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アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-6-4】なのましんは魔法でもない!!

なのましんは魔法でもない!!

【1-6-4】



    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    ジョージは後部デッキに侵入してきた AMPを相手に善戦していたが、実体弾防御を苦手とするサークル型シールドでは圧倒的な火力を相手にさすがに押され気味だった。

    通常、通路には侵入してきたオロチを想定した防御隔壁が設置されているが、後部デッキは一般乗降用デッキとして用いられており、平均身長が5mもあるオロチが自由に動けるにはあまりに窮屈なため、このデッキでの対オロチ戦はさほど想定はされていなくて、そのために隔壁の防御が弱い側面があった。
    シナ軍 AMP はその防御の弱さをついて侵入してきたのだった。

    【ジョージ】
        「敵の数は、あと6機か・・・。」
        「さすがにしんどいわね。」
        「しかし、ここを突破されると機関室が制圧されてしまう・・・。」

    敵の AMPは最初から、このフネを修理する算段で派手に撃ちまくるが、無傷でフネ持ち帰る指示を受けている訓練生たちはどうしても敵に対する攻撃が遠慮がちになっていた。

    しかも、ジョージ機が使用しているアサルトライフルは、7.62mm。
    狭い通路で戦うにはちょうどよい火力ではあるが、重装甲で12.7mm機銃を放ってくる敵にはやや火力が足りていないうえに、弾薬もほぼ底をつきかけていた。

    【ジョージ】
        「残数はほぼゼロか・・・。 補給はなし。」
        「格闘戦は苦手だし・・・。 これはヤバイなぁ・・・。」

    ジョージのハヤブサが弾薬切れになった事は、突然発砲が止んだ事で、侵入者にも気づかれていた。

    銃を撃ちながら前進してくるブーメランにシールドで防御するが、実体弾を防御するにはあまりに効率が悪くみるみるナノ・サブスタンスが減っていく。
    コレクタータンクに回されるナノ・サブスタンスを再利用してもシールドを維持できるのは、あと1分が限界・・・。

    ぎりぎり耐えていたが、とうとうジョージのナノマシンは底が付きシールドが消失してしまう。
    しかし、敵の銃撃も止んだ。

    【ジョージ】
        敵も弾切れなのか ?

    と一瞬考えたものの、あちらには潤沢な予備弾薬が用意されていた。
    携行ラックから新品のマガジンを取り出し交換をすると攻撃を再開して来た。

    【ジョージ】
        「もうダメか・・・。」
        弾にあたったら痛いんだろうなぁ・・・。

    と覚悟を決め、目をつぶったが、いくら待っても覚悟していた痛みが来ない。

    【ジョージ】
        痛くない ?
        即死したのか ?
        もう天国なのか、いや悪魔が天国にいけるわけないか。
        ここはどこだ ?

    激しい銃撃音で、正気を取り戻したジョージが見たものは、2機のハヤブサだった。
    物理シールドに特化した呪符型シールドを展開し、ジョージの機体を敵の斉射から守っていたのだった。
    識神ってハヤブサの事だったの ?

    よくよくハヤブサを観察すると、ナノマシン素材である事を示すヘキサゴン形状の部材がその機体がナノマシン由来で構成されている事を示していた。

    【ジョージ】
        「機体のシリアル番号を読み取ると、浅野節子機 ?」
        「セッちゃんの機体をコピーした識神なの ?」
        そっか、確かに彼女の特性は呪符型だったわね。

    識神から、ナノ・サブスタンスの予備を受け取り枯渇したナノマシンの補給を開始した。

    【ジョージ】
        「有難う。」

    ジョージの感謝に対して、2匹の識神は軽く会釈で返すと、
    対装甲刀を抜刀し狭い通路を駆け抜け一気に敵の陣形の中へ飛び込んでいった。


    【ジョージ】
        「速っ!」
        なにこれっ!
        本人が直接操縦している時より全然戦闘力が高いじゃないのよっ!!
        これが、あのホンワカ大人しいセッちゃんの識神の能力なの ???
        しかも2匹同時にコントロールしているというの ?

    次々とブーメランを薙ぎ払っていくセッちゃんの識神に驚いた。
    操縦実習では、どちらかといえば運動神経があんまりよくないセッちゃんはハヤブサの操縦は得意ではなかったからだ。

    【ジョージ】
        「そっか、識神の能力は術式の精度によるものが大きい・・・。」
        「セッちゃんナノマシンの展開能力はクラスの中でも優れた方だった・・・。」
        「だから、あのような常人離れした能力を発揮できるって訳ね。」

    識神が最後のブーメランを取り逃し、その敵はジョージ機に突進した。

    【ジョージ】
        「動けない私が手負いだと思ったの ???  バカにするなっ!

    シールドを再展開した。
    マシンガンを乱射しながら突進してくるブーメランに、腰を低くし抜刀の構えに入る。

    シールドの手前までやって来たとき、対装甲刀のラッチが解除され、刀はフリーの状態に移行すると、それを力任せに振り抜いた。

    胴体を裁断され崩れていくブーメラン。
    廊下の全面にパイロットの鮮血が飛び散りハヤブサにも返り血が降り注いだ。

    その様子を見ていた2匹の識神が、ジョージ機によくやったとサムアップすると、形状崩壊を起こして霧散していった。

    【ジョージ】
        「こちらクリスティーナ(ジョージ)。」
        「後部の連中は殲滅した。」
        「まぁ、ほとんどがセッちゃんの識神の手柄だけどね。」

    【ジョージ】
        「セッちゃん・・・」

    【セッちゃん】
        「なに ?」

    【ジョージ】
        「助かったよ。」
        「ありがとう。」

    【セッちゃん】
        「ぃえぃぇ、おそまつさまでした。」

    のんびりとした言葉からして、やはりあの2匹の識神を制御していたとは未だに信じられないジョージだった。

    【ジョージ】
        ・・・この血、誰が掃除するんだろ・・・。



    【トミちゃん】
        「ジョージのところは片付いたの ?」

    【ジョージ】
        「ええ。」

    【トミちゃん】
        「じゃ、こっち・・・んーーーと、つまり左舷の飛行甲板に来て防空砲撃戦に参戦してくれる ?」

    【ジョージ】
        「でも私のエネルギー系の能力ではエネルギーは大気に吸収されちゃうわ。」
        「出力を上げようにもナノマシンに限りがあるし。」

    【トミちゃん】
        「大丈夫よ。」
        「こっちにエルコン30mm対空砲が転がってるわ。」

    【ジョージ】
        「こ、転がってる ?」

    【トミちゃん】
        「今朝、オスプレイ2が航空燃料を積んだタンクローリーを甲板に降ろしてったんだ。」
        「他にも、ロシア製の空対空ドローンも含まれてて、これらまだ片付けていなくて・・・。」
        「一応、艦の離陸で振り落とされないようにワイヤーで固定はされているけれど、万一被弾したら爆発しちゃうので、こっちに飛んでくる敵のヒコーキを追い払って欲しいの。」

    【トミちゃん】
        「エルコン機銃はその荷物の中に混ざっていて、私も今それを使ってるわ。」

    【ジョージ】
        「んーーー・・・。。」
        「判った、今行く。」

    【トミちゃん】
        「ヨロシク。」


    大九野島 西海岸


    【サダッチ】
        「ナナっ!! 後ろっ!!」

    ナナ機が振り返ると、背後に回って銃を構えたブーメランがモニターに映しだされた。
    とっさに、呪符式シールドを展開し、機銃の掃射に耐えた。
    着弾に伴う砂塵が舞う中、対装甲刀を手にしながらもう一個、別の呪符式シールドを地面と水平に展開させると、それを足場にして防御中のシールドを飛び越して、ナナを狙ったブーメランの背後に着地して真っ二つに裁断した。

