きゃーーーー」


    もっちゃんは、背後で何が起こったかスグに悟った・・・。
    【もっちゃん】
        片付けなかったうえに、固定しなかったな・・・。
        だから言わんこっちゃない・・・。

    気にはなる・・・しかし、背後で起こった "事件" を振り返って確認している場合ではなかった。


    ミサイルは近接防御網を回避する為に一旦上昇したのち、高根島を回り込みつつ再び低空から幸崎方面から最終アプローチに乗った。
    艦の真後ろ、ようするにピンポイントで亜光速ドライブを封じる意図が見えた。


    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「やはり素人の操艦は無理か・・・。」


    砂まみれになりながらも
    【サッチ】
        「スラスターセンター」(スラスターを中央)

    【もっちゃん】
        「スラスターセンター、アイ」(スラスターを中央、了解)

    艦の高度が20mまで落ちたところで艦は安定を取り戻した。
    しかし、急激な機動による風圧で、艦の周囲に高い水しぶきが立ちのぼった。

    ミサイルは水しぶきで目標を見失ったもののすでに目標の位置を正確に捉えており、水のカーテンに突入し次々と爆発した。




    鹵獲隊本体

    目の前で繰り広げられた大爆発に部隊に歓声がわき上がる。

    【鹵獲隊 隊長】
        「よしっ全隊突入っ!!」

    48機の水陸両用AMPがまだ収まらない水のカーテンに向かって一斉に突撃を開始していく。

    徐々に水が消え、次第にアトランティス艦特有のとんがったシルエットがはっきりしてきた。

    【鹵獲隊 隊長】
        ??? まだ浮いているのか ?
        まぁあれほどの大爆発だ、メインエンジンの損傷は免れまい。
        スラスターを使用しても、この重力下においてあの巨体を長く浮かせることはできないだろう。

    しかし、カーテンの向こうで、僅かな光るものを見た。
    その直後 1機のAMPが左脚を失い、水に沈んでいく。



    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【おみくじ】
        「1機撃破っ!」

    カーテンは消え、ホバリングを続ける全長270mの巨体が目の前に現れた。
    元は駆逐艦として建造された宇宙艦で、現在のアトランティス艦体としては比較的小柄の部類に属するが宙に浮かぶとさすがに思っていたより巨大に思える。
    スラスターを噴射している為に沸騰した海面からは水蒸気が立ち込めていた。



    鹵獲隊本体

    【鹵獲隊 隊長】
        む、無傷だとっ!?
    「どういう事だっ!?」


    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦


    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        水しぶきとはいえ音速で飛行するミサイルにとってはコンクリートの壁と同じ。
        突っ込めば爆発する。
        まさか、その為にわざと水面ギリギリに降下させてその圧力で水しぶきのカーテンを作ったと言うのか ?
        しかも支援AIもなしにでか !?


    【フクちゃん】
        「ECCMアプリを転送します。使ってください。」

    【ヒデコ】
        「遅いっ!!」
        「何やってんだよ。 このメガネデブっ!」

    【フクちゃん】
        「ゴメン。 こっちも手がいっぱいで・・・。」

    【ヒデコ】
        「言い訳するなっ!」

    【ヒデコ】
        「ECCM展開っ!!」

    フクちゃんが現状のECMを分析し、そのECMを無力化するECCMアプリを構築したのであった。
    その効果はすぐに現れた。

    【ヒデコ】
        「さすがはフクちゃ・・・ぃやメガネデブ」
        あとで少しくらいは褒めてあげてもいいかな。

    【セッちゃん】
        「ECMを無効化しつつあるわ」
        「第一小隊との通信が回復しますっ!」




    【艦内:サッチ】
        「サダッチ ???」
        「ねぇ聞こえる ?」

    【大九野島:サダッチ】
        「聞こえるわ」

    【大九野島:ナナ】
        「通信できるの ?」

    【大九野島:サダッチ】
        「回復したようね。」

    【艦内:サッチ】
        「そちらの状況はどう ?」

    【大九野島:サダッチ】
        「とくに問題はなし。」

    【艦内:サッチ】
        「??? えっ?   こちらからは戦闘しているように見えるけれども・・・。」

    【大九野島:サダッチ】
        「ぇえ、戦闘中よ。」
        「でも問題なし。」
        「万事想定の範囲内で推移しているわ。」
        「委員長と代わるわね。」

