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アトランティスの亡霊

Ghost of Atlantis

【1-5-2】なのましんは錬金術ぢゃない!!

なのましんは錬金術ぢゃない!!

【1-5-2】


    【サダッチ】
        識神ではない ?
        ・・・と言うことは、再構築されたということなの ?
        つまり、術者が付近に居ると言うことね。

    基本的に識神はプログラミングによって単独行動も可能だが、物質再構築という技術は遠隔では行えず、付近に術者と呼ばれるオペレーターが存在している事を意味している。
    これら再構築されたメカ、或いは物体をマテリアル・コンバート、通称:MC(※1)と呼ばれている。

    飛びかかってきた2頭のMCのトラをかわすが、さすがにトラと対峙したことのないサダッチは間合いを誤り、白い頬に爪傷を受けてしまう。

    【サダッチ】
        うっひーーー。
        今のはヤバかった・・・。
        もうちょっと反応が遅ければ私のクビが飛んでたわね。

    頬を伝う血を親指で拭うと、その血をペロっと舐め、血の味を確かめた。

    【サダッチ】
        人が見ているというのに、こうも堂々とナノテクノロジーを使用するとは・・・。
        ・・・しかし、やはりスキャンしてもナノマシンの痕跡は見当たらないわね。
        再構築したあとはナノマシンはすべて回収したのね。


    地面に転がっていた工作員のナイフを手に取ると、2頭の虎と対峙した。

    虎はサダッチの周りを円を描くように歩んでいたが、後方に位置する虎が猛然と飛びかかってきた。
    かわしつつも手にしたナイフで虎の脇を切りつけたが・・・。

    【サダッチ】
        「思っていた以上に硬いわね・・・。」
        にしても・・・スイス製のアーミーナイフをコピーしたのはいいけれど、耐久性まではコピーできなかったのね・・・。

    飴の様にひしゃげたナイフがナノマシンによって再構築された虎がいかに高強度を誇っているかを示していたが、統一朝鮮工作員に支給されていた自称国内開発の最新鋭軍用ナイフがいかにお粗末な代物であったかも証明してしまっていた。


    【サダッチ】
        「この役立たずめ」

    ナイフに悪態をつくと、瞬時にナノマシンにより形状回復を試み、さらに炭素の配合量を変化させ大幅に強化した。

    不意に、前方に位置していた虎がこつ然と姿を消した。

    【サダッチ】
        前の虎は、どこ ?

    格闘戦用の超短距離スキャンを発する。
    瞬時にスキャン結果が脳内に焼き付けられる。

    左斜め前方から右へ走り抜けるのは、後ろから襲ってきたさっきの子ね。
    で、右側から後方に回り込もうと死角を移動する子は、さっき前にいた子ね。
    目の前の子は陽動で、やはり次も後ろから来るつもりね。
    しかし・・・スキャンで相手の位置がリアルタイムで把握できたとしても、人間の四肢は、360度自在に攻撃できるようには出来ていない。

    この2頭の連携・・・巧い。
    人間の肉体構造を知った上でその弱点をついてこようとする。
    無理に後ろの子を攻撃しようと体勢を変えようとすると、とたんに前の子に絶好の攻撃ポジションを与えてしまう。


    サダッチが苦戦している状況は現場に急行するサッチにもリアルタイムで伝わっていた。
    【サッチ】
        付近に必ず、発動した術者が隠れているはず。
        しかし、あのパワーと俊敏さから、相当な手練れが再構築したに違いないわ。
        サダッチ一人では危険だわ。 お願い間に合って!!

    虎は再び間合いを詰めつつあった。

    【サダッチ】
        「ぅ・・・」
        なかなか隙を見せないわね。
        人工物とは言え、さすがはトラね。
        実物もこんな感じなのね・・・きっと。
        だとしたら、よく再現したものだわ。

    しかし・・・

    【サダッチ】
        「ぁ」

    歩道と車道の段差につまづきバランスを崩してしまう。

    そこを虎が見逃すはずがなかった。
    一斉に2頭がジャンプして襲いかかってきた。


    その光景はサッチの視界にも入っていた。
    【サッチ】
        「ダメっ!!」
        間に合わないっ!!
        「こ、これまでか」
        ごめんっ!
        助けられなかった・・・。