    【ナナ】
        「ありがとうサダッチ。」

    【サダッチ】
        「いいってことよ。」

    【アルビータ】
        「カンピオーニ君が苦戦しているわ。」

    ナナが確認すると、カンピオーニ機と4機のブーメランとが砂浜から離れたテニスコート付近で交戦中だった。
    この付近は堤防になっており、落ちると泳げないハヤブサに取っては敗北を意味する。
    しかし、アサルトで銃撃するにはカンピオーニ機と敵機とはあまりに接近しすぎていた。

    【ナナ】
        私の腕前では、この距離から狙うと彼に当ちゃうわね・・・。
        「ならばっ!!」
        ナノマシンで新しい術式を構築し、1枚の呪符を完成させると、ナナに背を向けている一機に対して、呪符を貼り付けた。

    【キヨちゃん】
        「しょーーっ。」
        「よくあんな距離、呪符を飛ばせるわねっ!!」

    ブーメランに呪符が接着した事を確認すると、新しい術式を追加入力し安全装置を解除した。
    【ナナ】
        「破っ!」

    ブーメランの上半身が跡形なく吹き飛んだ。
    1対3となった事で戦局がカンピオーニに有利に傾いた。
    ハヤブサの能力であれば、1機で3機を相手にできる数だ。

    【カンピオーニ】
        「ありがとう学級委員長っ!」

    【サダッチ】
        「アナタ、そんな術式使えるのなら、飛び道具なんていらないじゃないっ!!」

    【ナナ】
        「なに言ってるのよ、ナノマシンは魔法じゃないんだからっ!!」
        「爆発成分を生成するに必要な素材が付近にないと、さっきのように粘着爆弾は作れないわよっ!!」

    【エルメス
        「ナナ、おおかたの敵はやっつけました。」

    【ナナ】
        「わかったわ。」
        「各自、ナノマシンと機体バッテリーの残量をチェックしておくように。」

    【サダッチ】
        「次、攻めてきたら持ちこたえられないかもしれませんね。」

    【キヨちゃん】
        「あら、おじけづいたの ?   副委員長。」

    【サダッチ】
        「何をバカを言うのかしら。」
        「貴女が後先考えずにナノマシンを無駄に浪費するから残量チェックをこまめにチェックしているのでしょっ!」

    【キヨちゃん】
        「何っ!? 在庫が残り少ないのは私のせいだと言うのっ!!!」

    【アグスティナ】
        「まぁまぁ、喧嘩しないの。」
        「キヨちゃんも危ないから後先考えずに飛び出したらダメだよ。」

    【サダッチ】
        「いゃ、アンタにそれをいう権利があるのかね ???」

    【アグスティナ】
        「ぇぇーーーそれ何よ ?」
        「それってなんだか私も猪突猛進娘みたいに思われるじゃないの ???」

    【カンピオーニ】
        「さっきヘリ追いかけて行ったじゃない・・・。」

    【アグスティナ】
        「なっなんですってぇぇ!!」

    【アグスティナ】
        「君ね、そんな昔の事をほじくり返すわけ ?」
        「ははーーん・・・女子にモテないタイプね。」

    【カンピオーニ】
        「ぃや、10分前の話だけど・・・。」

    【アグスティナ】
        「ウルサイっ!!」

    ガンっ!!

    アグスティナ機の放ったパンチがカンピオーニ機に頭部装甲にヒットして金属音が響いた。

    【カンピオーニ】
        「ちょっとなんでグーパンチなんですかっ!」
        「光学センサー割れたらどうするのっ!!」

    【アグスティナ】
        「ふんっ!!」
        「それは君の自業自得だよ。 私は知らないから。」

    【サダッチ】
        「休憩は終わりよっ!」

    【ナナ】
        「鹵獲船・・・進路をこちらに向けたわ・・・」
        「砂浜に突っ込んでくる気かしら ?」

    【サダッチ】
        「どうやら、あちらさん・・・作戦は失敗しつつある事を悟ったようね。」
        「鹵獲対象はすでに離陸してしまったし。」

    【ナナ】
        「しかし、私たちがココにいると言うことは、ターゲットが私達の回収のために島に接近してくる可能性がある・・・」
        「と想定していれば、敵さんにはまだ船内に乗り込むチャンスがある事になる。」

    【サダッチ】
        「そうね。」
        「敵さんも本来はドッグで展開させるために温存しておいたチームをこちらのほうに全力投入してくる事になるわ。」

    【キヨちゃん】
        「迎え撃つとしますか。」

    【ナナ】
        「総員戦闘配置っ!!」

    【レオンハルト
        「全力戦闘だと弾薬、ナノマシンはあと5分しか持ちませんが・・・。」

    【カンピオーニ】
        「シビアだねぇーーー。」

    【ナナ】
        「5分持っても、10分持っても、敵の物量を考えればそんなに差はないわ。」
        「サッチたちが間に合うことを祈りましょう。」

    【アルビータ】
        「悪魔が神頼みとはねぇ・・・。とほほほ。」

    【ナナ】
        5分でハヤブサ内貯蔵のナノ・サブスタンスが枯渇すれば、あとは各自が保有するナノマシンだけで戦う事になるわね。
        これがどれくらい持つかは、各自の能力次第と言うことになるわけかぁ・・・。
        各自のナノ・サブスタンス残量がエンプティとなれば、中には生命維持に支障をきたす子も出かねないわね。
        撤退するにも島からの脱出する手段はないし、正直思っているより厳しいわね・・・。

    【サダッチ】
        「ナノマシンの残量を気にしていたの ?」

    【ナナ】
        「ええ、良く判ったわね。」

    【サダッチ】
        「ナナとサッチとは、どことなく似ていますからね。」
        「だいたい何を考えているのかも似たようなものだと思うの。」

    【ナナ】
        「あははは。 機械音痴なところもね。」

    【サダッチ】
        「まったくです。」

    【サダッチ】
        「しかし情勢分析においてはナナとサッチは非常にすぐれた能力を発揮します。」
        「だからみんな貴女たちを信じて付いていくのだと思うわ。」

    【ナナ】
        「えへへへ・・・。」

    【サダッチ】
        「さて、来るわよ。」

        
    【ナナ】
        「見えてるわ。」
        「識神が鹵獲船の上空に到着したわ。」

        「んーーと・・・。 正体不明の新型AMP、40機」
        「まだこんだけの兵力を温存していたのね。」
        それに・・・。
        「後部甲板に戦闘ヘリ5機」
        「そして・・・ヒコーキも10機ほど・・・。」

    【サダッチ】
        「垂直離着陸機か ?」

    【ナナ】
        「わたし、機種までは判んないや・・・。」

    【サダッチ】
        「完全に強襲揚陸作戦の陣容だな・・・。」

    【カンピオーニ】
        「一発だけなら、熱エネルギー弾を撃てます。」
        「1分だけチャージさせてください。」
        「ハヤブサの全ナノマシンを使って鹵獲船の足を止められるだけの威力で砲撃が可能です。」