    【大九野島:ナナ】
        「そちらはどう ?」
        「サダッチの耳によれば、そちらはもうドッグを離れたって言ってるわ。」

    【艦内:サッチ】
        「そうなのよ。」
        「只今、絶賛、襲われ中。」

    【大九野島:ナナ】
        「こちらも今、たて混んでいるから支援はできないわよ。」

    【艦内:サッチ】
        「こちらは大丈夫よ。」
        「第ニ小隊を回収して近接防空を担当してもらっているわ。」

    【大九野島:キヨちゃん】
        「だれと話しているの ?」

    【大九野島:サダッチ】
        「サッチよ」

    【大九野島:キヨちゃん】
        「通信回復したのね ?」

    【大九野島:サダッチ】
        「彼らは ?」

    【大九野島:キヨちゃん】
        「ぇっ!?」
        「ああ、あの正体不明の新型陸戦の事 ?」

    【大九野島:キヨちゃん】
        「全機破壊したわ。  生存者なし。」

    【大九野島:サダッチ】
        「わかったわ。 お疲れ様。」

    【艦内:サッチ】
        「もうすぐ、航空機の編隊が襲来してくるわ。」
        「こちらは、直接そっちへ行くので、回収される準備をしておいてね。」
        「燃料が無いので、滞空時間は短いわよ。」

    【大九野島:ナナ】
        「どれくらい ?」

    【艦内:もっちゃん】
        「5分」

    【艦内:サッチ】
        「だそうよ。」

    【大九野島:ナナ】
        「5分かぁ・・・。短いわね。」
        「わかったわ、撤収準備して待ってるわ。」

    【艦内:サッチ】
        「了解。」



    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【ヒデコ】
        「こちらの48機、依然として接近中っ!!」

    【なるみ】
        「こっちもよ。」

    【サッチ】
        「その航空機の種類は判るの ?」

    【なるみ】
        「んーーー」
        「結界通過時のシルエット識別パターンからして、殲(せん)20と殲31ですね。」

    【ヒデコ】
        「こちらも同様の組み合わせね。」
        「おそらく殲31がこちらを足止めする主軸で殲20がその上空援護といったところでしょうか。」

    【トミちゃん】
        「呉のイージス巡洋艦の対空レーダーが機能しています。」

    【サッチ】
        「ぇっ!? そうなの?」

    【サッチ】
        「・・・」        
        「しかし、彼らは撃てないわ。」

    【レイチェル】
        「どうしてよ ?」

    【サッチ】
        「"殲" 部隊の目的は、このフネである事は明白。」
        「まだドックに固定されていた間は、日本国籍の造船会社の所有なので、法律に基づき日本人の資産を保護する目的で防衛行動ができるの。」

    【セッちゃん】
        「しかし今は私達がフネを動かして、ドックから離れて空中にいます。」

    【アン】
        「それが ?」

    【サッチ】
        「所有権が変わったのよ。」
        「アトランティスと日本国との間では平和条約と相互防衛協定が締結されてはいるけれど、このフネに限っては、公式にはアトランティス艦隊は所有権を放棄した。」

    【セッちゃん】
        「つまり、当艦は正確にはアトランティス艦体には属していない。」
        「よって日本は当艦を守る義務がない。」

    【レイチェル】
        「そんな・・・。」

    【アン】
        「クルーは日本人でありアトランティス人なんでしょ ?(私はアメリカ人だけど)」
        「どうして同胞のピンチをたすけられないの ?」