    【サダッチ】
        「ぅ・・・うぅ・・・」

    ピンチに陥ったサダッチっはバランスを失い尻もちをつきながら持っていたナイフをナノマシンで別のものに再構築しなおした。

    【サダッチ】
        「はい、またたび・・・の出来上がり」
        「さぁお食べ♪」
        「それっ!」

    ナイフをまたたびに再構築して、道路に放り投げた。
    2頭はその甘美な匂いに釣られて道路の中央に飛び出すと、1本のまたたびを巡ってケンカをはじめた。

    ずさっーーー。
    滑る音にサダッチが振り向くと、頭から歩道に突っ込むサッチの間抜けな姿が写った。

    【サッチ】
        「うう、痛い・・・。」

    【サダッチ】
        「サッチ、大丈夫 ?」
        「頭から突っ込んで何やってるの ?」

    【サッチ】
        「ウルサイわね。」
        「助けに来たのよ。」

    【サダッチ】
        「あら、ごめんね、心配かけちゃった ?」
        「でも、片付いちゃったわ。」

    【サッチ】
        「そ、そのようね・・・。」

    合金で作られたまたたびを巡って争う2頭の虎をサダッチが仲裁に入る。

    【サダッチ】
        「2個にしてあげるから、仲良くするのよ。」

    【サッチ】
        「しかし、よくまたたびが閃いたわね。」
        「しかも、効果あるかどうかも判らなかったわけでしょ ?」

    【サダッチ】
        「そう、そこなのよ。」
        「かなりリアルに出来ているから、性格まで忠実に再現されているのかな ?」
        「と思ったのよ。」
        「この子たち・・・。一体誰が作ったんでしょうね。」

    【サッチ】
        「そうなのよ。」
        「さっきから周囲を探ってるのだけれど、姿を見せないのよ。」

    【サダッチ】
        「ここまでの精度の高い再構築をできる人なら、しっぽを掴むのも難しいかもね。」
        「この子たちも、術者の制御から完全に離れているみたいだし
            もう既に立ち去ってココにはいないんじゃないの ?」

    【サッチ】
        「それもそうね。」

    【サッチ】
        「しかし。」

    【サダッチ】
        「なによ ?」

    【サッチ】
        「ねぇ・・・この子どうするのよ。」

    【サダッチ】
        「もどせないわよ。」
        「元が何だったのか私知らないわよ。」
        「たぶん車だとは思うんだけれど、車種まではちょっと・・・。」
        「私が見た時は、すでにトラだったし・・・。」


    2頭の虎はサダッチにアゴを擦られ目を細めてゴロゴロ喉を鳴らす。

    【サッチ】
        「ぇえっ!」
        「元は自動車なの ?」

    【サダッチ】
        「ええ、その辺にあった、誰かのマイカーよ」
        「持ち主に返してあげないと・・・。」

    【サッチ】
        「ぃや、虎の姿で返されたら、持ち主ビビるし。」

    シャーーーーっ!!
    サッチには威嚇する・・・。

    【サッチ】
        「こ・・・怖い。」

    【サダッチ】
        「ぁ、電車。」

    【サッチ】
        「もう出てしまったね。」


    現場を立ち去る添下学園の生徒

    【添下学園:本木】
        「しかし、まさかまたたびを生成するとはね。」

    【添下学園:山下】
        「ちょっとリアルに再構築しすぎたか・・・。」

    【添下学園:本木】
        「回収しなくてもいいのか ?」

    【添下学園:山下】
        「虎の事か ?」

    【添下学園:山下】
        「バッテリーが切れれば勝手に停止するさ。」
        「揮発性メモリを採用したから、電気が止まればプログラムも消滅」
        「アクセスハッチも無いから外部からの電気も信号も投入できないので二度と動かないさ。」

    添下学園の生徒は、周囲を見渡して誰も自分たちに関心が向いていないことを確認すると、足早に現場を立ち去った。



    大和快速の車内

    【まっちゃん】
        「とうとう、電車間に合わなかったわね。」
        「大丈夫かしら ?」

    【ターニャ】
        「大丈夫。」
        「別で帰ってくる。」

    【ナナ】
        「すっと識神で見てたの ?」

    【ターニャ】
        「ぅん。」

    【ナターシャ
        「無事ならいいんじゃない。」

    【ナナ】
        「郡山で降りるわよ」
        「さっきセッちゃんからメールで買い物を頼まれたの。」

    【ミーシャ】
        「私はいいわよ。」

    【ナターシャ
        「私も問題ないわ。」

    【まっちゃん】
        「私も付き合ってあげるわよ。」

    【まっちゃん】
        「私も付き合ってあげるわよ。」
        「ターニャちゃんも行くでしょ ?」

    【ターニャ】
        「ぅん。」
    本当は早く帰って買い物した中身を楽しみたいターニャだった・・・。


    郡山駅で降りるとショッピングモールまでのバスが出ている。
    しかし来年のリニア開通に合わせて地下駅の建設が急ピッチで進んでおり駅周辺は工事関係の車両で煩雑としていた。