    【アルビータ】
        「私はカンピオーニ君を援護します。」

    【レオンハルト
        「じゃ、私も盾になるとすっか。」

    【ナナ】
        「判りました。」
        「しかし、ここは全員でカンピオーニを守りましょう。」

    【カンピオーニ】
        「ありがとうございます。」
        「では行きますっ!!」

    【カンピオーニ】
        「カークス・ライフルっ!!(※1)」

    ナノマシンによりスーパーロングバレルの光学レーザーライフルが構築された。

    【カンピオーニ】
        「今から1分です。」

    【サダッチ】
        「わかったわ。」
        「1分間、全力でカンピオーニを死守するのよっ!」

    【全員】
        「了解っ!」

    【サダッチ】
        「12時方向(真正面)に発光。」
        「敵の砲撃よっ!」

    【ナナ】
        「5インチ速射砲弾・・・8、うち着弾予定は3発、うち1発が至近弾。」

    ナナの識神が送ってきた弾頭の飛行経路から弾道を割り出し、そのデータはナノリンクによりただちに全員に共有されていく。

    【アグスティナ】
        「その一発私が引き受けた、迎撃するっ!!」

    ただちにアグスティナがアサルトライフルで弾頭計算によって先読みした進路上に7.62mm弾を放った。
    カンピオーニの至近距離で着弾するはずだった砲弾は、見事に迎撃され空中で爆発して消えた。
    残る7発は外れた場所に落ちていった。


    【サダッチ】
        「艦の後方よりタービン音・・・」
        「これは・・・戦闘ヘリが離陸するわ。」

    【ナナ】
        「識神でも確認したわ。」
        「プロペラが回り始めたわ。」

    【サダッチ】
        「ぷ、プロペラ・・・って・・・。 ローターと言ってっ!」
        「どこの時代遅れのお年寄りなのよっ!」

    【ナナ】
        「あっ」

    【ナナ】
        「・・・」

    【サダッチ】
        「その "あっ" は何よ !?」
        「すごく気になるじゃないのよっ!」

    【ナナ】
        「幼女 ?」

    【サダッチ】
        「それは、ロリータっ!!」

    【ナナ】
        「ヒコーキが車に牽かれて丸い円の中に入っていった。」

    【キヨちゃん】
        「まずいわね。」
        「トーイングカー(※2)で離陸位置に誘導されたのね。」
        「発艦前に叩けないのかしら ?」


    【カンピオーニ】
        「あと15秒です。」


    【サダッチ】
        「12時方向(真正面)に発光確認。」

    【ナナ】
        「ええ確認しました」
        「5インチ速射砲弾・・・24、うち着弾予定は7発、うち5発が至近弾。」

    【エルメス
        「さっきより精度が上がったわね。」

    【サダッチ】
        「そりゃ敵も誤差を修正してくるでしょう。」

    【ナナ】
        「今回は自信があるのか、3連射してきたわ。」
        「5発が命中コースよ。」
        「みなさん気をつけてください。」

    突然、各機の電波探知機がレーダーの照射を受けたことを示すアラートが鳴り響いた。

    【ナナ】
        ぇっ!?
        ロックオンされる !?

    【サダッチ】
        「どこだっ!?」

    猫族の耳で周囲を探査したが、それでも電波の発信源と思えるような不信な音響を捉える事ができなかった。
    しかし、その原因はすぐに明らかになった。

    【キヨちゃん】
        「8時方向(南西)から高速で接近する飛行物体ですっ!!」
        「シルエット照合では、殲31ですっ!!」

    【レオンハルト
        「それマジかよっ!」

    【キヨちゃん】
        「データベースから分離されていますので脳内ストレージ内バッファだけでの部分照合になりますが、ほぼ間違いないかと。」

    【サダッチ】
        「私の耳で捉えられないと言うことは超音速で接近してきたと言うことか。」

    【キヨちゃん】
        「目標、ドローンを2発発射し、反転してゆきます。」

    殲31が発射したと思われる空対地ドローンが白煙を上げて高度を下げていくのを確認した。
    発射母機が誘導しないで反転して引き上げると言うことは、すでにミサイルは目標をロックしている事を示していた。

    【カンピオーニ】
        「発射できますっ!」

    【ナナ】
        「いいわっ!」
        「撃ってっ!!」

    【カンピオーニ】
        「了解っ!」

    カンピオーニがトリガーを引いた約5秒後・・・鹵獲船の白いブリッジが赤く溶けはじめ、すぐに爆発を起した。
    レーザー兵器のためトリガーを引いた瞬間には、目標にはビームが届いていたが、大部分のエネルギーが大気に吸収、あるいは拡散されてしまい、目標が破壊されるほどの熱量に達するまでに若干の時間を有していた。
    エネルギーの90%が大気により拡散してしまったが、残りの10%は目標に到達しブリッジを吹き飛ばして鹵獲船の足を止めることには成功した。

    【サダッチ】
        「鹵獲船はコントロールを失ったわ。」
        「すごいわね。」
        「大気の中でもこれほどの威力があるとは。」

    【ナナ】
        「油断はまだよっ!」
        「ドローンに注意っ!」

    【エルメス
        「さっきの戦闘機ね。」

    【ナナ】
        「紅蓮寸式狙撃術っ!」(※3)

    識神を展開するナノ技術を応用する事で、銃器の形に生成して武器として使用する事ができる。
    基本、脳内アプリを使用することで以前に授業で習ったような現用銃を生成する事もできるが、上級スキルになってくると自分専用の火器を生成する事が可能となる。

    【ナナ】
        「紅蓮寸式焼夷弾を装填っ!!」
        「照準が間に合わないから誰か諸元をよこしてっ!」

    【キヨちゃん】
        「今、脳内ファイアーウォールを変更したわ。」
        「測儀データに権限を付与したから、それを使ってっ!」

    【ナナ】
        「ありがとう。」

    ナナはナノリンクを介してキヨちゃんの脳内にアクセスすると、ナナ向けに権限が設定された脳内ストレージのアクセスクエリー(※4)を見つけ、それを実行した。

    【キヨちゃん】
        「リアルタイムで追従しているから、このデータの座標に撃つだけ当たるはずよ。」

    返事する余裕がなく、無言のまま第一撃を放った。

    着弾と同時に炎に包まれたドローンは海岸に到達することなく、海に落ちていく。
    が、それを見送ることなく、第2撃を加えるべく、次の目標に狙いを定めていた。

    バンっ!!!
    重い銃声音がすると同時にカンピオーニのわずか手前でドローンは爆発した。
    焼夷弾の命中により一部の破片は炎に包まれたままカンピオーニに降り注いだ。

    【カンピオーニ】
        「あちちっ!!」

    【サダッチ】
        「あと数ミリ秒遅かったらカンピオーニは木っ端に吹き飛んでいたわね。」

    【カンピオーニ】
        「いや破片が当たってますっ!」
        「あちちちっ!!」

    【サダッチ】
        「ねぇ、そんな大口径銃があれば、さっきのヘリとかヒコーキとか十分に落とせるじゃない・・・。」
        「どうして使わなかったのよ。」

    【ナナ】
        「命中精度は高いのだけれど、ナノマシンの消費が激しくて、それに大きい上に重くて、取り回しがラクじゃないのよ。」
        「とっさの時は、すでにデータもってる人から諸元をパクってきて入力したほうが自分で照準を定めるよりはずっとラクなんだけれど、毎回それを人に頼めないし・・・。」