    【セッちゃん】
        「政治というものはそういうものよ。」
        「ヘタに首を突っ込めば変なところに飛び火して大火事になってしまいかねない。」
        「だからあの日本海軍のイージス艦は、とりあえずこのフネは守れないけれど、その周辺施設には被害が出ないように牽制しているわけよ。」

    【レイチェル】
        「条約ってあんまりアテにできないのね。」

    【サッチ】
        「それって対馬戦争で日本を見捨てたアメリカさんの言えるセリフなの ?」

    【レイチェル】【アン】
        「スイマセン・・・お恥ずかしい限りで・・・。」

    【オカちゃん】
        「こらこら、アメリカ人をイジメないの。」
        「日本を裏切ったのは、彼女たちじゃないんだから。」

    【サッチ】
        「ごめんごめん。」
        「そうよね。」
        「対馬戦争と言う苦い過去を乗り越えたからこそ今の私達が居る。」
        「過去をいつまでも否定しつづけたら今の自分達の存在をも否定する事になるわね。」


    【もっちゃん】
        「って言うか、進路どうすんのよ!!」

    【サッチ】
        「ヒコーキが来るまでに、あの大九野島まで間に合う ?」

    【もっちゃん】
        「無理。 絶対無理だよ。」

    【フクちゃん】
        「今、外部の光学センサーの設置が終わりました。」
        「これで360度全周の視界は確保できるはずです。」

    【サッチ】
        「ありがとう、よくやったわ。」

    【レイチェル】
        「これでデッキのハヤブサは、目の役割から解放される訳ね。」

    【まっちゃん】
        「そうよ。」
        「余裕がでた分、演算装置の分散比率をもうちよっと攻撃と防御に振り分けられるから迎撃がもっと早くなるわよ。」

    【まっちゃん】
        「もっちゃん、これ被って。」
        「精密操艦に必要だわ。」

    この船は、最新ではあるが艤装途中だったため、航法システムは最小限のものでしか備えられていない。
    そこでフクちゃんが調整した画像をまっちゃんが用意したVRヘッドセットによって艦外の視界を得る、かなり昔に流行ったオンラインゲームのような操艦システムを急ごしらえで作り上げたのだった。

    【もっちゃん】
        「ぉおーーー見える♪ 外の景色が超見えるぅ。」

    【まっちゃん】
        「とうぜんよ、フクちゃんが調整した画像処理なんだから。」

    【サッチ】
        「まっちゃんもよくやったわ。 有難うね。」

    【まっちゃん】
        「ぃえぃえ、フクちゃんに比べて、私はただ細工しただけのようなものですから。」

    【まっちゃん】
        「これ、主要なブリッジ要員の数を揃えてありますので、各自装着をお願いします。」

    と、VRヘッドセットをスタッフに配布した。
    それ以外の要員は、前面に仮設されているモニターで外の景色を見ることになる。




    シナ空軍 "殲" 航空隊

    【第一波 リーダー】
        「リーダーから各機」
        「そろそろ戦闘空域に到着する。」

    【第一波 パイロットB】
        「隊長、そろそろ長距離対艦ミサイルが命中している頃ですね。」

    【第一波 リーダー】
        「そうだな。」
        「今頃、鹵獲隊はフネの占拠にとりかかっている頃だな。」
        「我々の任務は占拠に成功した鹵獲隊の上空支援で、奪還する為に出動してきた敵AMPを空から叩くことだ。」