    【ミーシャ】
        「いったい何の工事やっているのよ。」

    【まっちゃん】
        「リニア新幹線よ。」
        「来年の春に大阪まで開通するわ。」

    【ナターシャ
        「もっと早く開通すると聞いたんだけれど。」

    【まっちゃん】
        「途中で京都が路線を変更するようにって揉めたのよ。」

    【ナターシャ
        「どうして ?」

    【まっちゃん】
        「観光客とかビジネスマンのお客さんが沢山来てくれるからよ。」

    【ミーシャ】
        「でも、京都にはもとから新幹線があるじゃないのよ。」

    【まっちゃん】
        「そうなの。」
        「だから、今度は大和にリニアを引こうとしたのよ。」

    【ミーシャ】
        「それがまっとうな判断ね。」

    【まっちゃん】
        「ところが」
        「新幹線を大和に引き渡すから、リニアを引けって京都の議員さんとか商工会の人々が主張して、それが国会でも論争になって建設の認可がなかなかおりなかったのよ。」

    【ナターシャ
        「無茶な話ね。」

    【まっちゃん】
        「そうね。」
        「新幹線の時、その無茶が通ったから今回も通せるって考えたようね。」

    【ナナ】
        「実際問題として、新幹線とリニアは大前提として、大規模災害の時に、どっちかが生き残れる事を期待して、出来る限り別ルートを通るように計画したんだけれど、そこで京都に集中すればリスク分散の意味がなくなるのよ。」

    【ナターシャ
        「名古屋は OK なのに ?」

    【まっちゃん】
        「名古屋は一次工事の終点だから OK なのよ。」
        「でも京都はあくまで中間駅。」
        「本来は新幹線も中間駅のハズなんだけれど、議員や地元の商工会がゴネてすべての列車が停車する事になったのよ。」

    【ナナ】
        「バスが来たわよ。」


    【まっちゃん】
        「ねぇ、やっぱりサダッチたちは大丈夫かな・・・」
    車窓の景色を見ながらポツリとつぶやいた。

    【ミーシャ】
        「さっきターニャが問題ないって言ったでしょ。」

    【まっちゃん】
        「ぅん、だって二人がいないのに買い物するの、ちょっと気がひけると言うか・・・なんと言うか。

    【ナナ】
        「そっか、まっちゃんだけ実家から通学しているのね。」
        「私達はこの面々は、あの二人も含めて同じ寮で暮らしているのよ。」
        「で、留守番しているセッちゃんから今夜の夕食の食材の買い出しを頼まれたのよ。」
        「いつもの事よ。」

    【まっちゃん】
        「そうだったんだ。」
        「なんだか楽しそうね。」

    【ナナ】
        「そうだ。」
        「今夜、ウチの寮に夕飯食べに来る ?」

    【ミーシャ】
        「そうよ。」
        「セッちゃんが作るご飯、美味しいんだから。」

    行きたそうに悩みつつも
    【まっちゃん】
        「ぅーーーーん・・・。」
        「ごめんね、私のところ門限厳しいから。」
        「今日だってでんでんシティーに出かけている事は内緒にしてるんだから。」