    【キヨちゃん】
        「喫緊のピンチはしのいだことだし、次は、あの正体不明の水陸両用タイプの陸戦と・・・ぁ、」

    【アルビータ】
        「あらら、艦載機・・・飛び立ちましたね。」

    【キヨちゃん】
        「ちょっとっ!!」
        「鹵獲船の足を止めたのではなかったの ?」

    【カンピオーニ】
        「足は止まったよ。」
        「止まったけれど、後部の飛行甲板までダメージは与えられないよ。」

    【キヨちゃん】
        「使えねー。」
        「いっそ、さっきの炎で焼かれてしまえばよかったのにっ!」

    【カンピオーニ】
        「ぇーーっ!」
        「それはないよ。」

    【キヨちゃん】
        「あとで、もみじまんじゅう買ってくれたら許してあげる。」

    【カンピオーニ】
        「ちょっ・・・今から船が迎えに来るのにムリだよっ!」


    【サダッチ】
        「グダグダ言ってる場合ではないわよ。」

    【ナナ】
        「水陸両用型(陸戦)が一斉に上がってくるわよ。」
        「トレーラーと輸送スタッフを橋頭堡まで下がらせて乗艦準備させといて。」

    【アグスティナ】
        「了解っ」

    【キヨちゃん】
        「しかし水陸両用機って、水の中の相手では接近してくるまで手が出せないわね。」

    【カンピオーニ】
        「ボクたちには水中戦装備がないから不利ですね。」

    【サダッチ】
        「心配いらないわ。」
        「敵が目標としているフネは、いまや海の上空。」
        「水中から姿を見せないと空の目標に対しては如何ともし難い。」
        「私たちは、ヤツらが浮いてくるのを待っていればいいだけなので、その分有利よ。」

    【カンピオーニ】
        「そ、そうですね。」

    【キヨちゃん】
        「さて、来るぞっ!!」

    識神が澄んだ瀬戸内海の水面下を移動する機影を上空から監視していたが、いよいよ目視でも水中の機影が確認できるまでに接近した。


    【ナナ】
        「迎えのフネに当たる危険があるので火力の使用は禁じます。」
        「総員っ抜刀っ!!」

    【キヨちゃん】
        「もうやってるっ!」

    すでに先陣を切って、キヨちゃんのハヤブサが対装甲刀を手にして海へ飛び込んでいった。


    鹵獲隊 ドッグ制圧部隊

    鹵獲船にはドッグやその周辺施設を制圧して必要な資材や人材を回収して鹵獲船に積み込む制圧部隊が配備されていた。
    しかし、鹵獲ターゲットが離陸した事により鹵獲部隊本隊がターゲットの確保に失敗しつつある事を知り、作戦を変更してきた。
    苦戦している鹵獲部隊本隊に加勢して、空中のターゲットを再び海に引きずり下ろす事が目的だった。
    その為には大九野島を足場とする必要があり、帯締の第一小隊とどうしても交えなければならない。


    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「たっ隊長っ!!」
        「敵襲ですっ!」

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「まだ水中だぞっ!!」

    【ドッグ制圧部隊:隊員C】
        「すでに前衛は交戦状態です。」
        「敵は我々に刀で挑んできており、排水射撃できないまま格闘戦に持ち込まれています。」


    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「小日本の連中は防水じゃなかった筈だぞっ!!」

    腰上まで水に浸かりながら、味方機を斬ってくるハヤブサを目にして、初めて、ハヤブサが防水仕様だと言うことに気がついた。
    そもそもハヤブサは水中推進力を持たないので泳げないだけなのだ。
    宇宙空間や液体メタンの海、高濃度の通電性ガス等々、最初の設計段階から宇宙でのオロチ戦を想定していた。
    なので防水仕様と言う表現は正しくなく、部分的に気密性が高められているために、結果として重要機器への浸水を防いでいると言うことだった。


    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「総員、敵AMPを一掃するぞっ!!」
        「格闘戦なら、パワーに勝る我が方に有利だ。」

    【ドッグ制圧部隊:全員】
        「了解っ!」

    シナ軍は帯締学園が持ち込んだ格闘戦に応えるべく、機関銃を捨てて刀に切り替えた。


    【カンピオーニ】
        「刀?」

    【アグスティナ】
        「彼らも刀を装備しているの ?」

    【サダッチ】
        「そりゃ、格闘戦を想定するなら刀やナイフくらいは装備するでしょうね。」

    【ナナ】
        「しかし、あの形状は見たこと無いタイプね。」

    【キヨちゃん】
        「柳葉刀か・・・。」(※5)
        「さっきの桟橋で出会ったヤツは環刀を使用していた・・・。」

    【ナナ】
        「どういうこと ?」

    【キヨちゃん】
        「こいつら、シナと統一朝鮮の連合部隊だ。」

    【キヨちゃん】
        「気をつけて、柳葉刀は、基本的に二刀流が原則。」
        「第一撃を交わしても次の二撃目にも注意してください。」
        「刀の重量は、日本刀より重いが、基本は鋳造で作られており脆いです。」
        「鍛造で鍛えられた私達の日本刀形式の対装甲刀の敵ではありません。」
        「ですが油断をすると刀の質量ではあちらが上ですのでこちらも相応のダメージは受けてしまいます。」

    【ナナ】
        「わかったわ。」

    シナ軍が刀を持ちだしたことで、両者、いったん間合いを取る事となった。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「ほぅ、こちらの刀を見て、一度後退して様子を見るか・・・。」
        「むやみに突っ込んでこない・・・。」
        「いい判断だ。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「えらく細くて華奢な刀ですね。」
        「あれが世界で有名なサムライブレードと言うヤツか・・・。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員C】
        「しかもよく見ろよ。」
        「あんな細い刀を両手で構えているヤツもいるぜ。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「そりゃそうだろ、腕力ではこちらの方が上なんだ。」
        「刀を片手で持てないようでは戦いにならん。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員D】
        「ヤツらは格闘戦に持ち込んで有利に戦いを展開しようとしたが、パワーではこちらが上と言うことがハッキリしたと言うことですね。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員C】
        「しかし隊長、いいんですかね ?」

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「なにがだ ?」

    【ドッグ制圧部隊:隊員C】
        「40対8ですよ。」
        「先行上陸した8機が全機撃破されたのは、おそらくヤツら得意の不意打ちと言うヤツでしょう。」
        「我々は日帝の戦い方を熟知している。」
        「先にヤラれた連中はおそらく記録映画を見るのサボってヤツらのやりくちを学習しなかったんだぜ。」
        「だが、今の我が方40機を相手に、8機で立ち向かって来ても勝算はない。」
        「なぶり殺しになっちゃいますぜ。」

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「油断はするな、ヤツらは、数に圧倒されてても戦意を失ってはいないぞ。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員D】
        「小日本の連中ってどうして万歳アタックが好きなんでしょうね ?」
        「たった2、3千人で、数万のアメリカ軍と互角に戦った太平洋戦争の話は、少日本がメンツの為に作ったお伽話だぜ、ヤツらはそれをリアルでやろうって言うのか ?  馬鹿げてるぜ。 まったく。」


    【サダッチ】
        「みなさん、いいですか。」
        「敵の機体はもともとパワーがあるが、ピークーパワーになってくるとムラがあります。」
        「おそらく最初からパワー重視である為で、我がハヤブサの様にピークパワーでの安定性を確保する為に通常運用でのパワーに余力を残した設計思想とはなっていないのだと思います。」
        「個々のパーツの精度は、我が日本とシナとで、そんなに違いはないのかもしれません。」
        「しかし、わずかずつでも精度の高いパーツで組み上げた機体は必ず私達の期待に応えてれるでしょう。」