    【第一波 パイロットB】
        「小日本のヤツら今頃大騒ぎしているぞ。」

    【第一波 リーダー】
        「ああ、だが気は抜くな。」

    【第一波 パイロットC】
        「隊長っ!」

    【第一波 リーダー】
        「どうした ?」

    【第一波 パイロットC】
        「対空レーダーの照射を受けています。」

    【第一波 リーダー】
        「レーダーだと ?」
        「なにか他の電波の間違いでは ?」

    【第一波 パイロットC】
        「間違いではありません。」
        「コンピュータの分析では日本海軍のイージス巡洋艦のものです」

    【第一波 パイロットB】
        「冗談はよせ。」
        「この世の中、ステルスを捉えられるレーダーなんか存在しないぞ。」

    【第一波 リーダー】
        「心配するな。」
        「もし本当にレーダーに捉えられていれば、とっくにミサイルが飛んできている。」
        「仮にレーダーを照射しても、我々の姿を捉えられないから攻撃を受けないのだよ。」

    【第一波 パイロットB】
        「そうだぜ。」
        「この世界最先端のハイテク戦闘機がそうかんたんに見つかるものか。」

    【第一波 パイロットC】
        「そ、そうでしたね。」

    【第一波 リーダー】
        「よし、おしゃべりはここまでだ。」
        「瀬戸内海に入るぞ。」
        「各機マスターアームスイッチ On」

    【第一波 パイロットC】
        「了解、マスターアー・・・」

    復唱が途中で途絶え、不信に思った僚機がパイロット Cの機体を見ると、コクピット内が鮮血により真っ赤に染められていた。

    【第一波 パイロットD】
        「おぃっどうしたっ!!」
        「大丈夫か !?」

    呼びかけするも、応答なくそのまま高度を下げて山腹に衝突して火の玉となった。

    【第一波 パイロットD】
        「くそっ、C がやられたぞっ!!」
        「どこからの攻撃だ ?」

    また1機、パイロットがヤラれ、操縦士を失った僚機が地面に墜ちていく。

    【第一波 パイロットB】
        「見えた、ターゲットのフネだ。」
        離陸したのか ?

    とおもった瞬間、そのフネから発せられた小さな赤外線を感知してアラートがコクピット内の響いた。
    もう一機、僚機のコクピットが真っ赤に染まり、ゆっくりと姿勢を崩して高度を下げていくのを見た。

    【第一波 リーダー】
        「全機散開っ!!」
        「攻撃はあのフネからだ。」

    【第一波 パイロットB】
        「非武装ではなかったのか ?」
        「パイロットのみを恐ろしく正確に撃ちぬいてくるぞ。」
        「鹵獲隊はどうした ?」

    【第一波 リーダー】
        「まだ海上にいる。」

    【第一波 パイロットB】
        「強襲に失敗したのか?」
        「輸送艦は ?」

    【第一波 パイロットE】
        「ターゲット前方の小さな島で、敵のAMPと交戦中です。」
        「輸送艦が足止めくっているようです。」

    【第一波 リーダー】
        「くそ、作戦が漏れていたのか ?」
        「奇襲は完全に失敗している。」
        

    【第一波 パイロットB】
        「どうしますか ?」
        「ターゲットが離陸してしまって、我が方のAMP隊がとりつけませんよ。」

    【第一波 リーダー】
        「まだチャンスはある。」
        「殲31隊には対艦ミサイルを装備している」
        「本来は迎撃に出てきた日本海軍のフネを沈めるために用意したものだが、あのフネを止めることにも使えるだろ。」

    【第一波 パイロットB】
        「しかし、丸腰だったターゲットから発砲を受けています。」
        「おそろしく正確ですよ。」

    【第一波 リーダー】
        「できるだけ低空を飛ぶんだ。」
        「島影をうまく利用して接近すれば撃ち落とされないだろう。」

    【全機】
        「了解」






    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【おみくじ】
        「くそ、あいつら、高度を下げて島影に逃げやがった。」

    【ジョージ】
        「こっちは後部デッキ。」
        「敵陸戦がアンカーを打ち込んできた。」
        「無理にでも乗り込んでくるつもりらしい。」
        「目下迎撃中。」