    【ナナ】
        「それは仕方ないわね。」
        「また別の機会に門限を気にしないパターンでお誘いしますわ。」

    【まっちゃん】
        「みんな、ありがとう。」
        「でも、買い物はお付き合いしますよ。」

    【ナナ】
        「さぁ、着いたわよ。」
        「荷物忘れてないわね ?」

    【ミーシャ】
        「そういえば、サッチ、今日は何作るって言ってたの ?」
    バスを下りながら、後ろのナナに聞いた。

    【ナナ】
        「んーーーー。」
        「たしか、ボルシチって言ってたわ。」

    【ミーシャ】
        「えっ? ホント !!?」

    【ナナ】
        「ほらほら、前向かないと危ないわよ。」

    【ミーシャ】
        「おっとっと・・・。」
    小さな段差につまづきそうになったがかろうじでこらえた。

    【ナターシャ
        「涼花が作るボルシチも美味しいんだよ。」

    【ナナ】
        「リョーカさんって ?」

    【ナターシャ
        「ぁ。」
    うっかり口をすべらした事に気づく。

    【ミーシャ】
        「私達がカメーニャで住んでいたときの屋敷の執事みたいな人よ。」

    【ナナ】
        「そうなんだ。」
        「サッチのボルシチが口にあうといいわね。」

    【ナターシャ
        「まっ、サッチが作るのであれば、問題ないでしょ。」

    【ミーシャ】
        「それでも涼花の腕前には敵わないと思うけど。」

    【ナターシャ
        「ってか、日本のスーパーにビーツなんて売ってるの ?」

    【ナナ】
        「なにそれ ?」

    【ミーシャ】
        「ビーツ知らないの ?」
        「ボルシチには欠かせない野菜よ。」

    【ナナ】
        「うーーん。」
        「確か買い物リストには入ってなかったわよ。」

    【ミーシャ】
        「サッチはこの難問をどのように解決するのか楽しみだわ。」



    一行は買い物を終え、ショッピングモールから徒歩で帯締まで戻ってきた。

    【まっちゃん】
        「今日は、ありがとう。 楽しかったわ。」

    【ナナ】
        「こちらこそ、お構い出来ないのに、お荷物持たせてしまってごめんなさいね。」

    【まっちゃん】
        「では、また月曜日ね。」

    ナナとチビちゃん達は、まっちゃんを見送って、寮に戻ってきた。

    玄関を開けると、突然2頭の虎が横たわっており、まずは、その光景に驚いて後ろに後ずさりした。
    ターニャだけは平気のようだが・・・。

    【ナナ】
        「お、驚かさないでよっ!!」

    しかし、サッチとサダッチが心配そうな顔で虎の様子を見ていた。
    すぐになにか異変が起きたものと判った。

    【ナナ】
        「どうしたの ?」
        「何かあったの ?」

    【サダッチ】
        「ここに連れてくるまでは元気だったのよ。」
        「突然元気がなくなってグッタリしてしまったのよ。

    【サッチ】
        「大阪からここまで走って来たせいかしら ?」

    【サダッチ】
        「ぇえっ!! 私のせいなの ?」
        「あなたも背中に乗ったじゃない。」

    【サッチ】
        「そりゃそうだけれど・・・」
        「道中、あんだけ元気なのが、ここについた途端に動かなくなるって何かおかしいよ。


    【ナナ】
        「この子はどうしたの ?」
    虎の素性を知らないナナが聞いた。

    【サダッチ】
        「誰かがナノマシンを使って、再構築したものよ。」
        「そして、この子たちを使って私を襲ってきたって訳。」

    【ナナ】
        「誰が構築したのかしら。」

    【サッチ】
        「判らない。」
        「周囲を探査したけれど、気配ひとつ感じられなかったわ。」

    【サダッチ】
        「再構築の精度と言い、術者の痕跡も残さないところを見ると相当な手練れのようなのよ。」

    【セッちゃん】
        「おなかがすいてるのかしら ?」

    【サダッチ】
        「マテリアル・コンバートされた虎が猫マンマ食べるとは思えないよ。」

    【ナナ】
        「ねぇ死ぬの ?」

    【サッチ】
        「判らない。」
        「もうどうすればいいのか判らないわ。 お手上げよ。」

    【ミーシャ】
        「メンテナンス用のサービスハッチはないの ?」

    【サダッチ】
        「外部からアクセスできるたぐいのものが一切無いのよ。」
        「どうやら最初から使い捨てにするつもりで生成したようなのよ。」

    しかし虎は一層弱々しくなり、とうとう瞳を閉じてしまった・・・。

       

        (※1)・・・MC(マテリアル・コンバート)
            ナノマシンの能力により、物質の形状や機能を分解/再構築して出来上がったメカの事を指す。
            識神との違いは、識神はナノマシンにより構成されておりナノマシンに供給されるパワーが尽きた時点で形状を保てなくなり形状分解を起こして消滅するが、MCは、もともと存在している物質を元に再構成されているので、供給されるパワーが失われても形状を保ち、パワーの補充ができれば再起動も可能である。
            パワーがダウンしても形状を保てる点で識神より優れているようにも見えるが、MCは、分解される前の物質の元素に強く依存する為、例えば、鉄をベースに再構築されたMCはサビに弱い欠点を受け継いでいる。
            識神は術者の持つナノマシンの能力と意思に強く影響を受けるが、MCはナノマシンによって再構成されるだけの物体なので、術者の意思を強く反映できない。 なので適度にコントロール下に置くには近くに術者と呼ばれるオペレーターが居なければならない。
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