    【ナナ】
        「私はメカのことについては全然わからないけれど、このハヤブサなら必ず勝てると信じています。」
        「なので」
        「8対40は、数の上では圧倒的不利ですが、私達はすでに8機やっつけました。」
        「しかし我が方の損害はゼロ。」
        「大丈夫、落ち着いて対処すれば必ずこの戦いに勝利できると思います。」

    【ナナ】【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「掃討戦開始っ!!」

    一斉に刀を構えるブーメラン。

    【キヨちゃん】
        「うっひょーーー八卦刀(はっけとう)なのか ?」
        「動画でみたけれど、実物は初めてだぁぁぁぁ。」

    【レオンハルト
        「ちょっと、なに興奮しているのよっ!!」
        「八卦刀って何なのよっ???」

    【キヨちゃん】
        「中国の剣術には、少林拳法で使用する少林刀術や、太極拳で用いられる太極刀と言うのがあって、八卦掌系統の剣術が、今、目の前にしている八卦刀よ。」
        「ぅぅぅぅぅ・・・。やっつけるの勿体無いなぁ・・・。」

    【レオンハルト
        「じゃ、やられてしまえば ?」

    【ナナ】
        「こらぁ、そこっ!!」
        「私語は慎むっ!」

    【キヨちゃん】
        「ほら、委員長が死後は慎むって言ってるじゃないの。」

    【レオンハルト
        「ぇっ!? ぇっ!? ぇっ!?」
        「シゴハツツシムって何 ???」

    【エルメス
        「私達の国の言葉で、おしゃべりすんなって事よ。」


    無駄口叩いている間に、ブーメランが一斉に襲いかかってきた。
    その光景はよく見る三国志とか大陸の戦記ものの戦闘シーンに描かれている、まさにあの物量で攻めてくるシーンだ。 相手の数は40機ではあるが、8機で迎え撃つにはリアルに迫力がある。

    【エルメス】【レオンハルト】【アルビータ】【キヨちゃん】
        「キターーーーーっ!!」

    【エルメス】【レオンハルト】【アルビータ】
        「怖ぇぇぇぇーーーー!!!」

    【キヨちゃん】
        「面白れぇぇぇぇーーーー♪」

    【ナナ】
        「各個、敵を撃破してください。」

    【サダッチ】
        「お互いナノリンクで情報うを共有しあって、攻撃対象を重複しないように効率のよい戦いに専念してください。」

    【全員】
        「了解っ!」



    シナ空軍 "殲" 航空隊


    【第一波 パイロットB】
        「隊長、鹵獲隊が船内への侵入に成功した模様です。」

    【第一波 パイロットD】
        「しかし、敵の抵抗が止みません。」

    【第一波 リーダー】
        「味方が中に入ったら我々は手出しはできん。」
        「完全に占拠すれば抵抗は止むだろう」
        「ここは待機しているIl-78 まで後退して給油を済ませておけっ!」

    【第一波 パイロット全員】
        「了解っ!」



    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【サッチ】
        「島までの距離は ?」

    【セッちゃん】
        「あと、1km」

    【サッチ】
        「右舷の資材搬入ランプを解放して。」
        「第一小隊の回収準備に入ってちょうだい。」




    鹵獲隊 ドッグ制圧部隊


    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「くそっ、なんて硬い刀だ。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員C】
        「どの刀も見かけによらず、尋常じゃないほど硬いぞ。」
        「一閃交えると、こちらの刃はボロボロになるのに、やつらの刀は刃こぼれ一つしていないぞ。」

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        なんて事だ・・・最初の一撃で、8機がヤラれただと・・・。
        敵の損害はナシ・・・。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「落ち着けっ!!」
        「各機、敵1機につき3機で攻撃しろっ!!」
        「残り7機は私についてこいっ!!」

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「3機ですか ?」

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「考えがある。」
        「準備できるまで、3機ずつで敵1機を引きつけておけ。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「了解っ!!」


    しかし、サダッチの耳が、8機が後退していくモーター音を聞き逃さなかった。

    【サダッチ】
        「ナナっ!」
        「離脱する機体がありますっ!」
        「数、8」

    【ナナ】
        「今、3機が襲ってきたのよ。」
        「手が離せなくなったわ。」
        「サタッチは追えそう ?」

    【サダッチ】
        「すみません。 私も手が離せなくなりました。」

    【アルビータ】
        「さすがに、3機同時に相手するのはキツイ。」

    【アグスティナ】
        「くっ・・・左腕アクチュエーターへの光神経ケーブル断線っ!!」
        「左肘装甲も脱落したっ!」

    【ナナ】
        「大丈夫っ ?」
        「無我はない ?」

    【アグスティナ】
        「大丈夫よ。」
        「敵のサーベルがかすっただけよ。」
        「今ナノリペアで修復中。」

    しかし、ナノリペアを使用中は、ナノシールドによる近接防御結界の性能が低下する問題があり、その瞬間をシナ軍は見逃さなかった。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「あそこの一機、バリアーの出力が低下したぞっ!!」
        「火力を集中するんだっ!」
        「撃てっ!!」

    戦場からやや距離を置いて陣を構築した8機のブーメランからアグスティナ機に対して火力を集中した。

    誰かが展開していた索敵結界が、飛来する銃弾の雨を検知し、直ちに全員にアラートが出された。

    【アグスティナ】
        「ぇっ!? 私 ???」

    アグスティナは飛来する銃弾が自分の方向である事に気づいたが、ナノリペアを起動している状態だった為、シールドの出力を上げることはできなかった。

    【ナナ】【サダッチ】
        「アグスティナっ!!」

    皆が、アグスティナの方向を見た時、そこは着弾の衝撃で砂埃が舞っていた。

    【カンピオーニ】
        「だ、大丈夫ですか ?」

    【アグスティナ】
        「な・・・アンタ何やってるのよっ!」

    【カンピオーニ】
        「その口ぶりじゃ大丈夫そうだね・・・」
        「間・・・に合ってよかったよ。」

    埃が収まった時、アグスティナ機の盾となり、激しい損傷を受けているカンピオーニ機の姿が現れた。

    【カンピオーニ】
        「げほっ!!」
    口から大量に出血して機内を鮮血に染めていく。

    【アグスティナ】
        「ちょっ、バカっ、アンタ、シールドはどうしたのよっ!」

    【カンピオーニ】
        「さっきの・・・ビームの砲撃で・・・まだ・・・ナ・・・ノマシンが完全・・・には回復していなかったんだ・・・。」
    カンピオーニ機はアグスティナ機に抱きかかえられるようにして砂浜に倒れこんだ。

    ハヤブサの外部ハッチ横には緊急解放レバーが設置されており、それを180度回すことによって、パワーが途切れても手動でハッチを開けて中のパイロットを救出することができる。

    【アグスティナ】
        「出血がひどいじゃないの、もう喋らなくていいからっ!」

    【カンピオーニ】
        「で・・・も君が無事・・・で居てくれてボクは・・・嬉しいよ。」

    【アグスティナ】
        「もういいよ、もう喋らなくていいから・・・。」
        「フヌケのくせして、なにもこんな時にカッコつけなくてもいいじゃないの・・・」