    【サッチ】
        「第一小隊を回収すればいそいで離脱しますから。」
        「みんな、それまでなんとか持ちこたえて。」


    大九野島 西海岸

    【ナナ】
        「左上空に対戦車ミサイル、全員よけてっ!!」

    第一小隊のハヤブサは急降下してくるミサイルを散開して躱す。
    誘導弾のため散開しても狙った目標を追尾するが、急激な回避機動にはついていけずに砂地に刺さって爆発した。


    【サダッチ】
        「まさか対戦車ヘリまで用意していたとは・・・。」

    【エルメス
        「WZ-10の後継モデルのWZ-12(※4)かっ!?」

    【ナナ】
        「なにそれ?」

    【エルメス
        「イタリアのアグスト社が開発したマングスタをベースに再設計されたWZ-10をさらに改良を加えた機体です。」
        「WZ-10より隠密性が大幅にアップしているようです。」

    【サダッチ】
        「山影に隠れたか・・・。」

    とつぜん、ヘリが潜んだと思われる山の背後からミサイルが飛び出してきた。
    【アルビータ】
        対戦車ミサイルですっ!」

    【サダッチ】
        「機体を完全に隠した状態で撃てるのか ?」

    【ナナ】
        「あれのせいじゃない ???」

    ナナの駆るハヤブサが指さした方向に小型の偵察用ジャイロが滞空していた。

    【サダッチ】
        「あれかっ!?」
        「いつの間に・・・。」

    【カンピオーニ】
        「あんなのがウロウロしてるんじゃ、山の向こうから狙われて当然って訳ね。」

    【ナナ】
        「どうする ?」


    と聞いた瞬間には、
    【サダッチ】
        「えぃっ!!」

    ナノマシンで空中に誘雷路を構築すると、一気に高電圧を流し込み、偵察用ジャイロは動きを止めて海へ沈んだ。
    知らない人が見るとカミナリで攻撃したように見えるはずだ。

    【サダッチ】
        「これでうざいハエはいなくなったわ。」

    【ナナ】
        「手を出すの早いわね・・・。」

    【サダッチ】
        「戦場においては先手必勝よ。」
        「躊躇したら負けだわ。」

    【アグスティナ】
        「あのヘリは私が墜としてくるからちょっとまってて。」

    アグスティナのハヤブサがヘリが隠れた山を駆け上がっていく。


    【アルビータ】
        「自分と同じ名前のヘリをコピーしたものが飛んでいるのが気に食わないのよ。」

    【カンピオーニ】
        「ヘリのパイロットさん・・・死ななきゃいいのだけど・・・。」

    【アルビータ】
        「運が悪かったね・・・。」

    【エルメス
        「あなた達はどっちの味方しているよ。」

    【アルビータ】【カンピオーニ】
        「もちろん、弱い者の味方♪」

    アグスティナの駆るハヤブサは、あっという間にヘリが隠れた山の頂上へ駆け上がった。
    ハヤブサに見つかったWZ-12は、機首の20mmチェーンガンで牽制するが、シールドがそれを遮る。
    銃撃が効果が無いとわかると、今度は胴体内に収納していた対戦車ミサイルを放ってきた。
    アグスティナのシールドはサークル型シールドで、機銃程度なら防御はできるが、さすがに大火力となると防ぎきれなくなってくる。

    シールドは3重構造となっており、表層シールドが決壊しても、次の第2層以下が表層へ押し出される。
    そして最下層が新たに生成される事で、防御効果を発揮する事で絶えず消耗していくシールドを維持している。
    ただ、エネルギーシールドは、熱エネルギー系の兵器に対しては、そのようにして効果的に防御力を発揮するものの、運動エネルギーを使用した破壊には防御が維持しきれなくなる。

    アグスティナのシールドは爆風により第2層までを失い、警告アラートが出された。

    【アグスティナ】
        一気に2層まで吹き飛んだ・・・成形炸薬か !?