    【サダッチ】
        「カンピオーニのナノメディックは作動している ?」

    【アグスティナ】
        「作動していないわっ!!」
        「ナノマシンの残量も十分に回復していなのよ。」

    カンピオーニの身体ダメージは思っている以上にひどくナノメディックも起動できない状態で、ハヤブサの生命維持装置によってかろうじで心肺機能を維持していた。
    ここでカンピオーニをハヤブサから切り離すと、死亡する確率が非常に高くなる。

    【アグスティナ】
        「大丈夫。 私がついててあげるわよ。」
        「かならず、生きて。 生きて一緒に帰ろうね。」
        「私が、かならずあなたを連れて帰ってあげるから。」

    しかし、徐々にカンピオーニの心拍が低下している事はテレメートリーが示していた。

    【ナナ】
        「まずいわね。」

    【ナナ】
        「アグスティナ、あなたはカンピオーニについててあげて」

    【ナナ】
        「サダッチ、キヨちゃん、ちょっとお願い・・・いいですか ?」

    【サダッチ】【キヨちゃん】
        「?」

    【ナナ】
        「アグスティナとカンピオーニを守ってあげて。」

    【サダッチ】
        「ナナ・・・」
        「い、委員長はどうするの ?」

    【ナナ】
        「あの8機、私が殲滅する。」
        「絶対にゆるさない。」

    【キヨちゃん】
        「委員長、マジ切れした・・・。」

    【サダッチ】
        「そ、そのようね・・・」

    【ナナ】
        「さぁ、悪魔を怒らせた代償はキッチリと払っていただくわよ。」
        「お前たちが我々を鬼子と呼ぶその戦闘力、そんなに見たければ見せてあげるわ。」
        「存分になぶって、決して楽に死なせたりはしないんだから。」



    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【おみくじ】
        「第一小隊、確認しました。」
        「目下、第一小隊は・・・・ぁ。」

    【サッチ】
        「なんですか、その "ぁ" ・・・と言うのは ?」

    【おみくじ】
        「ぁ、いえ・・・・どうやら、どっかの馬鹿が、ナナを激怒させてしまったようです。」

    【サッチ】
        「こちらでも確認したわ」
        「マズイ事になってるわね・・・。」

    【フクちゃん】
        「激しく損傷している機体を確認しました。」
        「カンピオーニ機です。」
        「状況から察するに、どうやらナノメディックが作動していないようです。」

    【サッチ】
        「判りました。」
        「カンピオーニ機の回収を最優先とします。」

    【サッチ】
        「セッちゃん、あなた たしかナノメディックの成績は優秀だったわね。」
        「カンピオーニを回収したらすぐに術式に入って頂戴。」

    【セッちゃん】
        「でも、多少の知識がある程度で、正式な医療免許はまだ持っていないわ。」

    【サッチ】
        「ナノメディックが動いていない以上は、医療の知識がない限りは私達のような素人が術式を施すのは危険だわ。」
        「でもこのメンバーで一番知識があるのはあなたなの。」

    【セッちゃん】
        「わかったわ。」
        「できるだけやってみるわ。」

    【サッチ】
        「おねがいね。」

    【サッチ】
        「もっちゃん、本艦の資材搬入ランプをあのカンピオーニに近い位置までまっていける ?」

    【もっちゃん】
        「できなくはないけれど、敵に本艦の腹を見せることになりますよ。」

    【サッチ】
        「いいわよ。 じゃ、お願いね。」

    【もっちゃん】
        「了解っ!」

    【サッチ】
        「第ニ小隊全員にお願いがあります。」
        「只今から、カンピオーニ回収の為、敵の真横に艦を持っていきます。」
        「敵は第一小隊の撤退の妨害と、あわよくば本艦に乗り込むことを企てるでしょう。」
        「第ニ小隊はこれより右舷集中展開し、全力で第一小隊の撤退を支援してください。」

    【第ニ小隊全員】
        「了解っ!」

    大九野島 西海岸

    こちらにに向かって接近してくるフネを確認した。

    【サダッチ】
        「総員、迎えが来たわよっ!!  撤退準備っ!!  」
        「敵をここで抑えて、フネに乗り込ませないでっ!」

    ちらっとナナをの方を見た。
    相当に激昴している様子がありありと伝わってくる。



    鹵獲隊 ドッグ制圧部隊

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        ちっ、せっかく向こうからターゲットがやって来たというのに、一歩も動けねーじゃないか・・・。
        いったい、あの機体はなんなんだ ?
        見かけ上は、他の機体とは差は感じられないが、この尋常ではない殺気・・・。

    ドッグ制圧部隊の隊長は、ナナの放つただならぬ殺気に身動きがとれないでいたが、徐々に冷静さを取り戻した。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        しかし、まぁいい。
        どうせやつが持っているのは日本刀。
        このマシンガンでさっきのハヤブサ同様に穴だらけにすればいいだけの事。

    カラになったマガジンを捨て、新しいマガシンを装着すると、まがまがしい殺気を放つ機体に銃口を向けた。
    が、

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「なっ!」
        いない・・・だと ?
        目を離した隙にどこへ逃げやがったっ!

    突然、ブーメランのセンサーが反応し、接近警報が鳴り響く。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        上・・・だと ?

    高くジャンプしたハヤブサは、落ちてくる勢いと共に刀を振り下ろしてきた。


    ガンと鈍い音をたて、銃が砂浜に落ちた。

    ブーメランの損傷アラートが左腕の消失を告げた。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        「くっ、腕をもっていかれた・・・。」

    体勢を立て直そうとした時には、メインカメラにはすでにハヤブサの姿はなかった。
    しかしセンサーは引き続き敵が近くにいることを警告している。

    次の瞬間、機体はバランスを崩し、右に傾いて膝をついた。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        ちっ・・・腕をヤラれてちょっと動揺したか・・・。

    ふらついた理由は左腕を切り落とされた一時的なショック状態によりバランス感覚を失ったものだと思い込んだ。
    しかし、機体の損傷アラートに右脚喪失の警報も追加された事で、自分が右足を切断した事を知る。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        なっ・・・馬鹿なっ!!
        ハヤブサより最新のこの機体が歯がたたないだと ?

    バランスを失って倒れた先には銃を握りしめたまま切断された左腕が落ちていた。
    それを残った右腕で回収すると、上体を起しナナ機に狙いを定めた。
    隊長機のピンチに部下の機体も銃撃に参加した。

    が、呪符式結界によって銃弾は阻止されオレンジ色の跳弾となって周囲に飛び散った。
    いくつかの弾丸は結界の隙間を通過して、ハヤブサの装甲に到達し、損傷を与えたが、ナノリペアによりただちに修復され、みるみる傷がふさがっていく。

    【ドッグ制圧部隊:隊長】
        こいつら本当に鬼なのか ?
        「この鬼子がッ・・・・」

    隊長の通信が途絶え、部隊の全員が振り返った。

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「たっ隊長っ!!」

    隊長機が縦に真っ二つに裁断され、鮮血が爆発的に周囲に振りそそいだ。
    隊長機が撃破された事でドッグ制圧部隊の統制は崩れた。

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「オーストラリア軍が開発した最新鋭のブーメラン8機を、たった1機の旧式機によってわずか1分で撃破されただとっ!?」
        くそっなんてこった・・・。
        ハヤブサは実力を隠しているとは思ってはいたが、戦闘力にこれほどの差があったとは・・・。

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「輸送艦から発進したWZ-12と、J-26はどうした ?」

    【ドッグ制圧部隊:隊員E】
        「敵の攻撃を免れた機体が発艦に成功したようですが、我々への誤爆を回避するために現在は上空待機中です。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「航空支援を要請しろ。」
        「敵の AMP を空から狙い撃ちにするんだ!!」