    【アルビータ】
        「ぁーあ、何やってんだろうねぇ。」

    【カンピオーニ】
        「ちょっと油断したわね。」

    アグスティナは、持っていたアサルトを捨てると腰の対装甲刀(※2)を抜刀した。
    アサルトの口径は12.7mm。
    どう考えてもWZ-12の装甲は破れそうもなかったからだ。

    一方で、シールドを傷つけたとは言え実質無傷のハヤブサを見たWZ-12のパイロットはとっさに山から離れようとした。
    分厚い防弾板に守られ、あらゆる機関銃に対して抵抗できる自信はあったが、ドでかい対装甲刀を見ると、さすがにヤバそうな気配を感じたのだ。
    しかし、

    【アグスティナ】
        その程度の間合いでは、届くんだよ。

    シールドで足場を築き、それを踏み台にジャンプすると、容易にWZ-12に急接近した。

    ガキン

    金属が接触して破断する鈍い音が響いた。
    ローターシャフトは見事に裁断され、機体から分離されたローターは、一瞬竹とんぼのように高度を上げたが徐々に回転しながら山へ流されて行った。

    一方、揚力を失ったWZ-12本体は、そのままパイロットを乗せて海に沈んだ。

    【カンピオーニ】
        「どうして、ひとおもいにコクピット狙い撃ちしなかったのよ。」

    【アグスティナ】
        「だって、人を突き刺すのはゴメンよ。 夢で出てきたら怖いもん。」
        「だから、シャフトを狙った。」
        「一番弱い部分だから切るのラクチンだしね♪」


    サダッチの耳が周囲を探索し、新たな脅威の存在をチェックした。
    【サダッチ】
        「あっちの方、どうやら取り憑かれたようよ。」

    【ナナ】
        「サッチのほう ?」

    【サダッチ】
        「ぇえ。」
        「善戦しているけれど、数が多いわ。」
        「その上、戦闘機まで出てくる始末だわ。」

    【ナナ】
        「ぁあ、サッチきから聞こえるこの爆音は、ヒコーキなの ?」
        「ヘリの音が騒々しくでよく判らなかったわ。」
        「で、支援できる?」


    【サダッチ】
        「この距離ではまだ無理よ。」
        「このメンバーでロングレンジライフル持っている子たちは居ないし。」
        「私達のアサルトでは届くかもしれないけれど、届くのと命中させるのとではまた意味が番うし。」

    【キヨちゃん】
        「でもまぁ、第二小隊のメンバーならなんとかなるでしょ。」

    【ナナ】
        「そうね。」

    【ナナ】
        「さて、コッチは新手の陸戦よ。」
        「迎撃するわよ。」



    鹵獲隊本体


    【鹵獲隊 戦闘員B】
        「高度が低いおかげで一部のチームが後部にたどり着いたようです。」

    【鹵獲隊 隊長】
        「よし、われわれも遅れとるな。」

    【鹵獲隊 戦闘員C】
        「高度を維持できないと言うのは何らかのトラブルを抱えているのでは ?」

    【鹵獲隊 隊長】
        「油断はするな、高度は上がっていなくとも、少しずつ前へ進もうとしている。」

    【鹵獲隊 戦闘員B】
        「61398部隊が事前にクラッキングして解錠済みとされるデッキは、あの右方向に見える艦尾のエンジンナセルの継ぎ目の部分です。」

    【鹵獲隊 戦闘員C】
        「見えました。 ご丁寧に CAUTION と黒黄のマーキングがされてますね。」

    【鹵獲隊 隊長】
        「あのハッチは吹き飛ばせるか ?」

    【鹵獲隊 戦闘員B】
        「無理です、装甲ドアです。」
        「対艦ミサイルの直撃にも耐えます。」
        「しかしいちど内部に入れば迎撃される心配はありません。」