    【ドッグ制圧部隊:隊員E】
        「しかし、それだと地上の我々にも損害が出る恐れがあります。」

    【ドッグ制圧部隊:隊員B】
        「構わんっ!」
        「隊長を殺った、あの1機をみただろっ!」
        「我々は今悪魔のような戦闘力を持った部隊と戦っている。」
        「航空支援がなければどのみち生き残れんっ!」

    【ドッグ制圧部隊:隊員E】
        「わっ判りましたっ!!」
        「ただちに空爆を要請しますっ!」




    【サダッチ】
        「ナナっ!!」
        カンピオーネの心肺が停止っ!!」
        「もう一刻の猶予もありませんっ!!」

    【ナナ】
        「あと、2分持ちこたえてっ!!」
        「フネが来るわっ!!」
        「民間スタッフを海岸へ移動させてっ!!」

    【キヨちゃん】
        「航空機、こちらに接近しますっ!」

    【ナナ】
        「同士討ちをさけて上空待機していたのが、あちらもしびれを切らしたってとこかしら。」
        「フネに乗り込む民間スタッフを全力で防衛してください。」
        「防空戦用意っ!!」

    【キヨちゃん】
        「敵、陸戦の残存兵力はどうします ?」

    【ナナ】
        「あと何機 ?」

    【キヨちゃん】
        「すでに35機を撃破していますから、のこり5機です。」

    【ナナ】
        「残り、片付けられるかしら ?」

    【キヨちゃん】
        「私が ?   ですか ?」

    【ナナ】
        「そうよ。」

    【キヨちゃん】
        「仰せのままに。」

    【ナナ】
        「サダッチっ!」
        「キヨちゃんが後方の残存勢力の掃討に入るわ。」
        「貴女は戦線を縮小させて部隊を集結し、接岸するフネへの乗船を指揮してちょうだい。」
        「時間がないわよっ!!」

    【サダッチ】
        「ナナっ!!」

    【ナナ】
        「なによっ!?」

    【サダッチ】
        「委員長はどうするの ?」

    【ナナ】
        「私は、敵の航空機を牽制しつつ、キヨちゃんの退路を守ります。」
        「さ、行ってっ!!」

    【サダッチ】
        「判りました。」
        「お気をつけて、ムリしないでね。」


    幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:民間駆逐艦

    【もっちゃん】
        「艦のスラスターが安定しないわ。」
        「気流で流されてフラつく。」

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「駆逐艦とは言え、昔の戦艦大和に匹敵するサイズのフネですよ。」
        「これだけ大きいものが空浮かべば通過する空気の流れによって船体は流されます。」
        「しかも支援AIなしで手動で操艦していては精密なコントロールなど不可能です。」

    【サッチ】
        「しかし、やらないと、島の仲間は救えません。」

    【フクちゃん】
        「スラスターの出力制御をもうちょっと細かく制御できるようにアプリを改修中です。」

    【もっちゃん】
        「どれくらいかかる ?」

    【フクちゃん】
        「あと20秒ください。」

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        「ば、馬鹿なっ!」
        「手動操縦の宇宙艦のスラスターを噴射中に、プログラムを差し替えるだなんて無謀すぎるっ!!」
        「気は確かなのか ?」

    【フクちゃん】
        「準備できました。」
        「5秒でリブートできますので、少し上昇して高度に余裕を持たせてくださいっ!」
        「落下しても再点火に成功すれば高度はギリで維持できる・・・かもしれません。」

    【もっちゃん】
        「かも !?」
        「かもなの ?」

    【サッチ】
        「いいわ、やって。」

    【もっちゃん】【フクちゃん】
        「了解っ!!」

    【もっちゃん】
        「スラスター センター」(スラスターを中央に戻す)
        「ミジップ」(舵中央)
        「フル スラスター ボトム ツー」(両舷スラスター下方最大出力)

    艦の下部に位置する全スラスターを全開にして、瞬間的に高度を確保した。

    【サッチ】
        「いまよっ!」

    【フクちゃん】
        「スラスターコントロールAPI、実行タスク削除」

    【フクちゃん】
        「スラスターコントロールAPI、アンロード」
        「続いて、リロード開始。」

    【フクちゃん】
        「スラスターコントロールAPI起動っ!」

    スラスターを制御していたアプリを矢継ぎ早に差し替え、再起動を掛けた。
    予告とおり、スラスターは停止してから5秒キッカリで推進力を回復させた。

    【もっちゃん】
        「来たっ!!」
        「アイ、ハブ、コントロールっ!」(制御回復)

    フネは元の高度を取り戻した。

    【幸洋船渠宇宙事業部ドッグ:機関技師】
        な・・・なんて、やつらだ。
        稼働中のエンジンプログラムを本当に書き換えやがったっ!


    【サッチ】
        「第一小隊が砂浜で戦闘やってるわ」
        「いいから突っ込んでちょうだい。」

    【もっちゃん】
        「了解っ!」

    【フクちゃん】
        「ぉおおおーーー、WZ-12ですね。」
        「それに、J-26だっ!!」※6

    【サッチ】
        「それから、第一小隊と交戦中の、そのハエも落としちゃって。」

    【トミちゃん】
        「了解しました。」

    【フクちゃん】
        「ぇっ!?」
        「アレ落としちゃうんですか ?」

    【サッチ】
        「当然よ。」

    【フクちゃん】
        「もったいない・・・。」
        「配備数が少ないので、ほとんど見かけない貴重な機体なのに。」

    【サッチ】
        「そんな大事なものなら、繰り出してこなければ良かったのよ。」
        「運が悪かったわね。」

    【サッチ】
        「セッちゃん、おそらくカンピオーニが先に収容されると思うから、見に行ってあげて。」

    【セッちゃん】
        「わかった。」



    【サダッチ】
        「接岸するわよっ!」
        「全員、乗艦準備っ!!」

    【サダッチ】
        「キヨちゃん、あと何機 ?」

    【キヨちゃん】
        「もう終わったわ。」

    【キヨちゃん】
        「ここでやっつけておかないと、またやってくるからね。」
        パイロットにも家族はいるんでしょうけれど、私達悪魔と戦う以上は覚悟はできていた筈。」
        「屍はきっと地元の人達によって丁重に埋葬されるわよ。」

    【サダッチ】
        「ナナはどうなの ?」

    【ナナ】
        「ヒコーキの方は動きが読めるんだけど、ヘリの方が縦横無尽に動くから、なかなか迎撃が困難だわ。」
        「アグスティナって、よくあんなのを剣で切れたわね・・・。」
        「でも、どうやら第二小隊が参戦してくれたようだわ。」

    【サダッチ】
        「第二小隊 ?」

    【ナナ】
        「そう。」
        「見てる前で、何機か墜とされたの。」
        「索敵結界による弾道計算ではフネから銃撃されたみたい。」




    【もっちゃん】
        「艦首を砂浜に振ります。」
        「バウ スロー スラスター ポート」(船首左舷スラスター微速噴射)