    【鹵獲隊 戦闘員C】
        「わたしが取り付いて外部から開閉ノブを回します。」

    【鹵獲隊 隊長】
        「判った。」
        「残りは、全員で、ヤツ(戦闘員C)を援護するぞ。」

    【鹵獲隊 全員】
        「了解っ!!」




    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【レイチェル】
        「ジョージが押されてるわ、援護をまわせない ?」

    【サッチ】
        「ごめん、こっちも人出が足りないの ?」
        「もう無理 ?」

    【ジョージ】
        「そろそろ限界・・・。」
        「集中攻撃受けてて、シールドで防御するのが精一杯なの。」
        「さすがにサークルで大量の実体弾を防ぐのは無理があるわ。」

    【オカちゃん】
        「わかったわ。」
        「人はだせないけれど、識神をよこすわ。」
        「それで凌げるかしら ?」

    【ジョージ】
        「了解、ありがとう感謝するわ。」


    【アン】
        「左舷後部の第3亜光速ドライブデッキに侵入警報発報っ!!」

    【まっちゃん】
        「あれ、おかしいよ。」
        「そこの補給用ハッチは今回は未使用なのでロックされていた筈よ。」

    【まっちゃん】
        「ちょっとまって、今確認してみるわね。」

    艦内ネットワークにダイブしてアクセスログを解析していたところ、補給担当者のIDでロックが解除されていたことが判明した。
    ドアの開閉記録では数十秒前に外側から開かれている事を示唆するログも見つかった。

    【まっちゃん】
        「外側から開かれてますね。 そこから侵入されたみたい。」

    【サッチ】
        「入ってきちゃったものは仕方ないわねぇ。」
        「帰って・・・って言っても帰ってもらえなさそうだし。」

    【サッチ】
        「とりあえず、外のは閉じちゃって、しばらく開けないようにロックしてよ。」

    【まっちゃん】
        「いいの ? 侵入者はどうするの ?」

    【サッチ】
        「なので、まずは、とりあえず退路を断っちゃいます。」
        「そのうえで殲滅しましょう。」

    【サッチ】
        「動向は?」

    【まっちゃん】
        「入口付近で集合しています。」
        「体制を編成してコントロールに攻めてくる気かと。」

    【サッチ】
        「それなら、とりあえず奥に進むハッチも閉じとこうか。」

    【まっちゃん】
        「もうやりました。」
        「対オロチ戦想定の装甲ハッチですからそう簡単には突破できないでしょう。」

    【セッちゃん】
        「誰がやっつけに行くの ?」
        「人居ないよ。」

    【サッチ】
        「とりあえず、しばらくそこで大人しくしてもらおうかしら。」
        「さきにジョージと、外のヒコーキをなんとかしつつ、第一小隊を拾いにいかなきゃ。」

    【セッちゃん】
        「アイツら、暴れだしたらどうするの ?」
        「ガッコーまで連れて帰るわけには行かないでしょ。」

    【サッチ】
        「低高度の惑星面境界軌道に入ったら、外のハッチを開けてポイする。」
        「燃え尽きて地面には破片も届かないわ。」

    【アン】
        「ぁ、悪魔だ・・・。」

    【サッチ】
        「そりゃもちろん悪魔ですから♪」


        (※1)・・・環刀
            太古の昔、日本刀と中国の刀をモデルに環刀は開発されたが、鍛造技術を知らなかった当時の朝鮮民族は、中国から伝わった鋳造で成形して日本刀に近づけようとした。
            しかし大陸での戦においては環刀は戦力としてつかいものとはならず、倭国から日本刀を輸入する事で急場をしのいでいた。
            統一朝鮮軍が建造している AMP用の環刀は古来の伝統を引き継いで、鋳造技術で製造されている。
            現代において鍛造技術の知識がなかったわけではなく、その技術が無いために日本刀の品質がコピーできなかったのが大きな理由であった。
            ただ、AMP用の環刀も炭素の含有量を多くしたりと、日本の造船技術からコピーした最先端の材料工学を駆使して建造されている。
            日本刀とは比較にならないほど精度は悪いが量産性は非常に高く且つ安価であり大量配備に向いている。