    【サッチ】
        「あと、1m寄れる ?」

    【もっちゃん】
        「了解。」

    スティックを微かに右へ倒して艦を島に1mだけ寄せた。

    【サッチ】
        「よし、ランプを全開にしていいわよっ!」
        「収容開始っ!」
        「予告通り5分で発つわよっ!!」

    【サダッチ】
        「接岸完了っ!」

    【ナナ】
        「撤収開始っ!!」
        「猶予は5分よっ!」




    シナ空軍 "殲" 航空隊

    シナは九段ライン建設の一貫としてメタンハイドレートが採掘できる高知沖を領海と宣言し、土佐清水沖合25キロにメタンハイドレート採掘プラットホーム兼、海軍と空軍の前哨基地を設けていた。
     "殲" 航空隊も Il-78hもこの基地をホームベースとしていた。
     しかし、空中給油を行うのに、高知と愛媛の上空だとさすがに、呉のイージス巡洋艦の攻撃範囲に収まってしまうため、シナ空軍は香川の三好上空を補給ポイントとして設定して給油機を待機させていた。
     この位置だと、先の対馬戦争で消耗した日本空軍機が伊丹から迎撃に飛び発ったとしても、十分に逃げ切れると判断した。

    そして徳島から香川の三好上空に侵空してきたIl-78h空中給油機によって、殲戦闘機の燃料タンクが満たされていく。

    【第一波 リーダー】
        「悪い知らせだ。」
        「鹵獲隊は全滅したそうだ」

    【第一波 パイロットB】
        「まさか ?」

    【第一波 パイロットD】
        「あいつの言うとおりですよ。 これだけの圧倒的な戦力差で我々が負けるわけがないですよ。」

    【第一波 リーダー】
        「輸送艦は攻撃を受けて大破。 操舵システムを失って岸に向かって暴走していると
            生存者からの救援無線が入ったらしい。」
        「破壊を免れた艦載機が敵のAMPと交戦中だが劣勢に立たされているとの情報だ。」

    【第一波 パイロットB】
        「そんな馬鹿な話が・・・。」

    【第一波 パイロットD】
        「これからどうするんですか ?」

    【第一波 リーダー】
        「我々が受けた新しい命令は、ターゲットを完全に破壊する事。」
        「そして、輸送艦を破壊して処分する事。」
        「後に第二波も攻撃に加わるだろう。」

    【第一波 パイロットD】
        「破壊ですか ?」
        「味方のフネも処分するのですか?」

    【第一波 リーダー】
        「アレが手に入らなくなった以上は、鬼子が所有する事だけは断固阻止せねばならん。」
        「それに、輸送艦には多くの兵士や武器が積まれている。 我が人民解放軍の作戦で有ることは秘密でなければならない。」
        「証拠はすべて消し去る。」

    【第一波 パイロットB】
        「ターゲットに侵入した同志たちはどうしますか ?」

    【第一波 リーダー】
        「おそらく、もう帰ってこないと考えていいだろう。」
        「同士討ちの危険が無くなったから、だから総攻撃の命令が下ったのだろう。」

    【第一波 リーダー】
        「そうと決まったら、さっさと攻撃するぞ。」
        「ターゲットは島に接岸して地上部隊のAMPを回収するつもりらしい。」
        「足が止まってくれたらこちらも攻撃しやすくなる。」

    【第一波 パイロットB】
        「各機、燃料の補給が終わったようです。」

    【第一波 リーダー】
        「よしっ、これより我が隊は編隊を組み直してターゲットの破壊に向かう。」
        「次は存分に暴れていいぞっ。」

    【第一波 パイロット全員】
        「了解っ!」

    その頃、"殲" 航空隊 第ニ波も出撃していた。
    この第ニ波は第一波の成果を見て、出動の可否を決定する予備的な部隊であったが、鹵獲が失敗した事が明らかとなったため、シナ軍関与の証拠を消去する為、攻撃力重視の殲31を出す決断をした。

    【第一波 リーダー】
        「第二波も出撃したと連絡が入った。」
        「これだけの規模の "殲" 部隊を一挙に投入するのは、台湾統合作戦でも無かったぞ。」

    しかし、この離陸の第二波の出撃の動向は、日本海軍が誇る世界最強の潜水艦部隊の哨戒活動によりただちに補足された。




    (※1)・・・カークス・ライフル
        ローマ神話の火の神の意味で、エネルギー系の特性をもつカンピオーニの得意火力である。
        高出力レーザー発信機により宇宙戦艦の装甲ですらダメージを与える威力を持つが、大気中ではエネルギーの大部分が拡散されてしまい長距離砲撃には向いていない。
        しかし大気中で効果的な威力を得るにはかなりのナノマシンを消費する必要があり、発射してからナノマシンの残量が自然回復するまでに時間を有していた。
        一応、イタリア人留学生は全員がこのカークス・ライフルの術式装備を扱えるが、カンピオーニが最も威力が大きい。
        紅蓮寸式狙撃術と同様に、識神展開術により具現化されるが、術者の特性がサークル系だと、メカの具現化精度は呪符系統より劣るため、ライフルの形状を維持できる時間が著しく短い。

    (※2)・・・トーイングカー
        停止している航空機を移動させる為に、牽引または押したりするトラクターの通称。
        巨大な航空機も動かせるように大出力エンジンを搭載している。
        地上の空港と、航空母艦に搭載されているのと基本的には同じものだが、航空母艦用は、狭いスペースを往来できるようにコンパクトに設計されている。

    (※3)・・・紅蓮寸式狙撃術
        識神を構築するのと同じナノマシンの技術で生成される30mm狙撃銃。
        ナノマシンで生成された専用弾を撃ちだす。

        紅蓮寸式狙撃術とは、その名の通り30mm(一寸)狙撃銃を示しており、本来は遠距離の堅牢な目標に対してピンポイントで破壊する為に使用する。
        近接格闘戦を得意とするナナの場合、あまり使用することのない術式装備ではあるがどうしても近づけたくないものに対しては遠距離のうちから排除すると言う考えから狙撃銃タイプの術式を展開することもある。

        紅蓮寸式は、威力の大きい術式だが、扱いが得意ではなく滅多に使用されない。

        今回は本来、より効果的な術式を展開すればよかったのだが、ナノマシン残量が不足していた為、
        比較的ナノマシンの消費の少ない、当装備で敵弾の迎撃となった。

    (※4)・・・アクセスクエリー
        データベースにアクセスするのに必要な術式コマンド。
        他人の脳内データベースへアクセスするためには、ナノリンクネットワークを介して、脳内ファイアーウォールにアクセスし、特別にアクセス権限を与えられたものがアクセスクエリーの保管場所に辿り着けるが、このクエリーの実行には別の実行権限が付与されていないと実行ができない仕組みになっている。

    (※5)・・・柳葉刀
        一般的には中国刀(ちゅうごくとう)と呼ばれている。
        大量生産が用意な鋳造技術で製造されるが、鍛造で作られる日本等とは異なり脆いため、強度を確保する為に厚めに作られている。
        原則として日本刀より柄は短く片手持ちが主流となっている。
        一部では入手した日本刀を改造したものも存在するが製造方法を再現できずにコピーはできなかった。

    (※6)・・・J-26
        シナ空軍が配備している、自称「ステルス」と主張しているタイプの垂直離着陸機である。
        殲シリーズの戦闘機と同様に、エンジンの開発に難航したため実戦配備がかなり遅れたが、アメリカから入手した海兵隊仕様のF-35エンジンをコピーしてなんとか配備にこぎつけた。
        しかし、奇襲効果を狙って実戦配備されても正確な情報は伏せられていた。
        台湾併合の際にも出動しなかった虎の子の航空機であったが、今回の鹵獲作戦では宇宙の先端テクノロジーを奪う絶好の機会だった為、国家の威信を掛けて総力を持って投入してきた。

 
 
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