        (※2)・・・対装甲刀(日本刀)
            日本の刀ももともとは大陸から伝来したものではあったが、その建造に必要な鉄鉱石が日本国内では採取できなかった為、国内で採取が可能な砂鉄を使用していた。
            砂鉄を使用した製鋼は鉄鉱石より低温となったことが幸いして日本独自に進化し、世界的も最高純度の鋼を生産することができた。
            材料の関係上鋳造できなかった日本は鍛造と言う鋼を鍛える工法を発展させさらにカーボンナノチューブの含有量を多くし、さらに精度を高めたものが 陸戦専用の対装甲刀と呼ばれる鍛造刀で、アトランティス陣営、アンドロメダ陣営含めて、実剣としては両銀河中で最高度の切れ味を誇っている。
            約3ヶ月間、1万トンクラスの鍛造ハンマーを使用して鋼を鍛えれた対装甲刀は、戦車程度の装甲であれば、バターの様に両断する事が可能である。
            しかし、製造期間とコストが非常に高く、かつ設備が特殊な為に少量しか生産できない欠点を持っているものの、この高価な刀は帯締学園のすべて機体に標準兵装として配備されている。
            ちなみにハヤブサ1機と対装甲刀は1本は、だいたい同じ価格らしいとの噂。


        (※3)・・・スモークディスチェンジャー
            発煙弾発射機とも呼ばれ、敵の視界を奪い味方の行動を支援する目的で使用する。
            しかし通常光学センサーでは視界を奪えるが、赤外線や紫外線など、可視光域外での波長を捉えるセンサーでは察知される欠点もある。
            ただ近年は発煙弾の中に様々な周波数帯の波長をランダムに放射する光学ジャミング発信機を織り交ぜることで、効果的な目眩ましができるタイプも存在している。

            ハヤブサがスモークの中でも逃走するブーメランの姿を追える理由は、帯締の陸戦の頭部装甲には、目が赤く光るように見える発光可能な部位があり、実はこれはIR-LEDサーチライトで、赤外域波長を放出して、その反射波をセンサーで捉えやすくするための索敵機能である。
            一部の機体では青白く光るタイプもあり、これは紫外線波長にて索敵しやすいようになっている。
            たいていは、どちらかのサーチ機能を優先して使用するが、稀にターニャの機体に搭載されているオッドセンサーのように、左右別々真逆の性質の波長を放出できるものもある。
            索敵用サーチライトは自身の位置も知られる欠点があるので、そんな頻繁に使用するものではなく、それが理由で帯締以外の陸戦や、諸外国の AMP には基本的に搭載されていない機能である。


        (※4)・・・WZ-12
            シナ陸軍が、イタリア、アグスト社が開発したマングスタ対戦車戦闘ヘリの技術を独自に活用してWZ-10を開発した。
            WZ-12はその後継モデルでエンジンが強化された事で機動力が大幅に向上している。
            外部装甲は日本の商社が違法にシナ向けに輸出した炭素複合強化繊維の製造装置にて構成され防御力も大幅にアップした。
            しかし人種に起因する性格の特性から装置を精密に運用するには至らず、出来上がってくる素材精度はそんなに高くはない。

            機体デザインはステルス性を考慮したものの、殲シリーズのステルス戦闘機同様に、日本軍のレーダーにはきちんと映っており、そんなに高度なステルス性を求めて建造されたものではないようだ。
            しかし殲シリーズと共に、自国製のレーダーに対しては優れたステルス性能を発揮しており、シナ西部の独立係争地帯や、南シナ海、アフリカや南アメリカ大陸など、自国が輸出した安価な中国製兵器を相手に戦闘を行うケースにおいてはこのステルス機能は非常に有用で、各方面の戦線で有利に戦闘を繰り広げている。

 

 

 

 

 

 

 

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